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大阪府立天王寺高等学校 理数科2年生 他

「もしも天王寺高校の生徒たちが物理学の「量子力学」を理解したら」

平成22年12月10日(金)

授業時間
15:50-16:50
60分×1コマ

出張授業担当者:

  • 中田 芳史(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 村尾研究室博士1年)
  • 玉手 修平(京都大学大学院工学研究科電子工学専攻 北野研究室博士1年)
  • 杉山 太香典(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 村尾研究室博士1年)

授業計画案

今回の生徒の中には文理を決めていない生徒もいるという情報があったため、数式や専門用語、「理系チックな言葉」をできるだけ用いない授業計画を立てた。また、この試みにより、理系の学生にも「日常生活の延長上」に科学が存在しているということを感じてもらえるだろうと予想した。具体的な授業計画は以下のとおりである。

【1】チーム対抗、量子力学の不思議クイズ

アイスブレーキング。
目的は以下の二点

  • 1. 細かいことを抜きにして「何か楽しい授業が始まるようだ」と感じてもらう
  • 2. 日本の学生は初めに「発声練習」をしないと、授業中にも質問しない。
    チームでガヤガヤ話しながらクイズを行うことで、「受け身じゃない授業だ」ということを感じてもらう。
【2】波動と粒子の二重性

量子力学の不思議を感じてもらうために、光を題材に「波動と粒子の二重性」を説明する。

  • 【2-1】イントロダクション
    今日の授業の大まかな流れを説明する。「波」、「粒子」や「確率」などの本日のキーワードを連呼することで、今後のディスカッションの「暗黙のヒント」とする。そのような「ヒント」をあらかじめ与えておくと、ディスカッションのきっかけとなる。
  • 【2-2】波としての光
    光の単元を未習な学生も半分ほどいたため、中学で学習する「レンズ」の話から、光が波であるということを紹介する。また、ヤングの二重スリットの実験も実演。
  • 【2-3】粒子としての光
    シングルフォトンを観測する実験を見せる。光を弱めていくとフォトンが見えることを、実験結果から議論・類推させる。
  • 【2-4】シングルフォトンの干渉実験
    「強い光は波」「弱い光は粒子」ということを十分強調したのちに、シングルフォトンによる二重スリット干渉実験の結果を議論・予想させる。各グループでじっくりと議論してもらえるよう各班に担当者を付け、議論を手助けしたりかき回したりする。
【3】確率

「波動と粒子の二重性」という言葉の真意は「確率の波」であることを伝え、量子力学の本質の一部を理解してもらう。

  • 【3-1】確率の基礎
    確率の意味(大数の法則)を復習したあとに、確率をグラフで示す、歪んだサイコロの確率分布を見せるなどのステップを踏むことで、量子力学における「確率の波」の概念に近づいてゆく。
  • 【3-2】確率の波の説明
    光の波形は、強度を表すものではなく、確率を表していることを説明する。ここではまず、「観測によって、光子が見いだされる確率」のみにフォーカスして説明する。
  • 【3-3】強い光の際に、なぜ光が波になるか、の説明
    確率の応用として、大数の法則の結果として「強い光が波に見える」ことを説明する。
  • 【3-4】シングルフォトンの二重スリット実験の説明
    「確率の波」の考え方を用いると、シングルフォトンを用いても二重スリットで干渉することを説明する。
【4】量子力学を不思議に感じることは「不思議じゃない」

ここまでの説明が生徒の理解を超えてしまい「頭の賢い人はすごいなぁ」という意見を持たせないために、ファインマンなどの言葉を流用して「一流の研究者でも、量子力学に関しては不思議に思っている」ということを述べる。
また、偏光板の実験を生徒にやってもらったり、量子消去の実演を通じて、さらなる「不思議」をさらに「身近」に感じてもらう。

