space     
ヘッダー
コンテンツ特集記事トピックス活動報告
spacer spacermenuspacermenuspacermenu spacermenuspacermenuspacerトピック3spacer spacer
space
image

德安 由希(とくやす ゆき/九州工業大学附属図書館)

space

広島大学

九州工業大学学術機関リポジトリ(Kyutacar:Kyushu Institute of Technology Academic Repository)は2008年3月3日に709件の論文を登録して正式公開を行った。それから二年が経ち、現在では構築当初の約4倍以上となる3411件の論文を公開している。(2010年3月31日現在)

本学でリポジトリを運用するにあたって目標としてきたことは、とにかく「継続的なものにすること」である。大学において研究成果は日々増え続け、尽きることはない。そうした研究成果を発信する基地局としてリポジトリが位置するためには、それらを一件ずつ着実に公開することが最も重要であると考えている。

そのために構築してから現在までの間、ひたすら地道に活動してきた。学術雑誌論文は教員へ個別に登録の依頼を行うことで、登録数を確実に伸ばすことに努めた。博士学位論文及び研究調査報告書は学内の関係部署に協力を仰ぎ、リポジトリの周知を図った。紀要論文は電子的公開を投稿規程に追加し、登録の制度化を進めた。こうして小さな一歩を積み重ねることで、“継続”するための土台を築いてきたのである。

その結果、学術雑誌論文は約1000件もの論文を公開することができ、博士学位論文及び紀要論文はそれぞれ約280件、約1600件の遡及登録を実現した。登録件数が増加することで論文のダウンロード件数も徐々に増加しており、日々の小さな一歩が少しずつ実を結んでいることを実感している。

また、このように多くの論文を公開するにあたって作業を効率化させるため、システムの拡張も行った。その一つに業績データベースとリポジトリシステムを連携させたことが挙げられる。業績データベースにリポジトリへの登録許諾の処理を組み込むことで教員の省力化を図り、かつ業績データベースのデータをリポジトリの入力に流用できるようにすることで登録作業の効率化も実現した。

この機能は2008年8月より稼動させているが、現在までに約200件の論文の許諾を得ることができた。ただし、これらの論文が全て登録できるわけではなく、その内公開できたものは約60件程度である。公開できない理由としては、著作権の帰属先である出版社、学協会から許諾を得ることができないということが多いが、著作権の帰属先から許諾を得ることができても肝心の論文本体を入手することができず、作業が滞っているケースもある。このことから、著者である研究者から許諾を得るだけでは容易に公開することができない権利の壁があることはもちろん、作業方法にも課題が残っていることを感じている。今後は今まで蓄積した著作権許諾状況の情報や作業におけるノウハウを用いながら、許諾から公開までの道のりを整備していきたいと考えている。

 

さて、ここで図書館のリポジトリ担当者に、この二年間で心境の変化があったことにも触れておきたい。リポジトリを構築した当初は「多くの論文を早く公開しなければ」「他大学のようにシステムの拡張を進めなければ」と気ばかり焦っていたが、時が過ぎ作業手順や運用体制が固まるにつれて「そんなに焦る必要はないのかもしれない。」と考えるようになった。早く大量の論文を公開し、システムを次から次へと拡張させることが、必ずしもリポジトリを「継続的なものにすること」にはならないと気づいたからである。全てのことを同時にしようとすると運用側の安定性が崩れてしまい、かえってリポジトリを維持することが困難になってくる。「今できることを確実にしていけばいい。今はできないことでもいつかできるかもしれない。」と長い目で見ることが運用側の“安定”とリポジトリの“継続”を両立させることになるのではないだろうか。

本学では今でも「リポジトリって何?」という声を耳にすることが度々あり、学内認知さえも十分にできていない状況にある。しかし、“継続”して行うということは“これからもずっと続いていく”ということであるから、焦らず一歩ずつ踏み出だそうと思う。まだまだ課題は山積みであり、どこから手をつけていいのか分からないことも多い。しかし、試行錯誤しながらも“継続”していくことが図書館の使命であり、大学の責任であると考えている。

広島大学共同リポジトリ