準備

目次:

2.3.1 編集チームの体制を決める

雑誌を準備するにあたって、最初に検討すべきことは編集体制を決めることです。編集チームは査読審査工程の管理と原稿編集の進行を担当します。編集チームには様々な体制が可能であり、雑誌の種類や規模などに対して各自の利点を持っています。以下の表に、一般的な体制とそれに最もふさわし雑誌をまとめました。

体制 その体制がふさわしい雑誌と仕事の割り振り方
編集長1人 + (編集幹事または編集局長) + 複数の編集委員 小規模から中規模の(部門に分けることが容易でない)特定の専門主題領域の国際誌。日々の作業は一般に編集長の事務室で行わる。編集幹事または編集局長(Editorial Secretary)の協力を受ける場合もある。編集委員は編集長と方針について検討する。一般的な業務支援は行うが、日々の管理業務は行わない。
編集長が2人 + (編集幹事または編集局長) + 諮問委員会 小規模から中規模の雑誌。2人の編集長の間には良好な作業関係とコミュニケーションを持つ。両者は互いに補足しあうスキルと知識を持つ。2人制と採る雑誌の中には、原稿や巻号を交代で担当するものあれば、査読審査担当とコンテンツ獲得担当に役割を分担しているものもある。通常、この体制は編集委員を持たないが、諮問委員会を持つ場合は多い。この委員は普通の編集委員より積極的に作業に参加する。
編集長1人 + 複数の部門担当編集者 + 諮問委員会

幅広い副専門主題領域にまたがる広範囲で大規模な雑誌。学際的な雑誌に特にふさわしい。通常、編集長の過重な作業負荷を緩和するためこの体制が採られる。各部門担当編集者(Section Editor)は原稿の投稿から受理/不受理の判定までを担当する。
編集長1人 + 編集助手(1人以上) + 諮問委員会 より小規模な雑誌。編集助手は編集長と同じ機関の若手研究者の場合が多い。方針などに関しては、諮問委員会が密接な協力とサポートを行う。
編集長1人 + 編集委員会 + 諮問委員会 中規模の雑誌。編集委員会は(通常は同じ機関で)編集長と密接な関係を持って作業する。各委員は一定量の論文を担当する。諮問委員会は日々の雑誌業務には参加しない。
編集長1人 + 諮問委員会 非常に対象範囲の狭い小規模な雑誌。諮問委員会は通常レフェリー(査読者)となる。

主な検討事項:

  • 雑誌には何階層のエディターが必要ですか? 副編集長、上級編集者、部門担当編集者、地域担当編集者、編集幹事、編集委員、書評担当編集者、編集諮問委員会、編集委員会など、選択はあなた次第です!
  • 主要な編集者は、雑誌が採用するオンライン投稿・出版システムを操作できますか、する気がありますか?


2.3.2 編集委員を集める

編集委員会は単なる「名前」だけの飾り物ではありません。雑誌の代表として熱心に働く研究者のグループであり、編集長と共に雑誌の発展に注力します。委員の構成は様々ですか、すべて学術上の業績で選ばれた者です。委員は原稿を審査するだけでなく、知的資本を提供し、研究者や実務家に人脈を活かし、雑誌の方針について編集者にアドバイスを行います。強力な編集委員会は雑誌の質と雑誌の発展の基礎を示すものです。

通常、編集長または運営委員会や出版委員会(時には出版者)が委員を選びます。しかし、空きポストを公示して新委員を集めている雑誌もあります。

評価の高い雑誌の委員になることは、一般に高く評価されます。これは重要な学術活動ですが、ほとんど常にボランティアです。

新しい雑誌に編集委員を集める場合は、雑誌の刊行目的と対象範囲、雑誌を始める理由、編集チームの紹介、雑誌の出版方法、使用予定の査読審査ソフトウェアを説明した手紙を委員候補に送ることになります。

主な検討事項:

  • 委員は雑誌の対象範囲の多様性を反映していますか? 世界の各地域を十分に代表していますか?
  • 委員には期待される任務と任期を正確に知らせてください。
  • 編集方針について検討するために定期的に委員が集まることが可能ですか? それともバーチャル会議で十分ですか? 旅費や宿泊費は誰が払いますか?
  • 委員の中に報酬を期待する者がいますか?
  • 委員に雑誌の進捗状況を報告する方法を探してください。委員の熱意と参加意識を維持することが重要です!


