(1) 情報研究の意義
(2) 新たな研究機関の必要性
(1) 基本的考え方
(2) 基幹的研究分野
(3) 学際性・総合性を持った研究分野
(4) 学術情報基盤開発への寄与
(1) 基本的考え方
(2) 具体的方策
(3) 評価
(1) 基本的考え方
(2) 研究系
(3) 管理部(仮称)
(4) 開発・事業部(仮称)
(5) 附属施設
(6) 評価委員会(仮称)
(7) 参与会(仮称)
(8) 評議員会
(9) 運営協議員会
文部省は、日本学術会議勧告「計算機科学研究の推進について」(平成9年5月)及び学術審議会建議「情報学研究の推進方策について」(平成10年1月)を踏まえ、「情報分野における中核的な学術研究機関の在り方に関する調査協力者会議」を発足させた。平成10年3月、同会議は報告書を取りまとめ、その中で学術情報センターを母体とする改組・拡充によって、大学共同利用機関として情報研究の中核的研究機関を設立するという方針が示された。その後、文部大臣裁定「情報研究の中核的研究機関の準備調査室等組織要項」(平成10年4月)に基づき、情報研究の中核的研究機関の組織運営その他の準備調査に関する重要事項を審議する機関として、同年5月に「情報研究の中核的研究機関準備調査委員会」が設置された。
同委員会は、情報研究の中核的研究機関の基本的在り方について検討を行い、同年8月に中間報告として広く公開した。その後、この中間報告に対して関係機関等から寄せられた意見を踏まえて更に審議を重ね、ここに本報告を取りまとめたものである。
情報に関する研究は、21世紀の学術研究の最前線の一つと目されている。この情報研究は、あらゆる学問分野の発展の基礎となるとともに、学問分野間相互の働きかけを通じて新しい研究課題や研究手法を生み出すものであり、また、その応用を通じて、我が国内外の産業・経済、文化、国民生活等のあらゆる面に大きな影響を及ぼす。
1)学術研究推進上の意義
情報に関する研究を総合的に行うことにより、情報の統一的で体系的な取扱いに関する手法を生み出すことが期待される。また、情報に関する概念、手法及び技術は、すべての学問分野に活用でき、学際的・国際的な研究体制の下で情報研究を進めることにより、学問全般の発展に貢献することができる。
さらに、情報研究によって作り出される情報処理技術は、多くの学問分野において、研究を進める上で強力な手段を提供する。特に、ソフトウェアコンセプトの創出が重要とされており、それを推し進める開放的かつ機動的な研究体制が求められている。
しかし、我が国の情報分野の研究者層は先進諸国と比較して必ずしも厚いとは言えず、今後情報分野において世界の主導的立場に立つためには、ソフトウェア研究を中心とした研究活動を飛躍的に充実させるとともに、この分野の人材養成に努める必要がある。
一方、情報に関する学問は関連分野が非常に広く、それらの学問分野と連携することにより、新たな学問分野を創出することが期待される。また、社会を情報の交換、流通及び創造という観点からとらえる学問分野も形成されつつある。
総じて、多くの学問分野で直面している情報関連の基本的課題は、情報に関する研究分野から提供される知識を用いて解決できるものと期待される。本来、このような諸課題は現場から生まれるものであり、それらについての研究は、更に新たな領域への展開を示す契機となる。また、それらの研究の成果は、現場に還元して利用されるべきものである。
2)学術情報基盤整備推進上の意義
学術研究の推進上必要とされる学術情報基盤は、これまで学術情報センターが開発・整備に努めてきたように、ネットワーク、コンテンツ及びアプリケーションのすべての面において極めて高い先端性を備えたものであることが求められる。このことは、情報研究の成果を速やかに学術情報基盤の整備・充実に反映させることによってのみ実現できる。また、学術情報の利用者を含む諸方面からの様々な要請に基づく学術情報基盤の整備が情報研究に新たな動機を提供することが期待されるばかりでなく、情報研究は学術情報基盤の整備を通じて学術研究の推進に極めて重要な役割を果たすものである。
3)経済・社会・文化上の意義
