今日、電子ジャーナルに象徴される学術情報の電子化が急速に進むなかで、学術情報流通基盤としての大学図書館は、その収集・提供の役割が一層期待されている。現在各大学で導入される電子ジャーナルのタイトル数も格段に整備されつつあるが、一方では、学術雑誌の価格高騰は依然として続いており、新たな購読誌電子加算額の負担及び大学予算の緊縮化による購読雑誌の中止、また出版社同士の吸収・合併による寡占化もますます顕著になっており、電子ジャーナルの出現が必ずしも雑誌価格高騰の抑制効果となって現れていない状況が見られる。
近年、北米のARL(Association of Research Libraries :北米研究図書館協会)が、大手商業出版社の価格高騰に対抗する手段として、SPARC(Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition)を立ち上げ、活動を開始し、対抗相手の大手商業出版社の雑誌価格の高騰を抑える効果も一部現れているほか、学協会への支援、アドボカシー(提唱活動)等さまざまな活動を展開している。わが国でも、昨年国立情報学研究所が国際学術情報流通基盤整備事業(評議会議長 :野依理化学研究所長(元名古屋大学教授))を立ち上げ、学協会と大学図書館の連携・協力のもとに、学術コミュニケーションの改善策のひとつとして、研究者の支持と協力を得て、国際発信力のある英文学会誌を電子ジャーナル化して育てていくことを目標に活動を開始したところである。
さらに、学術雑誌をめぐる動きとして、誰でもが自由にアクセスできる、”オープン・アクセス”の課題が国際的に注目する話題となっている。先の SPARC活動のなかでもプライオリティを明確にしており、執筆者である教員・研究者と学協会、出版者との間でも、熱い議論が交わされている。
このような学術雑誌を中心とした学術コミュニケーションが、電子ジャーナル化を契機にさまざまな問題を提起してきた。学術コミュニケーションをめぐる変革の動きは、着実に進展しており、我々大学関係者にとって見過ごすことのできない状況となっている。本シンポジウムでは、学術コミュニケーションをめぐる国際的な動向とわが国における現況を認識し、今後の学術研究の推進、学術情報の基盤整備に、共に関係者である、教員、図書館職員、学協会が共通の課題として議論し、問題解決にあたりたいと考える。 |