2.3.3 編集方針を採択する

編集チームは、編集委員会と共に、または編集委員会の意見を受けて、編集方針の採択と整備を行います。通常、編集長がこの作業を指導します。雑誌が委員会により運営されている場合は、この委員会が編集方針の正式な採択の場になると思われます。場合によっては、編集方針が技術的に問題ないことを確認するために出版チームの意見を聞くことがあるかもしれません(たとえば、受付けるファイルフォーマットを決めたり、オンライン公開査読方式を選択する場合など)。


2.3.3.1 雑誌のプロフィールを定める

雑誌のプロフィールの決定には、雑誌の対象範囲、コンテンツの種類、タイトル、出版頻度の決定が含まれます。これらの選択は全体として、同一分野の他の雑誌とあなたの雑誌を区別する最もわかりやすい手がかりを潜在著者に与えることになります。この節で説明する作業を行う際には、ユニークな雑誌を定義するために他の雑誌のウェブページを参考にすることになるでしょう。あなたの雑誌のプロフィールが他の雑誌と差別化されていればいるだけ、宣伝文句に翻訳することが簡単になります(4.5.1 雑誌を売り込むを参照)。

雑誌のプロフィールの様々な側面を決める際には編集チームと出版チームの全員が参加することになると思われます。雑誌が規約により運営される場合は、プロフィールは規約に含められ、運営委員会により採択されることになると思われます(2.5.5 ガバナンスの問題を検討するを参照)。


2.3.3.1.1 雑誌の種類を決める

新たな学術雑誌(または科学雑誌)を始めるにはそれなりの多くの理由があると思います。しかし、当初から雑誌の種類を正しく選択することも重要です。雑誌の管理に短期的にも長期的にも影響を及ぼすからです。

複合領域の雑誌: 対象範囲の広い複合領域の雑誌はもちろん幅広い著者と読者を集めることになりますが、同時に(とりわけ)より多くの編集者や編集局員、大規模な編集委員会(それゆえより複雑な組織や管理機構)、より多角的な宣伝活動(それゆえ営業活動により多くの時間とお金)が要求されます。

複合領域の雑誌にはオープンアクセスが非常に適しています。そうすれば、通常は各自の専門雑誌を読んでいる研究グループ間のコミュニケーションが1つのサイトを通じてすべてのコンテンツに自由にアクセスできるツールを持つことになるからです。雑誌の評判もすぐに確立することができます。これは雑誌が認知されるのに必要な数の購読を売るのに何年もかかり、評判の確立に非常に時間のかかる購読制の雑誌とは対照的です。

オープンアクセスは研究コミュニティ以外の読者グループにも届く利点があります。これは、通常、幅広い対象を持つ雑誌にふさわしい、または望ましいものです。たとえば、医学雑誌は患者組織や医療産業に関心をもたれる可能性があります。また、社会科学や人文学の雑誌は政策立案者やジャーナリスト、一般大衆に関心をもたれる可能性があります。

対象を限定した雑誌: たとえば、大きな研究分野の中の1つの主題に関する研究や特定の地域あるいは研究所で行われている研究などに対象を限定した雑誌では、著者、読者、レフェリーの3者のコミュニティが雑誌を維持できるだけの規模がなければなりません。スリムな編集体制が可能性であり、営業はより限定されたコミュニティに直接行うことができます。通常、このような雑誌は財政援助を得ることが容易です。雑誌から得られる国、地域、機関のメリットが明らかだからです。

このような対象を限定した雑誌にオープンアクセス出版モデルを適用すると、少数ではあるが特定の分野や地域のすべての研究者を即座に取り込めるという強みがあり、その分野を急速に前進させます。アクセスが有償の雑誌では、多くの購読者や読者を得るのにおそらく何年もかかるでしょう。単一主題や地域の雑誌をオープンアクセスにすれば、主題や地域にもよりますが、購読制の雑誌ではおそらく得ることができないと思われる、直接対象としている研究コミュニティ以外の読者の関心を引く可能性があります。

主な検討事項:

複合領域の雑誌

  • 学者や研究者の国際的なネットワークの構築と維持に誰が責任を持ちますか?
  • あなたが編集長だとしたら、雑誌の日々の作業を行うために編集幹事が必要ですか?
  • あなたが編集長だとしたら、所属の機関は財政的支援を行ってくれますか(たとえば、講義時間の削減など)、あるいは、事務スペースや電話、コンピュータ、プリンタなどの現物支援をしてくれますか? 個人秘書や所属機関の秘書を使用できますか?
  • 作業を体系化する最良の方法を検討してください。たとえば、雑誌を構成する部門ごとに、その部門の論文のすべての作業を担当する専任の部門担当編集者を置くべきですか? あるいは部門担当編集者にはレフェリーの選定だけを担当させ、残りの作業は編集長の事務所にいる編集幹事に任せますか?
  • 複雑な編集体制を持つあなたのニーズにはどのオンライン投稿・査読審査システムが最もふさわしいかを検討してください。
  • 雑誌が扱うすべての分野に雑誌を宣伝するために営業担当責任者が必要ですか?
  • 雑誌が対象とするすべての研究分野は掲載料に対して等しく敏感ですか、鈍感ですか?

