研究シーズ2020情報環境科学

ブロックチェーンの応用により
経済活動の新たな構造を提唱

岡田 仁志情報社会相関研究系 准教授

研究分野ブロックチェーン/仮想通貨/スマートエコノミー

ブロックチェーンの経済活動への応用として、シェアリング・エコノミーに代表される自律分散型の経済プラットフォームが注目されています。経済活動の三層構造モデルを新たに提唱し、経済共同体の再編成における諸問題について、学際的に研究しています。

研究背景・目的

ブロックチェーンを経済活動に応用するために、三層構造モデルを提唱しています。第一層では、改ざん困難な仮想通貨のブロックチェーンの性質を利用して、不可逆的な記録を共有します。第二層では、シェアリング・エコノミーの「鍵」など、あらゆる「アセット」が流通します。第一層の「金流」と第二層の「商流」は表裏一体の関係にあります。さらに第三層では、経済活動を規律するレギュレーション装置を実装します。いま、経済活動はかつてないイノベーションを経て、新しい三層構造へと再統合される途上にあります。ブロックチェーンを契機とした経済共同体の再編成における経済と社会の諸問題について、学際的な視点に基づいて探究しています。

研究内容

ブロックチェーンの応用可能性として注目されるのが、シェアリング・エコノミーに代表される自律分散型の経済プラットフォームです。中国のような消費大国においては、あらゆる資源よりも人間のニーズが上回る傾向にあり、シェアリング・エコノミーの進展なくして持続的経済の維持はありません。国境を越えて民泊予約や車両予約などのサービスが展開される時代には、特定のサービス主体を信頼する従来の構造から、信頼できる第三者の存在を必要としないブロックチェーン社会への構造転換が不可欠です。迫りくるスマートエコノミー時代の基盤としてのブロックチェーンの可能性について、国内外の共同研究者の協力を得て学際的に研究しています。

産業応用の可能性

これまでの経済活動では、産業ごとのプレーヤーが情報の結節点となって、情報の非対称性をコントロールしていました。ブロックチェーンの時代が到来すると、情報の非対称性は解消され、経済共同体の活動はP2P(Peer to Peer)ネットワークを支えるノード(結節点)によって共有されます。このような変革の時代にあって、経済共同体における意思決定の主導権を掌握するのは、かつて非対称性の中心に位置した企業ではなく、経済活動のプラットフォームとなるブロックチェーンを提供することに成功した企業です。ブロックチェーンを契機とした経済共同体の再編成の方向性について、海外の研究者と連携して多角的に研究しています。

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上海交通大学で開催された国際会議「Global Cities Forum」にDistinguished Guest(来賓)として登壇し、ブロックチェーンを応用したスマート・キーの概念について実演をまじえて講演した。写真は、ラポルトゥール(記録係)による公式報告の様子。NIIの研究者を招待したことなどが紹介された。

関連リンク

岡田 仁志 - 情報社会相関研究系 - 研究者紹介

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