Greeting

所長挨拶

喜連川 優
国立情報学研究所長

国立情報学研究所は2020年4月に創設20周年を迎えました。この節目の年にあたり、「国立情報学研究所二十年の歩み」を編集し、刊行することといたしました。創設時の理念では、新しい21世紀に向かい、「情報学」という新しい言葉を全面に打ち出し、社会経済活動全般を支える新しい学問分野として育てていくとともに、情報学研究の成果を学術情報基盤の構築のため実証的に適用していくことを重視しました。研究と事業を「車の両輪」として一体的に推進するという国立情報学研究所のこの基本姿勢は、20年間にわたり確実に引き継がれ現在に至ります。

一方、2004年には法人化という大きな変革を受け、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構の一員として新たな体制に移行しました。また折からのITの急激な進化に伴い、事業活動も大きく変化してきました。
国立情報学研究所の淵源は40年以上も遡りますが、前身の学術情報センターは1986年に設立され、1996年に「創立十周年記念誌」を刊行いたしました。その後、2000年に国立情報学研究所へと改組転換されましたが、この間の活動についての記録は編集されておりません。そのため、今回20年史をとりまとめるにあたり、学術情報センター時代の1996年以降、国立情報学研究所に改組される期間を含めて、20 周年を迎える2020年3月までの諸活動を記録することとしました。

2020年は新型コロナウイルス感染症COVID-19の世界的感染拡大により、未曾有の混乱の渦中にあります。これに打ち克つために、ICTの果たす役割は極めて大きく、大学でもオンライン授業への切り替えなどにあたり、学術情報基盤の重要性が再認識されているところであります。今後も、国立情報学研究所が我が国の学術界で求められる役割は大きく変貌していくと予期されます。本書は、まさに本研究所の創設期以降の重要な節目の諸活動を的確に記録したものであり、これから大きく変わりゆく社会を考る際の記録史料として幅広く利用されることを期待しております。