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情報技術の標準化―アジア地域における日本の国際協力
Japanese Co-operative Activities for Asian Region
in Area of IT Standardization

佐藤 敬幸 (Takayuki K. SATO) 1)
(財)国際情報化協力センター 国際情報化研究所 主任研究員

1) Chief Researcher, R&D Division, Center of International Cooperation for Computerization (CICC)108-0073 港区三田 3-13-16 三田43森ビル15F国際情報化協力センター国際情報化研究所 Fax: 03-3457-0944; E-Mail: sato@net.cicc.or.jp; http://www.cicc.or.jp 本稿は1999年10月22日(金)に東京大学総合図書館で、10月25日(月)に京都大学附属図書館において講演されたものである。
 本講演は英語で書き起こされたものを正文とし、講演は日本語で行うものである。日本語版は英語版を補完する目的で作成された。日英両版のあいだにずれがある場合は英文を優先する。

1 アジアでの国際標準のパラダイムシフト
2 情報技術の国際化とは?
3 日本の対応と協調作業の必要性
4 日本の取り組みおよび AFSIT
5 SIG、MLIT、AHTS-1 の成果の概要
 5.1 SIG
 5.2 MLIT project
  5.2.1 MLITの経過概要とMLIT-4
 5.3 挑戦項目
 5.4 MLIT-4
 5.5 MLIT-4フォロー

6 標準化セミナ(AHTS-1)
7 結び

要旨
 この報告書では、情報技術の標準化活動について、日本が中心になってアジア諸国と行っている協調活動について説明する。

1 アジアでの国際標準のパラダイムシフト

 最初に、なぜアジアでの協調がなぜ必要かという理由を明らかにする。情報技術は、本来は先端技術であり、その標準化活動は、国や地域と言うよりは、その先端技術を研究開発している人々や組織が、その技術の方向の整合性を維持したり、あるいは企業が先行者利益の確保などを目途に行われることが、現実には多かったし、標準の開発環境も、それに合致するように出来上がっている。

 つまり、情報技術においては標準化活動は先進集団のクラブ的存在で、多くのアジア諸国はその追従者であり、標準は、多くの場合、経済的な技術移転の手段として位置付けられている。

 このような環境下では、アジア諸国の中で積極的に国際的な標準化活動に参加しなければいけない動機をもった国々は少なく。その多くの国は出来上がった国際標準を利用するか、それを利用した製品を購入するだけで済む、いわゆる“ただ乗り”で済む状態であったし、多くの場合、今でもそうである。

 つまりアジア諸国にとって情報技術の標準化活動への参加は不要無縁のものであり、それで済む状態であった。そのために関心も無く関与の程度も低いのが実状である。

 ところが、1970年代中頃から、情報機器を各国の母国語で利用することが世界的に始まり、1980年代初期の大型汎用機からPCへの雪崩的移行が、この傾向を加速することになった。特に、PCは安価でかつ広範囲な使用者層に利用されるために、経済的な基盤が弱く大型汎用機は極めて限定的な用途にしか導入できなかった国々でも、特殊な限定的な英語だけの汎用機ではなく、PCを母国語で利用されることが可能になりまた望まれ、必要になるようになった。

 この母国語による情報処理環境を、全ての応用分野に、安定的にかつ経済的に提供するには、それを必要とする全ての国々や地域あるいは文化が、それぞれの要求事項を明快にかつ一貫して、しかも誤解されることなく情報発信をすること、つまり各国の要求事項の標準化が、その文化圏が先端技術を保有するかどうかに拘わらず必要になった。いままで、標準化とは無縁で過ごすことができたアジア諸国もその例外では無い。アジア各国にとっては、自国の文化のことなので、回答が外部からは与えられない先端技術の開発を強制される結果となった。これは大変なパラダイムシフトであったと思われる。

 従来技術ならば、先進国にそのモデルが求められるが、文化に関すること、特にアジアの文化については西欧モデルの適用には限界があるために、どうしても、どこにも事例の無い、自国のモデルの設定から対応を開始する必要があった。

