Sep. 2022No.96

智の結晶が発見できるCiNii Research 本格始動

Essay

変容するCiNii

新たなニーズに応えるために

Koji Sakaguchi

国立情報学研究所 学術基盤推進部 学術コンテンツ課
学術コンテンツ整備チーム 係長

 国立情報学研究所(NII)の事業として提供されているサービスで、最も広く知られているサービスの1つは、CiNii(サイニィ)であろう。最近NIIに新規採用された職員からも、学生時代CiNiiを利用していたとの話を耳にすることが多い。

 一言にCiNiiと言っても、サービス内容は大きく変容している。2005年の公開直後は、NACSIS-IRの論文系のデータベースやNACSIS-ELSなどの、NIIのサービスで提供していた論文検索サービスを統合した内容であったが、その後、J-STAGEや機関リポジトリなどの論文の情報を取り込んだこと、およびGoogleと連携したことにより、アクセス数が急速に増加した。

 それにより、CiNiiのサービス自体に負荷がかかり、CiNiiのシステムのアーキテクチャの見直しが必要になった。そこで、2009年にアーキテクチャの再構築と共に、ユーザーインターフェースの刷新も行い、システムの安定化とユーザビリティの向上を実現させた。この時のユーザーインターフェースが、現在の CiNiiResearch(サイニィ リサーチ)などのCiNiiの各サービスのデザインの基となっている。

 その後、NACSIS-CAT(ナクシスキャット)の書誌・所蔵データの検索サービスとして提供されてきた Webcatが2012年度で終了することに伴い、その後継サービスとして、2011年11月にCiNii Books(サイニィ ブックス)が正式公開された。これに合わせて、CiNiiがCiNii Articles(サイニィ アーティクルズ)にサービス名称を変更した。

 2013年の学位規則改正により、2013年4月以降に授与された学位論文は、原則として従来の印刷公表に代えて、インターネットを利用して公表されることになった。これに対応するため、博士論文の検索サービスとして、2015年10月に、CiNiiDissertations(サイニィ ディザテーションズ)が正式公開された。

 2010年代半ば頃から、世界的にオープンサイエンスを促進する潮流が生まれ、論文、研究データのオープン化がより一層求められるようになってきた。これに対応するため、2020年11月に、論文、研究データ、プロジェクト等を統合検索できるサービスとして、CiNiiResearchのプレ版が公開された。プレ版に、詳細検索、論理演算を使った検索機能などを追加し、2021年4月にCiNii Researchが本公開された。

 CiNii Researchの公開により、CiNiiのサービスは、CiNii Articles、CiNii Books、CiNii Dissertations、CiNii Researchの4つとなったが、CiNii Researchは、論文、図書・雑誌、博士論文のデータも収録しているので、2022年4月に、CiNii Articlesを統合し、論文検索をCiNii Researchに一本化した。今後、CiNii Books、CiNii DissertationsもCiNii Researchに統合することを検討している。

 これまで見てきたように、CiNiiは、学術情報を巡る政策的な変化や世界的な潮流に合わせ、サービスの内容を変貌させ、新たなニーズに応えようとしている。今後、学術情報を巡っては新たな変化が生じるであろう。それに合わせて、CiNiiが、どのようにサービスを変化させ、新しい姿になるか心待ちにしている。

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