対象を限定した雑誌:

  • 編集委員を任命する際に、地域や分野を考慮するべきですか?
  • 雑誌はオンライン査読審査システムが必要なほど大規模ですか?
  • 出版システムやウェブサイトの管理は誰が担当するべきです?
  • 対象コミュニティは掲載料に敏感ですか? 地方自治体や研究会議などから助成金を得ることができますか?
  • 雑誌が学会の正式な学会誌である場合、雑誌がオープンアクセスである(すなわち、会員だけの利益でなくなる)ことをどのように正当化しますか?


2.3.3.1.2 タイトルを選ぶ

通常、新雑誌の名前は雑誌の潜在的な想定読者が所属する研究分野に新しい出版窓口ができたことを最初に知らせる合図として機能します。この際、名前はこの雑誌が対象分野に既にある他の出版物と違うことも示さなければなりません。オープンアクセスジャーナルにとって決定的な違いは、雑誌がオープンアクセスであるという正真正銘の事実でしょう! しかし、一般にこれをタイトル自体で知らせることは必ずしも容易ではありません。オープンアクセスジャーナルのタイトルにオープン(アクセス)またはオンラインという言葉を入れたいと思うかもしれませんが、これは既に古臭く冗長に見えるようになっているからです。雑誌がオープンアクセスモデルで出版されているという事実は雑誌のウェブサイトで明らかにするべきです。

主な検討事項:

  • 雑誌の名前は雑誌の内容や対象範囲を明確に示していますか?
  • その名前は覚えやすいですか? これは、たとえば雑誌『Global Health Action』のhttp://www.globalhealthaction.net/のように、雑誌のURLがタイトル自体で構成されている場合は特に重要です(2.1.1.2 ドメイン名とURLを選択するを参照)。
  • 名前がロゴや広告、看板のなかで視覚的記号表現としてどう見えるかも検討してください。ここでは色やグラフィックデザインが重要な役割を果たすと思われます。
  • オープンアクセスジャーナルディレクトリを検索して、既存のオープンアクセスジャーナルの名前をチェックしてください。(ほとんど)すべての学術雑誌のタイトルの完全なリストはUlrichの逐次刊行物目録にあります。
  • 雑誌の名前を考える際には、冠詞(“a”, “an", “the")ははずします。ほとんどのオンライン目録はタイトル検索を行う際にこれらの語を外すことを要求します。
  • (ウェブサイトで公開される)タイトルは、これが学術雑誌であり、大衆雑誌ではないことが確実にわかるようにしてください。
    • 雑誌をオンラインで公開したら、ISSN/e-ISSNを取得するために自国のISSNセンターに登録することを忘れないでください(北欧諸国のセンターへのリンクは追加情報源の「ISSNを登録する」の項を参照)。ISSNの付番目的のためだけに雑誌タイトルの独占的権利(商標)を取る必要はないことに注意してください。2.5.1 ISSNを登録するのページを参照してください。.
    • 雑誌の名前を保護したいですか? タイトルの独占的権利を得る方法については2.5.3 商標保護のための登録をするを参照してください。
    • タイトルは省略形ではどのように表現されますか? 省略しても認識できますか? 雑誌の編集者の中には、参考文献に雑誌(この場合はあなたの雑誌)のフルタイトルを要求する者もあれば、略誌名を要求する者もあります。そのため、たとえあなたが略誌名を選んでいても、勝手に省略されて問題になる場合があります。Medlineに収録されている医学雑誌では略誌名が標準です。


2.3.3.1.3 コンテンツの種類を決める

出版を決めた雑誌の種類に基づいて、受け付けるコンテンツの種類を決める必要もあります。学術コミュニケーションにおける最も一般的なコンテンツの種類は次の通りです。

  • オリジナル研究
  • 総説記事
  • 注釈
  • 投書
  • 書評
  • 事例研究

収録を決めたコンテンツの種類は雑誌の予算編成に影響を与えます(1.5 予算を作成する5.1.3 予算の改定と報告を行うを参照)。特に、コンテンツの種類により一般に長さが異なるからです。オリジナル研究論文は活字組みで7~10ページ(分野によります)ですが、事例報告の長さはおそらく1~3ページです。したがって、ページ数により料金が決まる(DTP処理など)経費が影響を受けることになります。