情報研究の成果は、学術研究面のほか、社会生活、経済活動等、ほとんどすべての領域に活用することができる。また、計算機の高速化と通信の広域化により、様々な領域において惹起される複雑化した諸問題の解決を可能にする。このように、情報に関する学問は、産業・経済の拡大や多様性を生み出し、国力の基盤を担う要因の一つとなるとともに、国民生活や文化の向上に大きく貢献する。
情報処理技術の高度化と情報ネットワークの広域化、電子的表現の多様化・マルチメディア化によって、情報は、時間や空間の制約を超越して流通することが可能になりつつある。このような情報化の進展に伴って、産業・経済関連情報のみならず文化関連情報の流通や需要が促進されるとともに、創造的な文化・芸術活動への展開が期待されている。
情報関連の産業は、情報処理技術の進歩が新しい産業を生み出し、新しい産業が既存の産業を振興するという連鎖の中で発展してきた。情報の分野において、新技術の萌芽を見つけ出し実用化につなげる学術研究の役割は極めて重要であり、その推進は、情報関連産業の振興と新産業の創出並びにそれに伴う雇用の促進にも資する。
一方、情報に関しては、プライバシーの保護、セキュリティの確保、情報格差の解消等、社会全体として取り組むべき課題を数多く指摘することができる。これらの課題を解決するためには、情報研究を総合的に推進することが不可欠である。
我が国の大学において、「情報」の名を冠した学部・研究科等が相当程度整備されつつあるが、今後は、基礎から応用まで幅広い視野で情報研究を進めるために中核的研究機関を設け、研究組織を強化するとともに研究者間の交流及び連携を一層高めることが期待されている。
情報研究については、特に学際的な性格が強く、研究分野を越えて研究者が交流し、研究情報を交換していく場が提供されることが望まれる。このような場で、若手研究者の先進的な創意工夫を刺激し、意欲的な研究へと発展させていく仕組みが必要である。
また、若手研究者を中心とする研究者の確保が情報研究の発展を促すとともに、研究の進展が新たな研究者を育てるという良き循環を作り上げ、研究レベルの飛躍的向上と優秀な若手人材の育成に寄与することが望まれる。さらに、21世紀の高度情報化社会に向けて、優れた情報システムを構築することができる技術者をはじめとして、情報に関する卓越した知識や識見を有する人材を養成することが急務である。
このような学問的及び社会的な要請や期待にこたえるために、情報に関する学術研究の核となる組織を形成し、他の研究機関との連携の下で、我が国全体の情報研究の飛躍的推進を図ることが喫緊の課題となっている。この課題に対処するためには、現況にかんがみ、学術情報センターを母体として、速やかに中核的な学術研究機関を設立することが最も適切である。
新たな研究機関においては、学術情報センターが学術情報の収集、整理、提供等に係る事業並びにそれに関する研究開発及び人材養成において果たしてきた役割と成果を十分に認識し、それらの機能を継承することが必要である。その上で、先端的な技術を駆使してそれらを一層充実するとともに、情報分野の人材養成に努力していくこと、産業界や既存の大学組織では取り扱うことが困難な社会的に重要度の高い課題を追究すること及び学術情報基盤の一層の整備に努めることが求められる。
本研究機関の名称は、「国立情報学研究所(National Institute of Informatics)」(仮称)とする。
本研究機関は、情報に関する総合的な研究及び開発並びに学術情報基盤の開発・整備及び学術情報の活用に係る業務を行うことを目的とする。また、情報分野の専門家の育成にも貢献する。
本研究機関は、学術情報センターを母体として改組・拡充し、大学共同利用機関として設置する。
本研究機関の所在地は、学術情報センターの既存施設の有効活用に配慮して決定する。
情報に関する学術研究すなわち情報学の推進を支える研究分野の構成としては、現時点での学問的構成分野を考慮し、基礎から応用に至る多様な領域を網羅する「基幹的研究分野」、及び関連分野の連携により新たな学問分野を創出する学際性や創成した新たな概念を実践に適用する総合性を備えた「学際性・総合性を持った研究分野」という二つの方向性が重要である。
