研究シーズ2014情報メディア科学

蛍光解析に基づくシーン理解 -映像メディアの新たな展開-

佐藤 いまりコンテンツ科学研究系 准教授

研究分野コンピュータビジョン/分光解析/質感解析

研究背景・目的

分光に基づく精度の高い測色及び表色の技術は、塗料、印刷など、物体の見えの正確な再現が求められる産業への要素技術として注目されています。本研究では、実在物体の持つ分光特性(分光反射率および蛍光特性)を効率的にモデル化し、シーン内の光の伝搬をRGB値ではなく分光レベルを通して忠実に再現する画像合成手法の開発に取り組んでいます。私たちの身の回りに目を向けてみると、白紙、塗料、染料、植物など、反射成分のみならず蛍光成分を含む物体が多数存在します。しかしながら、蛍光は光の吸収と発光といった、波長をまたがる複雑なメカニズムに基づいており、RGB値に基づく解析が困難なため、これまで提案されてきたコンピュータビジョンおよび画像処理技術の多くは、対象物体に蛍光成分が含まれず反射成分のみを含むと想定しており、蛍光成分を含む物体に対応することは難しい状況です。

研究内容

私たちの身の回りには蛍光成分を含む物体が多数存在しますが、物体の見えや色の推定に関わるコンピュータビジョン技術の多くは、対象となる物体表面が反射成分のみにより構成されることを仮定しています。すなわち、物体表面の色は、照明光の分光分布と物体表面の分光反射率(入射光の各波長に対する反射の割合を示す)の積として考慮されています。本研究では、実在物体の持つ蛍光特徴に着目し、対象物体の持つ反射成分及び蛍光特性のモデル化を実現し、実物体の持つ豊かな質感の再現を目指します。また、実物体の持つ蛍光特性に基づくインバースレンダリング技術(実在シーンの観測に基づき物体情報(材質•形状)や照明環境モデルを獲得する技術)の開発に取り組んでいます。具体的には、入射光と観察波長の関係に基づき実在物体の持つ蛍光成分を反射成分と分離して観察する技術、対象シーンの幾何形状やシーンの光源環境、シーンを観察するカメラの分光感度を推定する技術を開発しました。

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シーンの光源分布とカメラの分光感度を同時に推定

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異なる照明環境や異なるカメラを通して観察される見えを予測

産業応用の可能性

  • 蛍光に基づく画像解析
  • 蛍光に素材・状態解析
  • 実在物体の分光特性(反射および蛍光)のモデル化と画像生成

研究者の発明

  • 特願2013-248300(共願):画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
  • 特願2010-248157(共願):高時間分解能映像の生成方法及び装置
  • 特許第4982844号:投影画像補正システム及び投影画像補正プログラム
連絡先

佐藤 いまり[コンテンツ科学研究系 准教授]
http://research.nii.ac.jp/~imarik/

関連リンク

佐藤 いまり - コンテンツ科学研究系 - 研究者紹介

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