予算編成作業を容易にし、経費を制御下におくために、受付けて査読審査や出版を行う原稿の種類ごとの最大ページ数を設定することを検討してください。

論文処理手数料や掲載料を設定した場合は、出版する論文の種類ごとに料金を変えたいかもしれません。ある種のコンテンツは一般に無償で受付けられていることを覚えておいてください。招待論文の著者に掲載料を求めることは普通ありません。総説記事は大量の作業が必要であり、通常、雑誌の引用を高めます。これも予算に反映する必要があるでしょう。


2.3.3.2 査読審査方針を定める

査読審査は、学問の質の高さを示す指標として一般に認められている、オープンアクセスジャーナルを含むすべての学術雑誌出版の中核的機能です。査読審査は、同一分野の研究者が著者原稿を読んで論文が学術的標準に達しているか否かを公平に審査する工程をさします。査読審査は、著者として当該分野で一般に認められている標準に達していることを強いることにより、見当違いの結果や不当な主張、偏向した、または根拠のない説明が広がることを防ぎます。

編集長は、編集チームと共に査読審査方針を申し合わせる必要があります。雑誌の査読審査方針には次の方針が考えられます。

  • 公開/透明 - 査読のために原稿を送る際に著者名を隠す必要がありません。すなわち、レフェリーは著者が誰かを知っています。また、著者も誰がレフェリーなのかを知らされています。自分でレフェリーを提案することさえあります。
  • シングルブラインド - 査読のために原稿を送る際に著者名を隠す必要がありません。著者はレフェリーが誰だか知りませんが、レフェリーは著者が誰だか知っています。
  • ダブルブラインド - 査読のために原稿を送る際に著者名を隠す必要があります。著者はレフェリーが誰だか知りませんし、レフェリーも著者が誰だか知りません。
  • 2段階審査 - 上のどの方法を選択した場合であっても、レフェリーの指摘により改訂が必要になった論文を改訂後に原稿の評価のためにもう一度同じレフェリーに送り返します。改訂が軽微な場合は、レフェリーの仕事を増やさないために編集者が改訂版をチェックする場合もあります。
  • 1段階審査 - レフェリーは原稿の最初の審査しか参加しません。すなわち、レフェリーのコメントに基づいて著者が行った改訂版の評価にレフェリーは参加しません。代わりに、最初の評価に従って編集長が原稿の処理を行います。
  • オープンピアコメンタリ - 出版済みの論文に対するコメント(頼んで書いてもらう場合とそうでない場合があります)。 通常、著者にはこれに応答するよう求められます。

方針の選択は、他の(おそらくは競争相手となる)研究者、あまり有名でない大学や研究所、女性、キャリアの浅い研究者、外国人風の名前などの要因による原稿に対する偏見を避けることを基準に行うべきです。また、革新的方法を試行し査読審査過程を迅速化しより多くを公開したいという雑誌の希望や当該分野の伝統も選択を決める要素となるでしょう。

査読審査方針では、どんな種類の論文を査読対象にするかについても検討するべきです。査読誌であったとしても、査読されない記事もあります。(ニュース記事や編集の辞など)ある種の記事では査読審査は行われていません。

査読審査方針については、雑誌のウェブサイトで執筆要項、刊行目的と対象範囲、雑誌の説明などのページに明確に提示するべきです。この情報は投稿する著者にとってはもちろん、他の者にも重要だからです。あなたの査読審査方針はUlrich国際逐次刊行物目録など、他者によっても報告されることになります。Ulrichでは「査読」雑誌は特別なアイコンで示されます。オープンアクセスジャーナルをDOAJに載せるためには、査読審査か編集者による品質コントロールを行う必要があります。EBSCO hostAcademic Search Premierでは、Cambridge Scientific Abstracts (CSA)データベースと同じように、ボックスをチェックすることにより、検索結果を査読雑誌の論文に限定することができます。(Ulrichの「査読誌」の定義はDOAJとは異なり、より厳格であることに注意してください。)

選択した査読審査方針は、査読審査工程のワークフローの構成に影響を及ぼします。2.3.5 査読審査ワークフローを設計するのページを参照してください。


2.3.3.3 出版方針を定める

図書館員は依然として、雑誌論文を巻数、号数、ページ範囲により登録・索引化することを好みますが、オープンアクセスジャーナルはそのような方式に従う必要はありません。印刷版を持たないオンライン雑誌の場合は特にそうです。実際、1つの号として順番に並べてページ付けをするために一定のページ数に達するまで論文が集まるのを待つ必要はありません。(巻、号、連続したページ付けの代わりに)デジタルオブジェクト識別子(DOI)(2.4.3 DOIの登録をするを参照)を使うことにより、受理したら直ちに(「論文内の」ページ付きで)論文を出版することができます。これにより、投稿から出版までの時間を短縮し、引用される機会を増やすことができます。また、この方法では、新着案内登録利用者に継続的に雑誌を思い出させることができ、おそらく論文の処理時間が短くなっていることにも気付くでしょう。これらはすべて雑誌の宣伝に役立ちます。