【5】まとめと、将来について

本日のまとめを行うと同時に、「不思議な量子力学」が現在、どのように応用されているかなどについて簡単に紹介する。

【6】研究者へのキャリア相談

大学受験から大学院選びまで、キャリアについて発表する。

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授業担当者の感想

大学院生による出身校(SSH)での出張授業

12月10日、自分たちの母校で出張授業を行う機会をいただき、高校生相手に量子力学の紹介を行った。大学院生による出張授業のメリットは「高校生に近い目線から教えられる点」にあると考え、「日常生活の延長として身近に感じる」をテーマに授業を組み立てた。

当日は、生徒の心を掴むために用意したクイズや演出のおかげで活気にあふれる授業となった。中でも生徒の目が最も輝いたのは、「単一光子の二重スリット実験」について、生徒同士で議論させた後に実際の実験動画を見せた時であった。彼らの「日常」から導かれた予想とは大きく異なる「現実世界」を目の当たりにして、生徒は驚愕の声を上げ、それを「確率」で説明する量子力学に対して嵐のように質問を浴びせかけてきた。
今回は母校での授業だったこともあり、生徒たちはとても「素直な反応」を示してくれた。そのような気軽な雰囲気の中で量子力学を紹介できたという点で、大学院生による出張授業ならではの刺激を与えられたのではないだろうか。今後、機会があれば、今回以上に「生徒が素直になれる授業」を提供し、子供たちが自由闊達に科学的興味を育めるよう、微力ながら力になりたい。

[東京大学 中田 芳史]

私は今回の出張授業において実験を担当した。自分たちでできる量子力学実験をもっと知ってもらおうという思いのもと、レーザポインタを使った二重スリットの干渉実験と, 偏光板を使った測定の実験を行った。偏光板の実験は高校生が自らの手で実験を行い、光の偏光が測定によって変化する不思議な現象を確認した。
偏光板の間を巧みにすり抜ける光子を自分の目で見て、高校生たちも身近な不思議を存分に楽しんでくれたと思う。この授業を機に、日常の中に量子を感じ、身近な光にそっと偏光板をかざしてみる遊び心を身につけてもらえたなら、本当の意味で大成功と言えるだろう。今回の授業では、そんな私たちの遊び心を少しは伝えられたのではないかと思う。

[京都大学 玉手 修平]

