Sep. 2015No.69

仮想通貨の技術と課題

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仮想通貨の代表であるビットコインの仕組み

ビットコインが通貨になるには、その解決が不可欠

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 ビットコインは、「Satoshi Nakamoto」と名乗る実在性が未確認の人物の論文("Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System."(November 2008)./ https://bitcoin.org/bitcoin.pdf)が原点となっており、P2P(ピアツーピア:すべての参加者がネットワークの一部としてサーバにもクライアントにもなる方式)型で構成される電子的に取引される仮想通貨。国家の裏付けはなく、ネットワークを通じて流通する決済手段である。ネットワークで送受信が可能な「独立性」、複製や偽造ができない「安全性」、使用者や使用履歴が特定されない「プライバシー」を担保するネットワーク技術をベースに、電子貨幣の一つの理想像を実現したと言える。とくに、発行者や中央管理者を持たないにもかかわらず、実際の貨幣と同様に、当事者間で直接譲渡が可能な「転々流通性」や、額面を分割して使用可能な「分割可能性」の機能を持つことは特筆すべきであり、現状の日本の電子マネーと大きく異なる。

 ビットコインのもう一つの大きな特徴は、「採掘作業」によって通貨が発生する点だ。採掘とは、直近の数百件の取引情報をブロックと呼ばれる帳簿に格納し、これに直前のブロックのハッシュ情報を加え、さらに、乱数を加えながらハッシュ関数の値を取り続け、ハッシュ関数で得られた値において、0が一定個数並ぶまで計算を続けるというもの(詳細はP6-7)。採掘(計算)には約10分間の作業が必要で、計算結果を導き出して「採掘」に成功した勝利者だけが、ビットコインの取引記録に新たな記録を追加する権利を得て、一度の採掘で現時点では25BTCを入手できる(4年毎に半減させられる)。そして、参加者がその計算結果を認めることで、取引の正しさが保証される。一方、受け取った仮想通貨を次に送金するためには、電子財布の中に格納されている秘密鍵による電子署名とそれを検証してもらうための公開鍵が必要である。

 このように技術の組み合わせにより、中央管理者がいなくても転々流通性が担保され、取引の正しさが保証される点が、ビットコインが多くの研究者を惹きつける理由と言える。

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