オープンアクセスジャーナルの中にはオンライン版の他に印刷版を持つものもあります。これにより印刷版の定期購読を販売することができ、収入源が1つ増えるからです。この場合、オンラインで単独の論文を出版するより巻号単位で出版する方が理にかなっていると考えるかもしれませんが、まったくそのようなことはありません。

主な検討事項:

  • 巻数を持ちたいか否かを決めます。持ちたい場合は、2009: 第1巻, 2010: 第2巻のように、1年ごとに1巻とし、巻数を連続的に数えるのが実用的です(2.3.3.3 出版方針を定めるを参照)。
  • 巻号単位で出版したいか否かを決めます。巻号単位で出版することを選択した場合は、第1巻第1号, 2009; 第1巻第2号, 2009; 第2巻第1号, 2010 のように、巻/年ごとに連続して号を数えます。
  • 論文の出版を受理された時点で継続的に行うか、1号分の完成を待って行うかをDOIに登録します。DOIはデジタル環境において、巻号数に関係なくコンテンツオブジェクトを識別するのに使用されます。
  • 論文の出版を継続的に行うことを選択した場合でも、ある主題特集やシリーズに関係する論文の出版をすべての論文が出版可能になるまで保留することにより、より対象を絞った販促活動が可能になります。
  • 雑誌を印刷する場合、印刷した雑誌をどこにどのように保管しますか? 支払方法などの顧客サービスはどのように用意しますか? 購読者に雑誌をどのように届けますか?


2.3.3.3.1 出版スケジュールを決める

雑誌の論文を巻号単位で出版すると決めた場合、これらの巻号をいつまでに用意し、オンラインで公開し、(該当する場合は)印刷版として出版するかといった、出版スケジュールを決める必要があります。この出版スケジュールは雑誌のウェブサイトに明示するべきであり、編集チームと出版チームは常にこのスケジュールを守るよう努力しなければなりません。

出版チームは、原稿投稿数の自然な増減(たとえば、多くの分野で夏休みの直前と1年の終わりに投稿が増加することが見られます)と、校正作業の管理やファイルの準備、オンライン環境への登録といった制作に関する作業に必要な時間を考慮に入れて出版スケジュールを決めるべきです。

出版スケジュールは、ISI(インパクトファクターを提供)や Medline などのデータベースに収録してもらう際に重要な情報になります(4.1.6 インデックスサービスと連携するを参照)。これらのサービス機関は、中でも特に出版の定期性と一貫性を詳しく調べるからです。

出版スケジュールは営業資料にも載せるべきです。雑誌に広告を載せる場合は、掲載料金と共に出版スケジュールを載せるべきであり、出版スケジュールに合わせて広告用ファイルの提出期限を決めるべきです。


2.3.3.3.2 年間出版数を決める

雑誌の会計年度内に出版する論文数の決定は、担当者の作業割り当て計画だけでなく、その年の経費と(もしあれば)収入源の予算策定にも重要です。

雑誌が一定数のページからなる一定数の号数で出版される場合は、予算や計画の策定はきわめて容易です。論文の投稿がそのための予算を超え、その年に計画した号数に収めることができない場合は、却下(リジェクト)する論文を増やすか、出版数を増やすために翌年の予算を増額するかを選択することになります。

論文を受理する度に継続的に出版する場合でも、最後には計画以上の数になる可能性があります。ボランティア作業に基づくビジネスモデルの場合は、作業負担を軽減できるか否かが主な心配事になります。掲載料に基づくビジネスモデルの場合は、この状況を極めて簡単に拡大することができます。より多くの論文を出版するために必要となる直接経費を掲載料で賄えるはずだからです。しかし、いずれの場合も、論文が増えれば増えるだけ作業が増えることを意味します! もう一度言いますが、論文の却下が作業量の増加を止めるための選択肢の1つです。

新しい雑誌にあまりにも高い目標を掲げてはいけません! その雑誌が出版のための適当な窓口であるという信頼を著者の間に構築するには時間がかかるものです(4.5 インパクトを確保するを参照)。