本研究機関において対象とすべき情報学の研究分野として、大きく次の7領域を挙げることができる。
1)情報学とソフトウェアの基礎についての研究領域
情報そのものに関する研究及びソフトウェアの基礎理論に関する研究が含まれる領域である。
- 情報学の体系化を目指す分野(基礎情報学、記号科学、図書館情報学等)
- 情報及び情報処理に数学的基盤を与える分野(情報数理、算法設計、算法解析等)
- 数値的・計算的概念のモデル化及びその実践法に関する分野(プログラミング言語、数値計算、計算モデル等)
等の研究分野から構成される。
2)アーキテクチャについての研究領域
情報研究を支える基盤部分を成す、計算機システム及び計算機ネットワーク技術についての研究が含まれる領域である。
- 計算機システム及び計算機ネットワークの構造並びに構成法に関する研究分野(計算機アーキテクチャ、ネットワークアーキテクチャ等)
- 高性能、 高機能化に関する研究分野(並列分散システム、高品質ネットワーク等)
- アーキテクチャの実現を支援する研究分野(設計支援システム、ネットワーク制御方式等)
等の研究分野から構成される。
3)ソフトウェアシステム構築についての研究領域
情報研究におけるソフトウェア的な方法論について検討し、重要な要素技術に対応する研究分野から構成される領域である。
- 情報システム全般の設計論や開発手法に関して基盤的な研究を推進する分野(ソフトウェア工学、システムソフトウェア等)
- 情報の蓄積と共有、利用者のニーズに応じた情報提供等に重点を置いた情報システムに関する研究分野(データベースシステム、情報検索等)
- 情報システムで扱う情報の多様性に関して、表現形式、表示メディア、処理メディア等の観点から研究する分野(画像情報処理、音声情報処理、テキスト情報処理、コンピュータグラフィクス、統合メディア処理システム等)
- 主にネットワークを通して情報システムを利用する際に生じる諸問題の解決を目指す分野(分散情報システム、ネットワークセキュリティ等)
等の研究分野から構成される。
4)知能と情報の関わりについての研究領域
人間や計算機による知的な情報処理やその相互の関係について研究する領域である。
- 人間の情報処理メカニズムの解明を目指す研究分野(認知情報処理等)
- 計算機による知的情報処理技術の実現を目指す研究分野(知識処理、機械学習、計算知能等)
- 人間の作業を支援・代行する知的システムの実現を目指す研究分野(ロボティックス等)
- 人間の知的活動の最も基本的な表現媒体である言語の処理技術の確立を目指す研究分野(自然言語処理等)
- 人間と計算機のあるべき関わり方についての理論を確立し実践する研究分野(人間機械協調等)
等の研究分野から構成される。
5)人間・社会と情報の関わりについての研究領域
社会環境における情報の問題について研究する領域である。
- 社会と情報の関係そのものを研究対象とする基礎研究分野(社会情報学等)
- 社会情報研究に不可欠な数理的手法を研究する分野(計量情報学等)
- 社会的に要請される情報流通の在り方を管理及び利用の側面から検討する分野(情報管理学、情報利用学等)
- 具体的かつ現実的な社会的問題を扱う分野(情報制度論等)
等の研究分野から構成される。
6)学術研究と情報の関わりについての研究領域
学術研究と学術情報との関係を考究することにより、学術研究を効果的に実施するためのシステムについて研究する領域である。
- 学術情報の生成及び利用について研究する分野(学術情報流通システム論等)
- 人文社会系、理工系及び生物系の学術研究の動向を研究する分野(人文社会・理工・生物系研究動向研究等)
- 学術研究の評価に関する研究を行う分野(研究評価研究、比較科学政策学等)
等の研究分野から構成される。
7)情報学の他の学問分野への応用を実践する研究領域
他の学問分野において情報学の先端的な成果を実践しつつ、特定の問題や手法に応じて、既存の学問体系を越える新しい研究分野を構築する領域である。
