研究背景・目的
コンテンツの配信は今日のインターネットトラフィックの大きな割合を占めています。コンテンツをネットワーク内でキャッシュすることによってトラフィックを削減する方法が取られていますが、現在実現されているキャッシング機構はコンテンツとその場所(ネットワークのノード)との間のネーミングの変換が必要であり、複雑な処理を伴います。このような問題を解決し、ノードの代わりに、コンテンツを指定するコンテンツ指向ネットワーク(Content-Centric Network, CCN)が将来のインターネットアーキテクチャの一つとして提案されています。コンテンツ指向ネットワークでは、各々のネットワークノードでキャッシングを行うことによって、コンテンツの配信を効率的に行うことが期待されます(図1)。しかし、膨大なコンテンツの量に比べ、ノード内のキャッシュとして利用できる記憶容量は限られているため、それを最大限に活用できるキャッシングを行うことが本研究の目的です。
図1 コンテンツの人気度の変化
研究内容
ネットワーク内でキャッシングを行うことによって、ネットワークトラフィックとコンテンツサーバの負荷を削減でき、また、配信遅延を短縮できます。一方、インターネットで配信されるコンテンツには無数の種類があり、配信される頻度(コンテンツの人気度)も大きく異なります。限られたキャッシュ空間を有効に使用するため、制御のオーバヘッドを抑えながら、キャッシングするコンテンツを有効に選択していくことが必要です。そのために、どのコンテンツをどこでキャッシングするかを決める「キャッシング方式」と、キャッシュの内容をどのように更新していくかを決める「キャッシュ更新方策」の2つの機構が鍵となります。本研究では、コンテンツ指向ネットワークのためのキャッシング機構について提案しています。コンテンツの人気度を自動的に反映でき、図1の左上のグラフに示すような人気度の変化にも追従できるような、ノード間の分散制御によるキャッシング方式と、ノード内の制御が簡単なキャッシュ更新方策の組み合わせを考案しました。
産業応用の可能性
- 将来のインターネットを実現するための基礎的な技術の一つとして有望
- 多くのノードからなるキャッシュのネットワークを構成するための方法として利用可能
- トラフィックの削減、サーバの負荷分散に有効
連絡先
計 宇生[アーキテクチャ科学研究系 教授]
kei[at]nii.ac.jp ※[at]を@に変換してください