出版する論文の数は、出版を決めた原稿の質や重要性に関する問題を引き起こします。雑誌の中には、その分野の最高ランクの研究者が投稿する高インパクトが約束される論文しか出版しないものもあれば、学問上の厳密な要件は満たすが、必ずしも高い引用を受けるとは思われない原稿を受理することにより若手研究者に安定した出版窓口を提供することを目的としているものもあります(PLoS Oneは高いインパクトファクターを得ることを目的としていないオープンアクセスジャーナルの例です)。この問題は雑誌が高いインパクトファクターを得るようになった場合特に大きくなります。これは通常投稿数の増加をもたらすからです。ここで編集者と出版者は、よりたくさんの原稿を受理するとインパクトファクターが低下するのではないかという、ジレンマに直面します。結局、この問題に明確な解答はありません。どの程度「インパクトファクターゲームに参加」したいかを決めるのはあなた次第だからです。

主な検討事項:

  • どれくらい論文の投稿が期待されますか? 対象となるコミュニティと競合する雑誌の規模を検討してください。
  • 出版量はどの程度予算に影響しますか? エクセルを使ってシミュレートしてください。
  • 受理する度に論文を出版するより巻号単位で出版する方が合理的であるか否かを検討してください(2.3.3.3.1. 出版スケジュールを決めるを参照)。
  • 予想以上に多くの(良い)原稿が投稿されたらどうしますか?
  • 投稿された論文の数が定期的に出版予定の号数を維持できないほど少なすぎたらどうしますか?
  • 雑誌が料金免除を行う場合、または招待論文を書いても貰う場合は、これによる収入の減少を予算に計上することを忘れないでください。
  • 受理する論文はどの程度のレベルであるべきですか?


2.3.3.5 料金免除方針を定める

あなたの雑誌が論文処理手数料、掲載料、投稿費などの料金を課す場合、料金を支払うことができない著者に料金を免除するか否かを決めてください。ほとんどの商用オープンアクセス出版社は発展途上国の著者には料金を免除しています。

料金免除を行うか否か、および免除を行う場合の条件を事前に決めておくことにより、後日著者との不要な議論がなくなります。

料金免除方針が査読審査に影響を及ぼすべきではありません。そのため、たとえば、免除方針の1つとして、原稿を受理または却下する最終判断の後に免除申請を行うと決めると良いでしょう。もう1つの方法として、申請先を原稿の受理または却下の判定に直接関係しない編集幹事や出版チームのメンバーにすることができます。

料金免除方針が何であれ、それを著者や読者に公開するべきです。理想的には、課金に関するその他の情報と共に執筆要項に明記するべきです。もう1つの方法として、オンライン投稿システムに料金免除の情報を組み込むことができます。

料金免除方針を採用する場合は、予想される免除数を雑誌予算に計上することを忘れないでください(1.5 予算を作成するを参照)。


2.3.3.6 その他の方針を定める

上で述べた方針の他に、クレーム処理に関する方針や対象分野で一般に見られる方針を決めることも重要です。クレームに関しては、どんな条件の場合にクレームを投稿できるか、誰にするのか、クレームの処理方法に関する簡単な記述を方針に含めるようにしてください。

対象分野固有の方針に関しては、おそらくあなたのチームのメンバーは対象分野の他の雑誌で発表したことがあるので、既にその多くを知っているはずです。一般的な方針には次のようなものが考えられます。

  • 利害の衝突
  • 実験動物や被験者の保護
  • 倫理規定
  • データの提出

必要な方針を完全に洗い出すために、他の雑誌にあたって標準的な方針を特定し、あなたの雑誌に取り入れるべきかを検討してください。


2.3.4 刊行目的と対象範囲を作成する

雑誌の刊行目的と対象範囲を完全に説明した文章をウェブサイト(該当する場合は印刷版)に置くことは必須です。刊行目的と対象範囲は、あなたが雑誌で成し遂げたいこと、あなたが出版したい論文の種類についての概要を著者と読者の両者に案内することになります。読者と著者はこの情報を使って最終的に身銭を切るか、論文を投稿するか、別の雑誌に行くかを判断することになります。

刊行目的と対象範囲には必ず独自の「セールスポイント」を含めてください。そのためには、研究分野や出版モデルにおいてあなたの雑誌と他の雑誌を区別するものは何なのか、どうすれば著者があなたの雑誌に論文を投稿するのを選ぶようになるか、と自問してください。明確な刊行目的と対象範囲は適切な資料を引き付けるのに役立ちます。

雑誌の刊行目的と対象範囲を明確に定義し洗練させると、この情報が重要となる索引サービスへの申請や助成金申請、営業活動を行う際の作業を大幅に削減できるという効果があります。

文章は焦点を絞り、要領を得たものであるべきです(文章例については、追加情報源にあるリンクをチェックしてください)。雑誌がオープンアクセスモデルで出版されているという事実は重要なメッセージですので、はっきりと明確に伝えるべきです。

