研究シーズ2020知能システム科学

裁判官や弁護士の推論を
シミュレーションするシステム

佐藤 健情報学プリンシプル研究系 教授

研究分野人工知能/法的推論/論理プログラミング

法的問題の解決を情報学によりサポートすることをめざしています。現在は、裁判官や弁護士が行っている法的推論の一部である「要件事実論」という理論をコンピュータ上に実装しています。これまでに民法条文および最高裁判例から抽出した2500ルールを実装しました。

研究背景・目的

社会にインターネットが普及したことにより、電子商取引やSNSでのプライバシー問題など、今までの社会制度とは異なる社会システムが導入され、新たな法的問題が生じています。本研究の究極の目的は、そのような急激な社会変化に対する法的問題の解決を情報学によりサポートすることです。

研究内容

その第一歩として、現在、裁判官が行っている法的推論の一部である「要件事実論」と呼ばれる理論のコンピュータ上の実装を行っています。「要件事実論」とは、民事裁判において、判決を決定する主要事実の成立・不成立が証拠から導かれないときに、その主要事実の成立・不成立のデフォルト値で代用する理論のことです。この理論は、人工知能における「非単調推論」と呼ばれる不完全情報下での合理的推論の定式化と密接に関連しており、その定式化を用いて、「要件事実論」を実装しています(図)。現在、民法条文および最高裁判例からルールを抽出し、2500ルールを実装しています。

18-satoh-image1.jpg

図)法的推論提示システムによる推論過程の可視化

産業応用の可能性

「要件事実論」は現在、法科大学院、司法研修所で教えられている理論です。したがって、民事関係の裁判官や弁護士が用いている法的理論といえます。応用としては、「要件事実論」の教育のためのツールおよび実務における訴状の主要事実の欠缺のチェック、また、「要件事実論」の法的推論提示システムを用いて当事者間の準備書面、答弁書の提出の効率化を図ることができます。

研究者の発明

❖特許第6112542号:法的推論提示方法、法的推論提示システムおよびプログラム

関連リンク

佐藤 健 - 情報学プリンシプル研究系 - 研究者紹介

Recommend

さらにみる