 もし、何らかの理由で、それがどんなに妥当な理由であったとしても、これへの対応を怠った場合は、新しいネットワーク社会においては、さらに経済的にも文化的にも敗者への道を歩まざるを得なくなりかねない。これは、これらの国々にとっては青天霹靂のことであったと思われるが、現実にはそれに気づいて驚いた国はまだ良い方で、いまだに事態を把握しきれない国々も多い。これは由々しき事態である。

 簡単にまとめると、国際化された情報機器を現地適応を行う必要があるが、このためには自国の要求を公開することが必須になり、それをしない場合には、情報化時代に取り残されることになるが、その要求は各国が自力で纏める必要があり、座して待っていることが出来なくなってしまった。

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2 情報技術の国際化とは?

 寄り道をして、情報技術の国際化について、簡単に解説をする。

 情報機器が、各国の文化に対応するためには、最低以下のことを満足している必要がある。

 これらの条件を満足するプログラムを最初から作ることも大切であるが、ネットワーク社会においては、全く同じ応用プログラムが、上の条件を満足して、世界中のどの文化・言語に対応して、相互に運用出来ることが求められる。つまり、各国の文化・文字へただ単に対応するのではなく、全く同じ応用プログラムが、ほぼ同じ時期に、妥当な価格で、各国の文化や言語・文字に対応して提供されることが重要である。このために、単に文字や文化に対応する以上の技術が求められる。

 文字や文化依存要素のサポートは国際化技術の、たとえそれが基本であっても、ごく一部にしか過ぎない。また単に文字をどう入出力するかは、すでに確立された技術であり国際化としてはもはや重要技術課題ではなく、世界的に各国言語・文化に対応した全く同じプログラムをどう供給すべきかが現在の課題である。

 実際には、ある約束事の下で、文化的・言語的要因のあるデータは、空白の応用プログラムやシステムを作る、これで文化的・言語的には中立のシステムが出来上がる。このシステムを、国際化(INTRENATIONALIZED I18N)システムとし。あらかじめ決まられた約束事に従って、統一的な方法で、空白部分を各国の文化や文字で埋めることを現地適応化(LOCALIZE L10N)すると言い、この標準的なプロセスを通して、各国文化・言語に対応することで、上記の本当の意味での要求に合わせることが可能になる。このようなことを、国際化と呼ぶことが多い。

 このような条件下では、各国は、それぞれ必要な独自の情報技術を開発するのではなく、上記の空白を埋める条件を満たすような、各国文化についての情報を国の内外に向けて提供する必要がある。この提供すべき情報は、空白を埋めるための約束事に従っていないと情報にはならない、つまり自国文化紹介だけに注目した説明では情報発信と言えなし、かえって誤解と混乱を招く原因になることが多い。各国は、その約束事を理解し、それに従うことを求められ、その上で(誰も提供してくれない)自国文化に関する情報提供が要求される。これが情報技術の国際化が各文化に要求することであり、これ以上は要求していない(この辺誤解が多い)。

 国際化とは、単に自国文化に合わせたシステム開発ではない、それだけでは多くの場合、かえって国際的な情報化を阻害するという状況になりつつある。

 なお情報技術の国際化についてのさらなる解説はISO/IEC TR 11017を参照されたい。
 本題に戻って、このパラダイムシフトへの対応について…

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3 日本の対応と協調作業の必要性

 日本もこの新しい事態の例外では無い、1970年代後期から情報機器の日本語化に関する、国家標準やdefact-standardsが整備され、一応の日本語化への道は設定されたかのように見えた。また、日本語文字コードJIS X 0208が1978年に発表されると、漢字圏諸国へ技術協力を行い、中国の文字コード GB-2312の開発なども行われた。

 またアジア諸国でも、情報処理技術者、大学、米国への留学生や、移民などが中心になって、それぞれの言葉に対応するPCが開発され、あるものは利用されあるものは失敗に終わっている。