主な検討事項:

  • 雑誌の刊行目的はいったい何ですか? 焦点を絞ってください!
  • 雑誌の存在理由は何ですか? オープンアクセスであることを理由にすることができます。
  • すべての研究分野の中であなたの雑誌はどんな研究分野を対象としますか? 明確にするために、雑誌が特別に関心を持っている研究分野を箇条書きにしてください。
  • 対象分野の既存の雑誌とはどのように違いますか? ここでもオープンアクセスだという点が有効でしょう。
  • 専門誌をめざしますか、複合領域の雑誌をめざしますか? 後者の場合、そのようなアプローチにオープンアクセスがふさわしいことを強調してください(2.3.3.1.1 雑誌の種類を決めるを参照)。
  • 雑誌に学会や協会が関係しているか否かを述べることは重要ですか?
  • 雑誌をどんなターゲットオーディエンスに届けることを目的としますか? この目的を達成するためになぜオープンアクセスを導入したかを強調してください。
  • どんな種類の論文を雑誌は受け付けますか。たとえば、オリジナル論文、総説記事、短報、投書などは?


2.3.5 査読審査ワークフローを設計する

ほとんどの編集者や編集チームにとって最大の課題は査読審査を迅速に行うことです。迅速な査読審査には主に2つの要素が関係します。レフェリーの効率的な管理と明確なワークフローです。雑誌創刊準備のこの段階では、後者に取り組むことが重要です。これにより、雑誌創刊後にレフェリーと作業を行うことが容易になります。

以下に、小規模雑誌と大規模雑誌のための推奨ワークフローを説明した2つのフローチャートを示します。

小規模雑誌

このフローチャートは、著者による投稿から判定に至る査読審査工程に含まれると思われる様々な作業とそれに関与する役割の概要を示しています。

ここでは小規模雑誌を、受領書の送付、レフェリーの割り当て、工程全体の進行といった査読審査工程を編集長が自ら処理するような雑誌と定義します。部門担当編集者は参加しません。

編集フローチャート - 投稿から判定まで - 小規模雑誌

著者が郵送、メール、またはオンラインシステムを使って、原稿を編集事務局に投稿する

原稿の受領を確認するために、受領書を著者に送るべきです。

編集長による最初の審査

原稿が雑誌の対象範囲に含まれているか、形式上の要件を満たしているかをチェックします。要件を満たさない、または不適当である場合は、著者にはその旨を通知するべきです。原稿は保管(要求があった場合は返送)します - 直ちに却下

原稿を却下する

雑誌での出版にふさわしくない原稿は却下します。却下の理由を書いた不受理通知書を著者に送ります。原稿は保管します。

原稿を受け付け、査読に回す

原稿が雑誌の刊行目的と対象範囲に適合し、執筆要項を形式的に順守している場合は、査読に回します。論文の種類(招待論文、書評など)によっては、編集長が直ちに受理することもできます。

原稿をチェックする

原稿が雑誌のスタイルに合わせて書かれているか、すなわち(場合に応じて)要旨やキーワードの指定、正しい参照システムの使用などをチェックします。また、ブラインドシステム(シングル、ダブル、公開)が正しく使用されているかもチェックします。何かミスがあった場合は、原稿を査読に回す前に著者に連絡し修正を依頼します。

編集長がレフェリーを任命する

査読を行うために、通常は少なくとも2人のレフェリー(査読者)に原稿を送ります。自分でレフェリーを提案するよう著者に依頼する場合もあります。

レフェリー

レフェリーは原稿を読んで評価し、編集長に査読レポートを返します。査読期間は分野により2週間から6週間に設定します(人文学や社会科学の論文には通常多くの時間が与えられます)。レフェリーには、査読レポートの形式や検討事項を説明する明確な査読作業指示書を提供する必要があります。

編集長の判定

レフェリーの意見を基に、編集長は以下の判定を行います。

  • さらなる改訂なしに原稿を受理(アクセプト)する
  • 改訂後に受理する
  • 再投稿を著者に求める
  • 却下(リジェクト)する

さらなる改訂なしに論文を受理する

受理通知書を著者に送り、最終原稿を出版チームに回します。

改訂後に受理する

レフェリーの意見に従って原稿を修正して、改訂版を編集長に送付するよう著者に依頼します。見直しの期間は分野や必要となる追加のデータや情報、論拠の種類により、2週間から8週間に設定します。

原稿の再投稿を求める

論文を根本的に改訂して、新たな評価を受けるために再投稿をすることを著者に求めます。投稿に戻ります!