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授業風景

スライド

フィードバック総回答数:19名

1) 授業の理解
  • a. よく理解できた〔15〕
  • b. 普通〔3〕
  • c. わかりにくかった〔0〕
  • d. 無回答〔1〕
2) 授業の感想
  • a. おもしろかった〔17〕
  • b. 普通〔1〕
  • c. つまらなかった〔0〕
  • d. 無回答〔1〕
3) 印象に残ったところは何ですか?※順不同
  • ・ 波動と粒子の二重性。 *4名
  • ・ 量子の世界では粒子も干渉するという点。
  • ・ 量子の干渉の実験。
  • ・ 光子の干渉について。
  • ・ 光子も干渉するんだというところ。
  • ・ 量子テレポートは無理ということ。
  • ・ 量子力学が未だに謎に包まれていること。
  • ・ 量子力学でノーベル賞をとった人が「私はわからない」と答えたこと。
  • ・ 自分たちの認識とは全く異なった世界を聞かされたこと。
  • ・ 中田先生の人生観です。「好きなことを好きなだけやっていい!」という言葉には本当に共感しました。
  • ・ 自分のやりたいことをやるべきだということ。
  • ・ 進路について、「自分で進路を見つけ出して、自分のやりたいことをやる」というところが、印象に残りました。
  • ・ 進路についての先輩方の経験について。
  • ・ 大学はパラダイスです。
  • ・ パラダイス
  • ・ 全て
  • ・ 物理を小説のように…
  • ・ 深淵だった。
4) 授業で気になったこと、もっと勉強してみたいことはありますか?※順不同
  • ・ 何故、分子や原子は干渉し、人は干渉しないのか?
  • ・ 人間など原子でできたものが干渉しない理由について。
  • ・ やはりなぜ粒子なのに干渉するのか知りたいです。
  • ・ 光
  • ・ 光の粒子の他の性質が知りたい。
  • ・ 量子が具体的にどのように応用されているか。
  • ・ 量子テレポーテーションの仕組み。
  • ・ 量子力学が具体的にどういったように応用されて日常生活に使われているのか。
  • ・ 量子力学全般について、まだまだ勉強したいと思った。
  • ・ 量子力学という分野自体に興味を持つようになった。
  • ・ 量子力学の応用。
  • ・ 物理
  • ・ 「波動と粒子の二重性」の解明。それに捧げる人生もそれはそれでいいなぁと思います。
  • ・ この技術は、パソコン・iPod等のどういう部分に、どのように使われているのか?
  • ・ 全て
  • ・ 自分の好きなことを見つけるべき?
  • ・ よく理解するようにする。
  • ・ あまり理解できなかったので、もっと勉強してみたい。
5) この授業を受けて、科学・物理に対するイメージはどのように変わりましたか?※順不同
  • ・ 私たちの日常生活に直結する超重要な科目だと思いました。
  • ・ 物理は小難しい印象があって、とっつきにくいイメージだったけれど、今回の講義で親しみがわきました。
  • ・ 以前よりずっと身近なものに感じられた。
  • ・ 量子力学という分野はとっつきにくい分野だと思っていたけれども、なかなか興味深いと思った。
  • ・ 奥深いものに変わった。
  • ・ もっと楽しんでみよう。
  • ・ 楽しんで考えるもの。
  • ・ とても楽しいもの。
  • ・ おもしろいとより思った。
  • ・ すごくおもしろい。
  • ・ 面白いものだなと思った。
  • ・ 思ったよりも直感的なのかもしれない。
  • ・ 物理に対する興味がとても大きくなった。
  • ・ 物理は「物の理」なんだなと実感した。
  • ・ 不思議と思うことが物理だと思うようになった。
  • ・ まだまだ分かっていないことが多いということを実感しました。
  • ・ まだ分からないことがたくさんあるのだなぁと思った。
  • ・ もっと勉強しないといけないなと思った。
6) 講演者の話を聞いて、研究者としての将来像はイメージできましたか?また、その授業を受ける前と受けた後とでは、研究職のイメージはどのように変わりましたか?※順不同
  • ・ 一番かっこいい仕事。
  • ・ 研究職は常にそのことばかりを考えていて、頭のかたい人たちばかりだと頭のかたい人たちばかりだと思っていたけれど、楽しくて、自分のやりたいことを本気でできる素晴らしい職業なんだなと思いました。
  • ・ 自分の興味を持ったことについて、とことん研究するというのは楽しそうだと思った。
  • ・ 研究者という職業も面白そうだと思う。
  • ・ すごく面白いことを研究していると思いました。
  • ・ おもしろそう。
  • ・ 講演を受ける前よりも研究というものをおもしろいと思った。
  • ・ 研究者はあまりやりたいとは思わなかったが、面白そうなことをしているなと思った。
  • ・ イメージできないけど、やってもいいなと思った。
  • ・ 興味深いもの。
  • ・ 自由なイメージを持った。
  • ・ イメージできた。
  • ・ そんなにかたい職ではないと思った。
  • ・ 毎日毎日研究室に閉じこもって研究にふけっているというイメージが、全くの僕の偏見だったということがわかりました。
  • ・ 僕は研究職には就くつもりはない。
  • ・ あまり変わらなかった。
7) この授業を通じて、大学でもっと理科の勉強をしてみたいという興味が湧きましたか?
  • a. はい〔18〕
  • b. いいえ〔0〕
  • c. 分からない〔1〕
8) また機会があれば、このような授業を受けたいと思いますか?
  • a. 是非受けたい〔19〕
  • b. あまり受けたくない〔0〕
  • c. 別の内容なら受けたい〔0〕
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