このような応用によって、現在新たな研究分野が確立しつつある例として、生命情報学、医療情報学、教育情報学、法情報学、経済情報学、環境情報学等が挙げられる。また、将来的には更に広範囲の分野が対象となることが想定される。
他の学問分野への開放性を保ち、他の分野と情報学の基礎的な研究領域との相互作用を促進するために、研究体制及び研究組織の面において弾力的な運用が望まれる。
情報研究の推進に際しては、上記に掲げた基幹的な研究とともに、これらの分野を横断する学際性・総合性を持った研究が重要な役割を果たす。
学際性の高い研究分野においては、情報の扱いに関する普遍的な理論や技術を、理工系から人文社会系にわたる広範な分野を横断して体系化し、新しい学問を創成することが期待される。例えば、情報倫理、情報環境、多言語等の言語情報学等の研究課題が挙げられる。
総合性の高い研究分野においては、複数の基幹的分野の相互作用によって生まれた新しい概念を直ちに応用や開発に結びつけソフトウェア等の形で広く実践することが期待される。例えば、情報セキュリティ、電子図書館システム等の研究課題が挙げられる。
本研究機関では、学問の発展段階や社会的要請にかんがみて重要度の高い横断的な研究課題を適宜取り上げ、基幹的研究分野との緊密な連携の下に推進することが求められる。この場合に、個々の研究課題の特性を十分に考慮した上で、共同研究プロジェクトの実施により対応するなど、適切な体制をもって取り組むことが重要である。
上記に掲げた様々な研究分野における独創的な研究の成果を、学術情報の収集、整理、提供及び活用の場である学術情報基盤開発において実践することにより、学術研究一般の発展に寄与することが重要である。さらに、先端的な学術情報基盤開発のために必要な研究開発課題や解決すべき諸課題を積極的に取り上げることにより、情報研究が一層発展することが期待される。
本研究機関は、情報研究の飛躍的発展に資することを目指して研究を推進する。研究体制を整備するに当たっての基本的方針として、
等に留意する。
また、情報分野の研究開発においては、ソフトウェアやシステムのモデルの構築を通じて、優れたソフトウェアのコンセプトを創出することや洗練されたソフトウェアを開発することが期待されていることを踏まえて、基礎研究の成果であるプロトタイプの開発及びそれに続く実用システム開発を奨励する体制の整備に努める。それとともに、幅広い人材の活用や大学院学生を含む若手研究者の研究活動への積極的参加を奨励する。
さらに、これらの研究開発の成果や他の機関が所有する有用な技術、研究資源等の適正な活用を図るために、知的所有権の維持・管理の方策についても具体的に検討する。
情報研究の飛躍的発展を目的として、基幹的研究分野の各研究領域の中心的研究を推進するとともに、中核的研究機関としての役割を果たすための具体的方策として、次の点を踏まえた研究体制を構築することが望まれる。
1)プロジェクト型共同研究の推進
プロジェクト型共同研究を推進することにより、本研究機関内における研究領域の横断的連携を図るとともに、大学等における基礎研究の成果を実用システムに適用できるように研究を展開する。また、他省庁の国立試験研究機関や民間の研究所等との補完関係により学問的厚みを増し、さらに、自然科学系のみならず人文社会系の研究機関等との積極的な連携・協力により技術や社会の変化に機動的に対応することを目指す。研究の学際的展開、実用化や事業化に向けた開発、産業界との連携・協力等を考慮し、研究テーマの公募等による開かれたプロジェクト研究を行うことが望まれる。
なお、プロジェクト型共同研究の実施に当たっては、流動性及び機動性を確保する観点から、官民を問わず他機関の研究者の短期受入れを促進することが有効である。
2)国際的研究活動の推進
情報がそれ自体で国際的な性質を有することにかんがみ、国際的研究活動に貢献するとともに、本研究機関の国際化を推進することが重要である。そのため、国際的に開かれた運営を心がけ、諸外国における情報分野の学識経験者や著名研究者に対して適宜参画を求めるとともに、外国人研究者の任用、外国人客員研究者の招へいや海外の大学院学生の受入れ、若手研究者の海外派遣等の人的交流を促進することが望まれる。また、海外の研究機関との共同研究プロジェクトを実施し、ワークショップ方式による国際共同研究等を積極的に推進するとともに、国際的標準化活動に貢献することが求められる。
