研究シーズ2016情報基礎科学

量子効果から量子コヒーレンスを用いた技術へ

量子情報技術

根本 香絵情報学プリンシプル研究系 教授

研究分野量子情報・計算/理論物理学/量子光学

研究背景・目的

20世紀は量子力学の時代とも言われるように、トランジスターやレーザーなど、20世紀を特徴づける技術革新は、量子物理学の発展の中から生まれました。ICT技術は、現在の経済、社会の基盤となる技術ですが、21世紀に入り、いろいろなところで限界が見え始めています。例えば、情報処理に用いる電力は増加の一途をたどっており、消費電力とともに機器からの発熱が大きな課題となっています。または通信でも、トラフィックの増加によってファイバーが溶けるほど過度な負担がかかっています。一方で、ネット上の情報と私たちの生活がますます一体化することで、セキュリティやプライバシーの確保も喫緊の課題となってきています。

このような21世紀の様々な課題に対し、技術の原理からその解決へ挑戦するのが量子情報技術です。「量子情報」という言葉から量子コンピュータを想像しがちですが、計測、センサー、通信、セキュリティ、情報処理など、ICTのすべての分野で、これまでの限界を破る新しい技術だと言えるでしょう。

研究内容

量子情報技術の中でも、NII量子情報国際研究センターでは量子計測、量子通信、量子コンピュータの研究に力を入れています。量子計測は、量子センサーなど情報を集める基礎、通信はその情報を量子的に結ぶことを可能にし、そこに情報処理能力をもつことで、さまざまな解析が可能になります。つまり、量子情報技術の中核にあるのが、この3つの技術です。

量子情報デバイスの実現は、量子物理学を中心として、マテリアル、微細加工など様々な技術の特徴を理解し、これらをデバイスへとデザインしていきます。現在は特に超伝導素子やダイヤモンドNVセンターで、国内外の実験グループとの共同研究で実現を目指しています。

我々が目指す量子情報デバイスは、システムの構築の基礎となる、システムのためのスケーラブルな量子情報素子の開発です。高い実現性とスケーラビリティ、拡張性を追求するため、光、超伝導素子やシリコンなど異なる材料や方法を用いたり、それらの多様なハイブリッド系をデザインして、様々な角度から新しい量子情報システムの実現化方法を研究しています。

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図)量子情報システムの基本素子の概念図量子通信や量子情報処理を行うための基本素子のあり方を概念的に示したもので、基本素子は、光共振器と単一ダイヤモンドNVセンター(中央のドット)からなる。
光共振器につながった導波路(図左下)を通して光子を送ることで、光子とNVセンター中の電子との間に量子的な相関を生成する。

産業応用の可能性

  • 量子センサー(バイオセンサーや医療センサーなど)
  • 低エネルギー量子素子、微弱光通信など
  • 量子情報処理(量子コンピュータ素子、量子コンピュータシステム)
  • 量子通信素子(安全性の高い量子鍵配送を用いたセキュリティ技術)

研究者の発明

  • 特許第5414007号(共願):量子リピータ、及び、拡張されたエンタングルメントを生成するためのシステム及び方法
  • 特許第5414006号(共願):エンタングルメントを成功裏に生成する速度を高めるための方法及び装置、並びに、該方法及び装置を使用する量子リピータ
連絡先

根本 香絵[情報学プリンシプル研究系 教授]
nemoto[at]nii.ac.jp ※[at]を@に変換してください

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