研究シーズ2019情報基礎科学

アルゴリズムが世界を変える─未来のIT産業を支える若き人材を育成

河原林 健一情報学プリンシプル研究系教授/ビッグデータ数理国際研究センター長

研究分野グラフアルゴリズム/グラフ理論/ネットワーク解析

研究背景・目的

現代社会には極めて多様で複雑かつ巨大なネットワークが存在し、私たちの生活において重要な役割を果たしています。中でもウェブ構造やFacebook、Twitterなど、私たちの身近にある複雑なネットワークは日々成長を続けており、ネットワークやビッグデータの解析における理論的研究は、近年ますます重要性を増しています。ITビジネスの発展の歴史でも、Microsoft、IBM、Google、Yahoo!、AT&T、Facebook、Amazonなどの巨大IT企業で、著名な理論研究者が斬新なソフト開発を行い、さまざまな問題解決に貢献してきました。私は、上記のようなネットワークに対する理論解析、およびそれを生かした高速アルゴリズムの開発を目的として研究を行っています。

研究内容

 巨大ネットワーク、ビックデータ解析の課題はアルゴリズム、機械学習、人工知能、データベース、データマイニング、自然言語等のコンピュータサイエンスの諸分野の問題ですが、多くは問題解決のためのデータ量が巨大であるため、解決が容易でないものばかりです。このような問題を解決するためには、アルゴリズムの革新が必要不可欠であり、計算モデルと数理の探求に基盤をおく革新的アルゴリズム設計技法の構築や体系化が早急に求められています。その解決には理論計算機科学、最適化、離散数学、確率論、統計物理学等を含む深く広い数学的理論を基礎とした研究が必要になります。そこで私は、数理的なアプローチを中心に高速アルゴリズムの開発を目指しています(図)。

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図 巨大なネットワークを解析する高速アルゴリズムの開発を目指す

産業応用の可能性

 ページランク、圧縮センシング、差分プライバシーなどの技術は、数学的な理論に基づく基礎研究の応用という形で、IT業界の巨大企業に採用され、現在でもIT業界の主要技術になっています。また、数学的理論に基づくアルゴリズムは、人類の文明の進歩を加速度的に後押ししてきました。特に現在の情報検索、ゲノム情報処理などのアルゴリズム革新は国家規模のビジネス創成につながっています。さらに、このようなイノベーションを推進するためには、巨大 IT 企業のように、数学理論を熟知した人材が社会問題解決に挑む必要があると考え、私は、JSTの「ERATO河原林巨大グラフプロジェクト」などを通じて、この人材育成にも取り組んできました。

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