 しかし、その後の情報技術の適用分野がその予想を越えて広がり、また地域的にもネットワークが拡大してくると、これまで各国が独自に、“場当たり的な方法で”行って来た各国語化が、使用者の要求に十分応えられなくなってきた。極端には、場当たり的対応は、より高度な情報化への阻害要因となっている場合も多い。 世界的にJapanizationと呼ばれている日本語化も、世界的な国際化の流れから見ると、その例外では無い。

 このような方法で開発されたシステムには、もう一つ、文化的背景の表面しか理解できない人々が開発した技術であるために、本当の意味での文化適合性や、異文化対応などには大きな問題があったのが現実である。このことは日本においても例外ではなく、その都度新しい方法が提供されたが、その新しい方法の存在そのものが、さらなる問題を発生させるという循環になりかねない勢いである。

 このような“動いている的”を狙うような事態では、国際標準の設定や情報発信などが出来そうにもなく、どうしてもある程度の共通基盤をもったアジア諸国が、それぞれの文化的背景をもった要求を理解しあい、それぞれ独自ではなく、ある程度の調和のとれた地域の要求を安定的に情報発信する必要が認められ。まだ事態に気づいていない国々をも巻き込んで、地域の要求を協調しながら纏め上げる必要性が顕在化している。

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4 日本の取り組みおよびAFSIT

 日本においても“場当たり的”な日本語だけに特化した日本語化や、漢字コードの場合のような、単発的な技術協力から一歩前進した取り組みの必要性が認識された。

 つまり、日本語化が一段落した1980年代中頃には、アジア諸国共通の問題解決や、その話し合いの場の必要性、あるいは国際標準の開発の場における協調行動の必要性などが認識されはじめた。

 この問題に取り組むため、通産省工業技術院の主導の下に(財)国際情報化協力センター(CICC)がアジア情報技術標準化フォーラム(Asian Forum for the Standardization of Information Technology AFSIT)を創設した。第一回AFSITは1987年9月に東京で開催され、以下ほぼ毎年開催されており、今年1999年は第13回をミャンマーのヤンゴンで開催される予定である2)

 第一回AFSITの参加国は、中国、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリッピン、シンガポール、スリランカ、タイの1カ国でありその後モンゴル、ミャンマー、ベトナムがメンバーとして参加し、ラオス、ネパールもオブザーバ参加をしており会議の参加国は16カ国になっており、今後さらに追加も予想される。

 会議の参加者は、最初は政府の関係機関の代表や専門家などまちまちであったが、1996年の韓国・済州島での第10回AFSIT頃から、情報技術の標準化を担当する政府機関の代表会議の色が濃くなりつつある。

 議題は、その時々のトピックスの各国の現状報告や意見の交換などが中心であり、第一回のトピックスは文字コード、1998の第12回のベトナム・ハノイ会議は、GII/GIS環境の構築であった。今(1999)年のヤンゴン会議ではコンピュータ教育や技術者認定などが予定されている。この間の詳細については、学術情報センターの内藤教授がくわしい。

 情報交換的な会議が第6回のマレーシア・クアランプール会議まで続き、各国の現状報告中心の会議に若干マンネリ化の気配が見えて来た。そこで、具体的な問題を討議し、それの解決をはかる“見える成果を出す”作業をAFSITと平行して行うことが試みられている。

 1993年から1995年にかけては、国際化に関するAFSIT専門家会議(Special Interest Group SIG)が開催され、情報技術の国際化に必須な文化依存要素のデータに関するDataBookを発表した。

 1997年には、多言語情報処理プロジェクト(MLIT project)が2000年3月までの予定で開始されて、各国の文字コード問題に取り組んでいる3)。 またさらに1999年3月には、国際情報化研修(AHTS-1)が開催されている。これらの会議が専門家会議であることも、AFSITが政府機関代表の会議に変換しつつある理由の一つである。

