NIIオープンハウス2015 レポート

基調講演

「これからのメディアと教育」

角川 歴彦(株式会社KADOKAWA取締役会長)

エンタテイメントのビッグデータ解析という夢に協力体制を築いています。テレビの視聴率だけでなくエンタテインメントのビッグデータ解析が必要です。出版、映画、音楽、ゲーム…、これからはテレビも含め、マルチコンテンツガイド(MCG)ということで、リアルタイムの関心を社会との関係を分析したらどうかということで取り組んでいます。

 

IP2.0研究会の活動では、将来、知財がどうなっていくのかを研究してきました。研究会を通じて、今の著作権法が「機械が生み出す著作物」について対応できるのか、これから機械が全てを行うようになったら人間にどんなクリエイティブな領域が残るのか、そのような中で「21世紀型企業」とはどんなものになるのかを探っていきたいと思いました。

 

21世紀型企業論。IT大手は各社同じ頂上を目指しており、お互いの領域を超えてぶつかり始めています。新たな時代の中、IoTとO2Oがコンセプトとして出てきました。これらは真逆の概念であり、ITの理念として、先が見えてきているのにも関わらず混迷を深めているなと感じます。KADOKAWAは「アナログからデジタルへ」、ドワンゴは「ネットからリアルへ」。

 

21世紀に価値ある企業とは何かを考えますと、あと10年で消える職業・なくなる仕事というものがあるといわれています。「今年小学校に入学した子どもたちが大学を卒業するとき、その65%が現在は存在していない職業につくだろう」とデビッドソン教授(デューク大学)は指摘しています。そうすると、20世紀型企業は存続しえないという危機意識を持ちました。

20世紀型知識社会はソーシャル社会へと変革を求められていると思います。「共有・共生する社会に変える」、社会の再結成を可能にするプラットフォーム作りが必要なのではないかと思います。ソーシャル社会とは、「知識から情報へ」「量も質も」「情報が富を生み出す」「情報集約型企業」「大衆の数の力と、大衆自ら主張・創造」「マスメディアからソーシャルメディア」と考えています。21世紀型の企業になるためにはKADOKAWAとドワンゴは一緒にならなければならないのではないかと思い、一緒になってプラットフォームを作ろうと提案しました。強烈な補完関係であり、目指すものは一致しています。いわばコンテンツの世界でIoTを目指したということでもあります。

 

この2社が今注目しているのが教育です。教育事業が統合の象徴になっていきます。まずは人材育成です。グローバルにおいては、日本のポップカルチャーの手法を教え、現地の文化と一体化しながら優秀な人材を輩出するための教育事業を開始しました。大きな壁は、教育者をどう育てるかです。そして各国の教育制度・規制がバラバラでそれを乗り越える必要があります。また、カリキュラムをどうつくるかという点も意外と欠けていた点であり模索中です。東大では角川教育基金というものでサマースクールを行い、世界中から受講生が来ました。この教育成果をベースに共同作業でカリキュラム化を行っていこうということになりました。国内においては、ドワンゴがバンタンを買収し、日本国内で教育事業を展開します。「ニコニコ的な通信高校」も立ち上げ準備中です。

 

2015年秋netflixが日本に上陸します。netflixは第二のamazon、新たなIT巨人になりえるのではと思っています。著作権法、産業構造の上でも大きな影響を与えるのではないかと思います。創造と破壊をするイノベータだといわれています。コンテンツ業界に活力を与えつつ、あるいは破壊をしていく、それが日本の社会にどのような変化をもたらすのか、これから非常に注目すべきかと思います。

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