【概要】
日本におけるオープンサイエンス推進のあり方については,2015年3月に内閣府から報告書が公表された。それによると,国としての基本姿勢・基本方針は,公的研究資金による研究成果の利活用促進を拡大することとされており,ここで言う研究成果には研究の過程で得られた「デジタル化された研究データ」も含まれている。
研究データ・サイエンスデータのオープン化に当たっては,大学・公的研究機関,データを生み出した研究者の積極的な役割が期待されるところであるが,昨今の厳しい研究環境を背景として研究者の内発的動機づけに至っていないうえ,ある程度ワークフロー化した研究データマネジメントシステムが確立されていないのが現状である。こうした現状の指摘は,この半年ほどの間に「戦略的創造研究推進事業におけるデータマネジメント方針(JST)」,「G7茨城・つくば科学技術大臣会合『つくばコミュニケ』(内閣府)」,「オープンイノベーションに資するオープンサイエンスのあり方に関する提言(日本学術会議)」などに相次いで見られ,その解決は焦眉の急といった様相を呈している。
研究者及び科学コミュニティに対しては,研究データのオープン化を進めることにより新たな知見や価値が生み出せるというインセンティブに加え,オープン化の成果に見合った処遇を与えるといったインセンティブを高めることも重要であると考えられる。研究データマネジメントに関しては,データの長期保存・管理・公開において図書館・機関リポジトリ・データセンターが果たす基盤的な役割は大きく,こうした機関の構成員と研究者との協同をワークフローに組み込むことはこうした問題を解決する可能性を秘めている。
以上を背景として,本セミナーでは,自然科学分野で実際に行われている図書館と研究グループ連携の取り組みや機関リポジトリの現状などの話題提供を通して,日本における研究データ・サイエンスデータのオープン化を「図書館員・研究者の協同」という観点から今後どのように推進していくことができるかを考えてみたい。
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