研究背景・目的
コンピュータネットワークの普及によって、人々の行動が次々とクラウドに記録されるようになりました。この人間行動のビッグデータを利活用して、経済・社会現象を自然科学と同じように実証に基づいて解き明かそうというのが経済物理学とよばれる新しい学問です。私は経済物理学の立場から、ブームやバブルに潜む法則を解き明かしたいと考えています。そうなれば、市場のルール作りや経済政策の面でも役立てられるのではないかと思います。将来的には、時々刻々と流れるデータから、ブームの終焉やバブル崩壊のリスクを監視し、経済の熱気を科学的に制御できる社会が実現できるはずです。
研究内容と産業応用
- 不動産バブルの察知
リクルート社提供のデータ
場所:関東全域
期間:1986〜現在の28年間
物件数:72万物件(全取引の95%以上をカバー)
同一属性を持つ物件間の価格の格差に注目することにより各物件のバブル度を抽出。[Ohnishi, Mizuno, et al., IJMP, 2012]
- 値崩れの予測モデル、オンライン市場制御
- カカクコム社提供のデータ
店舗のログ:8億件/年
ユーザログ:3億件/年
店舗間の価格格差から、値崩れに打ち勝つブランド戦略を抽出。
- カカクコム社提供のデータ
- ニュースによる金融バブルの検出
- NYSE, S&P, Thomson Reuters社等提供のデータ
金融取引:250テラバイト
ニュース:30テラバイト
株価の銘柄間格差から投機マネーの集中によるバブルの検出が可能。
ニュースによる経済予測のカギは【新規性】【話題性】【関連性】などの数値化にある。
- NYSE, S&P, Thomson Reuters社等提供のデータ
- 経済ネットワークによるお金・物・情報の波及予測
- Burearu Van Dajk、S&P、帝国データバンク等提供のデータ
企業数:1億社
企業間関係:400万ペア
社会における物やお金の流れの計測と最適化。
経済ネットワークを介したグローバル金融危機の予測。
紛争地域で違法採掘された資源の様々な製品への混入。
- Burearu Van Dajk、S&P、帝国データバンク等提供のデータ
その他、ニュースやTwitterによる景気観測、スマートメーターによる経済活動の見える化など
研究者の発明
- 特許 2002-011492(単願):インフレーション分析処理装置、インフレーション分析処理方法、並びにコンピュータ・プログラム(出願人:ソニー株式会社)
連絡先
水野 貴之[情報社会相関研究系 准教授]
http://research.nii.ac.jp/~mizuno/
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