3)開放性、機動性に配慮した任用
研究者の任用においては、国際性、開放性、機動性について特段の配慮を払う。常勤研究者の任用に当たっては、公募制や任期制の導入を検討するとともに、研究・教育公務員の兼業制度や寄附部門の活用を含む、既存の制度の弾力的運用を図る。客員部門や流動部門を活用することにより、大学や民間を含む関係研究機関等の研究者が本研究機関に所属して研究に参加できる体制が望まれる。また、種々の制度を活用して大学院博士課程修了者に積極的に研究の場を提供することも検討する。
4)大学院との連携
大学院との連携や大学院組織の設置等により、大学院学生が本研究機関において研究に参加できる体制を整備することが望まれる。また、本研究機関が中核となって大学院との連携による共同研究ネットワークを構成することや、それを通じて大学院教育に協力することも有効である。
これらの連携に当たっては、開放性の維持に努め、社会人研究者の知識更新にも役立つよう配慮する。また、具体的な連携の形態に関しては、他の大学共同利用機関における実績も考慮に入れて検討する。
5)分散型研究体制
多数の研究機関が参加する共同研究においては、ネットワークの活用などによる分散型の研究の仕組みを導入することにより、効率的・効果的な研究の遂行が期待できる。
また、研究系という形では対応が困難な研究内容又は地域性の特質や情報と地域文化とのつながりを生かした研究を実施するための組織として「研究センター」を設置することも積極的に検討する。
6)開発研究体制情報を扱う学問分野においては、基礎研究から社会への適用まで展開することが重要であり、開発研究はその最終段階を担うものとして重要な意味を持つ。そのため、基礎から応用までの研究サイクルを機動的に運用する開発研究体制を組織することが必要であり、研究系や研究部門の構成に当たって、それを考慮することが求められる。また、従来の学術研究の評価手法では評価できなかった、開発成果、標準化、社会への効果等も考慮した評価基準を整備する。
本研究機関における研究開発の評価については、学術審議会建議「学術研究における評価の在り方について」(平成9年12月)に沿って、本研究機関を利用する研究者を含む内外の学識経験者等から成る評価組織を設け、適切な時期に評価を行い、その結果を公表する。研究開発における具体的な評価基準は、通常の学術研究の評価方式のみならず、研究開発内容によっては、特許やソフトウェアの開発成果等の新たな指標を積極的に導入する。
また、本研究機関が行う開発・事業についても、評価の結果を参考として、その内容、規模等を見直す。
新たな研究機関の母体となる学術情報センターは、学術情報ネットワークの構築・運用、学術情報データベースの形成・提供や大学図書館職員等に対する教育・研修の事業を通じて、我が国の学術情報システムを支える中心機関として機能している。この点を踏まえて、本研究機関においては、学術情報基盤整備に関するこれらの事業を情報に関する先端的な研究開発と一体のものとして捉え、大学図書館や学会等の関連機関と連携してその一層の充実と国際的展開に努めることにより、我が国の学術研究体制の強化に貢献することが不可欠である。
また、情報分野における研究開発の推進に当たっては、国際性を念頭に置いた実用システムや社会との相互作用によってこそ、その飛躍的な発展が期待できる。特に、学術情報基盤の整備に係るシステム開発やその運用に関連する業務、すなわち開発・事業は、単に研究者に学術情報を提供するだけではなく、情報に関する研究成果の実践の場であるとともに研究開発の大きな動機付けを与えるものである。このような認識に基づき、本研究機関においては、開発研究組織を通して研究者が学術情報基盤の整備に積極的に関わることができるようにする。