論文を却下する

不受理通知書を著者に送り、原稿は保管します。判定についてレフェリーに知らせる場合もあります。

主な検討事項:

  • どんな査読審査工程が雑誌に適用できますか? 2.3.3.1.1 雑誌の種類を決めるを参照してください。
  • シングルまたはダブルのいずれのブライド方式を採用しますか?
  • 論文のレフェリーは何人必要ですか?
  • 改訂版をレフェリーに戻すべきですか?
  • 査読や改訂にどのくらいの時間を認めるべきですか?
  • 最終判定をレフェリーに伝えるべきですか?
  • 定型的な通知書でよいですか、著者やレフェリーに個別に手紙を書く必要がありますか?

大規模雑誌

以下のフローチャートは、大規模雑誌において、著者による投稿から判定に至る査読工程に含まれると思われる様々な作業とそれに関与する役割の概要を示しています。

ここでは大規模雑誌を、部門担当編集者が編集長を補佐する(もう一人の編集長や編集委員が補佐する場合もあります)雑誌と定義します。

編集フローチャート - 投稿から判定まで - 大規模雑誌

著者が郵送、メール、またはオンラインシステムを使って、原稿を編集事務局に投稿する

原稿の受領を確認するために、受領書を著者に送るべきです。

編集長による最初の審査

原稿が雑誌の対象範囲に含まれているか、形式上の要件を満たしているかをチェックします。要件を満たさない、または不適当である場合は、著者にはその旨を通知するべきです。原稿は保管(要求があった場合は返送)します - 直ちに却下

原稿を却下する

雑誌での出版にふさわしくない原稿は却下します。却下の理由を書いた不受理通知書を著者に送ります。原稿は保管します。

原稿を受け付け、査読に回す

原稿が雑誌の刊行目的と対象範囲に適合し、執筆要項を形式的に順守している場合は、査読に回します。論文の種類(招待論文、書評など)によっては、編集長が直ちに受理することもできます。

原稿をチェックする

原稿が雑誌のスタイルに合わせて書かれているか、すなわち(場合に応じて)要旨やキーワードの指定、正しい参照システムの使用などをチェックします。また、ブラインドシステム(シングル、ダブル、公開)が正しく使用されているかもチェックします。何かミスがあった場合は、原稿を査読に回す前に著者に連絡し修正を依頼します。

編集長が部門担当編集者を任命する

原稿の査読審査工程全体を監督し、答申または判定を返す部門担当編集者を編集長が任命します。

部門担当編集者がレフェリーを任命する

査読を行うために、通常は少なくとも2人のレフェリーに原稿を送ります。自分でレフェリーを提案するよう著者に依頼する場合もあります。

レフェリー

レフェリーは原稿を読んで評価し、部門担当編集者に査読レポートを返します。査読期間は分野により2週間から6週間に設定します(人文学や社会科学の論文には通常多くの時間が与えられます)。レフェリーには、査読レポートの形式や検討事項を説明する明確な査読作業指示書を提供する必要があります。

部門担当編集者の答申

レフェリーの意見を基に、部門担当編集者は以下の答申を編集長に行います。

  • さらなる改訂なしに原稿を受理する
  • 改訂後に受理する
  • 再投稿を著者に求める
  • 却下する

編集長はさらなる改訂なしに論文を受理する

受理通知書を著者に送り、最終原稿を出版チームに回します。

編集長は改訂後に受理する

レフェリーの意見に従って原稿を修正して、改訂版を編集長に送付するよう著者に依頼します。見直しの期間は分野や必要となる追加のデータや情報、論拠の種類により、2週間から8週間に設定します。

編集長は原稿の再投稿を求める

論文を根本的に改訂して、新たな評価を受けるために再投稿をすることを著者に求めます。投稿に戻ります!

編集長は原稿を却下する

不受理通知を著者に送り、原稿は保管します。判定についてレフェリーに知らせる場合もあります。

主な検討事項:

  • どんな査読審査工程が雑誌に適用できますか? 2.3.3.1.1 雑誌の種類を決めるを参照してください。
  • シングルまたはダブルのいずれのブライド方式を採用しますか?
  • 論文のレフェリーは何人必要ですか?
  • 改訂版をレフェリーに戻すべきですか?
  • 査読や改訂にどのくらいの時間を認めるべきですか?
  • 最終判定をレフェリーに伝えるべきですか?
  • 定型的な通知書でよいですか、著者やレフェリーに個別に手紙を書く必要がありますか?


ページ: 1 2 3 4 5 6

あなたのベストプラクティスをお寄せください

(訳注: このフォームは直接オリジナルサイトに送られます)