Sep. 2025No.105

生成AI 光と影生成AIの便益、リスク、社会相関とNIIの研究活動

Column

生成AIを活用した講義動画の質問応答支援システム 藤吉AI先生

研究機関DXシンポ発表より教育現場での生成AI活用

FUJIYOSHI, Hironobu

中部大学理工学部AIロボティクス学科 教授

(敬称略)

 「藤吉AI先生」は、生成AI技術を活用した講義動画の質問応答支援システムであり、学生の復習効率を高めるとともに、教員の質問対応にかかる負担を軽減することを目的としています。

 コロナ禍により、大学講義は急速に動画配信形式へと移行しましたが、長時間の講義動画の中から必要な部分を探し出すのは容易ではなく、学生の自主的な復習を妨げる要因となっていました。また、対面での質問をためらう学生も多く、学習上の疑問を解消しにくい状況も課題となっていました。

 本システムは、こうした問題に対して、学生が講義に関する疑問を24時間いつでも自由に入力でき、AIチャットボットから即座に回答を得られる環境を提供することで、学習の質と主体性を向上させることを目指しています。質問の内容に応じてAIが関連する講義情報を的確に参照し、講義内容に基づいた信頼性のある回答を生成する点が特徴です。

 「藤吉AI先生」は主に三つの技術から構成されています。第一に、講義動画解析技術では、AIがスライドの切り替えタイミングを自動で検出し、各スライドに対応する教員の発話内容を音声認識によってテキスト化します。これにより、スライド単位で整理された発話テキストとスライドの切り替えタイミングがデータベースに登録され、効率的な情報検索が可能になります。第二に、質問応答技術では、学生の質問文に対してRAG(検索拡張生成)手法を用い、該当する発話テキストを検索して抽出したうえで、それをプロンプトとして大規模言語モデル(LLM)に入力し、文脈に合った自然で正確な回答を生成します。第三に、生成された回答には、関連する講義動画のタイムスタンプへのリンクが付与されており、学生はAIの回答の根拠を動画上で直接確認することができます。

 このように、AIの生成内容と講義の実際の内容を結びつけることで、生成AIが抱える代表的な課題である「ハルシネーション(もっともらしい誤情報の生成)」を回避しています。2024年から、私が担当する複数の講義に本システムを試験導入したところ、学生アンケートでは93%が「復習に役立った」と回答し、94%が「動画リンクが適切だった」と評価、さらに98%が「他の講義でも導入してほしい」と強く希望しており、非常に高い満足度と教育効果が得られました。

 このような学生からの高い評価を受けて、本システムを開発した大学院生とともにスタートアップ「coevoAI」を設立し、現在は教育現場への社会実装を目指して取り組んでいます。 今後は、さらに多様な講義や教育分野への応用を視野に入れ、学習支援の質を一層高める技術の改良を進め、多くの方々にご活用いただけるよう努めてまいります。

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藤吉AI先生 https://page.videoq.coevoai.co.jp/mprg/robotvision/index.html
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