情報分野における極めて学術性の高い研究を広範かつ長期的に発展・維持させ、基礎から応用にわたり、理論から実用化に至る研究を一体として行うとともに、学際的・総合的・国際的研究を推進するために、本研究機関には、組織の中心となる研究系をはじめとする次の組織を置くことが適当である。
各研究系及びそれを構成する研究部門は、前述の「6 研究分野」に示した研究分野を踏まえて、緊急性の高い分野から優先的に措置する。また、機動的な研究体制を実現するために、共同研究や実証的開発等、研究の進め方に即した研究系及び人員の構成とし、客員部門や流動部門の活用に十分配慮する。
管理部においては、本研究機関の庶務、会計、研究協力、国際交流等に関する事務を処理する。特に、本研究機関においてはプロジェクト型共同研究や国際的研究活動を積極的に推進することが期待されるため、充実した研究支援体制を整備する必要がある。
開発・事業部においては、前述の「8 学術情報基盤に関する開発・事業」に述べた考え方に基づき活動を展開する。すなわち、データベース、ネットワーク等の学術情報基盤の構築・運用、研究成果等に関わる知的所有権の取得及び維持・管理、大学図書館及び学会等との連携・協力等、システム開発及びその運用に関連する業務を研究組織との連携の下に行う。したがって、同部には、相当数の研究支援者を必要とする。
具体的な課題の解決その他特定の目的を持って各研究系を支援するための施設を本研究機関に附属して設置する。
例えば、実証研究センター(仮称)を設け、学際的・総合的・国際的研究を推進するために、国立試験研究機関、民間の研究機関等との連携によりプロジェクト型研究を実施する。その例として、超高速ネットワークの先端的研究のためのネットワークテストベッドセンターが考えられる。
また、情報研究資源・資料センター(仮称)を設け、研究開発を効果的に推進するために、ハードウェア・ソフトウェア資源や資料等の研究基盤の運用管理を行うとともに、情報研究に必要な情報資源を維持・管理し、全国の情報学研究者の共同利用に供することが考えられる。
さらに、教育研修センター(仮称)を設け、開発・事業部の実施する各種業務を効率的・効果的に推進するために、その利用者を対象として教育・研修を行うことも必要である。
評価委員会は、本研究機関における研究・開発及び事業を評価する。委員は、内外の学識経験者等の中から所長が委嘱する。
参与会は、広く情報学及び学術情報基盤に関する諸問題について所長の諮問に応じる。
評議員会は、本研究機関の事業計画その他の管理運営に関する重要事項について、所長に助言する。
大学共同利用機関組織運営規則(昭和52年文部省令第12号)に基づき設置する。
運営協議員会は、本研究機関の共同研究計画に関する事項その他の研究機関運営に関する重要事項で所長が必要と認めるものについて、所長の諮問に応じる。
大学共同利用機関組織運営規則(昭和52年文部省令第12号)に基づき設置する。
本委員会は、我が国に情報研究の中核的研究機関を設置することが緊急の課題であるという認識の下に集中的審議を行い、3回の委員会、それぞれ2回の第1部会及び第2部会を開催し、また2回の起草委員会を経て、中間的取りまとめを行った。その後、その内容を中間報告として公表し、諸方面からの意見を求め、3回の委員会及び3回の起草委員会において検討した結果、最終的に本報告として取りまとめた。本委員会に対し種々の貴重な意見を寄せられた関係諸機関及び関係各位に対して謝意を表したい。
情報研究の中核的研究機関の設立に当たって本報告に盛られた趣旨が適切に反映されることを期待するものである。
青木 利晴 | 日本電信電話株式会社代表取締役副社長 | |
稲垣 康善 | 名古屋大学大学院工学研究科長・工学部長 | |
井上 如 | 学術情報センター副所長 | |
猪瀬 博 | 学術情報センター所長 | |
奥島 孝康 | 早稲田大学長 | |
熊谷 信昭 | 大阪大学名誉教授、科学技術会議議員 | |
○ | 末松 安晴 | 高知工科大学長 |
菅原 寛孝 | 高エネルギー加速器研究機構長 | |
高木 幹雄 | 東京理科大学基礎工学部教授 | |
武田 康嗣 | 株式会社日立製作所専務取締役 | |
天滿美智子 | 津田塾大学名誉教授 | |
土居 範久 | 慶応義塾大学理工学部教授 | |
◎ | 森 亘 | 東京大学名誉教授 |
吉川 弘之 | 放送大学長、日本学術会議会長 | |
六本 佳平 | 東京大学附属図書館長 | |
◎:委員長、○:副委員長 |
(委 員) | ||
稲垣 康善 | 名古屋大学大学院工学研究科長・工学部長 | |
猪瀬 博 | 学術情報センター所長 | |
○ | 末松 安晴 | 高知工科大学長 |
六本 佳平 | 東京大学附属図書館長 | |
(専門委員) | ||
伊藤 貴康 | 東北大学大学院情報科学研究科教授 | |
北川源四郎 | 統計数理研究所企画調整主幹 | |
五條堀 孝 | 国立遺伝学研究所教授 | |
坂内 正夫 | 東京大学生産技術研究所長 | |
根岸 正光 | 学術情報センター教授 | |
松村多美子 | 椙山女学園大学生活科学部教授 | |
安田 靖彦 | 早稲田大学理工学部教授 | |
○:主査 |
(委 員) | ||
青木 利晴 | 日本電信電話株式会社代表取締役副社長 | |
熊谷 信昭 | 大阪大学名誉教授、科学技術会議議員 | |
○ | 高木 幹雄 | 東京理科大学基礎工学部教授 |
武田 康嗣 | 株式会社日立製作所専務取締役 | |
土居 範久 | 慶応義塾大学理工学部教授 | |
(専門委員) | ||
淺野正一郎 | 学術情報センター教授 | |
有川 節夫 | 九州大学大学院システム情報科学研究科教授 | |
安西祐一郎 | 慶応義塾大学理工学部長 | |
池田 克夫 | 京都大学大学院情報学研究科長 | |
伊藤 貴康 | 東北大学大学院情報科学研究科教授 | |
加藤 尚武 | 京都大学大学院文学研究科教授 | |
米澤 明憲 | 東京大学大学院理学系研究科教授 | |
○:主査 |
平成10年
5月27日 準備調査委員会(第1回)
- 情報研究の中核的研究機関に関する検討の経緯等について
- 準備調査委員会の任務等について
- 専門部会の設置について
- 情報研究の中核的研究機関の在り方等について
6月 4日 第2部会(第1回)
- 準備調査委員会及び部会の任務等について
- 情報研究の中核的研究機関における研究分野について
6月16日 第2部会(第2回)
- 情報研究の中核的研究機関における研究分野について
- 情報研究の中核的研究機関における研究の進め方について
- 情報研究の中核的研究機関と関係機関との連携・協力について
6月16日 第1部会(第1回)
- 準備調査委員会及び部会の任務等について
- 情報研究の中核的研究機関の組織・機構等について
6月24日 第1部会(第2回)
- 情報研究の中核的研究機関の組織・機構等について
7月 2日 準備調査委員会(第2回)
- 専門部会からの報告について
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会中間報告について
7月13日 起草委員会
7月27日 準備調査委員会(第3回)
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会中間報告について
8月 4日 起草委員会
12月10日 準備調査委員会(第4回)
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会中間報告に関する意見について
- 情報関連研究機関の調査の結果について
平成11年
1月 8日 起草委員会
2月 4日 起草委員会
2月15日 準備調査委員会(第5回)
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会中間報告に関する意見について
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会最終報告について
2月22日 起草委員会
3月15日 準備調査委員会(第6回)
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会中間報告に関する意見について
- 情報研究の中核的研究機関準備調査委員会最終報告について