 このように、アジアの情報技術の標準化の国際協調作業は、政府機関の代表が集まり政策や戦略あるいは現状把握や問題提起等が中心のAFSITと、その時々の具体的な問題の解決を共同作業(SIGやMLITなどの)を通して実現するProjectsとの組み合わせで進行している。この二つの関係は車の両輪のようなもので、AFSITのように、話し合いや現状報告だけでは結果を得ることが困難であるし、Projectsだけでは、本当のニーズに対応したり結果をアジア諸国全体で共有することも困難である。

2) http://www.cicc.or.jp/homepage/afsit/index.html
3) www.cicc.or.jp/homepage/mlit/index.html

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5 SIG, MLIT, AHTS-1の成果の概要

5.1 SIG
 AFSIT-SIGは1993年2月から1995年11月まで、AFSITメンバー11カ国の参加を得て、4回の会合を含んで行われた。

 情報機器が、各国の文化に対応するためには、最低以下のことを満足している必要がある。

 この中で、文字に関することは、多くの人々が挑戦しているので、まず手始めの作業として、各の文化依存要素の調査・分析・整理を行い、その結果を"Data Book of Cultural Convention in Asian Countries"として1996年4月にCICCより発表した。

 この結果、それまで多くの人々が情報技術の国際化に挑戦した際に、文字処理と文化依存要素処理の2面同時進行を試み、文化依存要素のデータの収集で息切れをする場合が多かったが、それに対してデータを公開し、多くの努力を文字処理に集中できるようになった。

 このData Bookは、中国、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリッピン、シンガポール、タイの11カ国の文化依存要素についてまとめられている。

 収録されている文化依存要素は以下の26項目で、Date format, Time format, Calendar, Number format, Number rounding, Monetary amount expression, Word Representation of numbers, Hyphenation of word, ICON and Symbols, Character size and Spacing, Preferred Font Style, Character attribute, Paper size, Paper margin, Page Layout, Business letter format, Personal letter format, Postal address format, Telephone number format, Measurement systems, Legal and Regulatory requirements, Message and Dialogue, Person's name, Color usage and significance及びTaboo itemである。

 このSIGの成果は、単に、上記のデータに止まらず、アジア諸国がまとまって何かをしようとすれば成果は期待し得るという事例になり、その後のAFSITでの討論に新しい可能性を追加した意義は非常に大きかった。これが次のMLIT projectに繋がることになった。

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5.2 MLIT project
 MLIT projectは、AFSITの環境の下で、“具体的成果をめざす共同作業”の第二弾として開始された。このプログラムは、"Equal Language Opportunity"を旗印に、単に英語と各国語の2言語処理ではなく、色々な言語が混在した多言語システムても、データの相互運用性を保証できるようなシステムの構築をすることを目的としている。

 MLITでは、これを達成するいろいろな要素の中から、文字コードとフォント問題に焦点をあわせて、各国の文字コードがその目的に適応できるかどうか検討し、その目的を達成するために文字コードの開発の指針を示すことに挑戦している。

 これは東南から南アジア地区にかけて(ISO/IEC 10646 implementation level-2と言われている文字を使用している国々にとって)特に重要であり、かつ問題があるという認識が背景にある。また、前記SIGでは避けて通った(どうしても避けられない)文字の問題への挑戦の第一弾でもある。

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5.2.1 MLITの経過概要とMLIT-4
 1997年5月に第一回シンポジウムがMLIT-97の名前でシンガポールで行われ、続いて同年11月日本でMLIT-2が行われ、1998-10月にはMLIT-3がベトナムのハノイで開催され、第四回が来週ミャンマーのヤンゴンで開催される。

 通算参加国は、ブルネイ、中国、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、カンボジア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、フィリッピン、シンガポール、スリランカ、台湾、タイ、ベトナム、ECの19カ国・地域に上り、AFSITに比べて時限的な専門家会議と言うことで参加条件の制約が緩くなり、AFSITより多い結果になっている。

 第1回、第2回は現状把握、問題点の把握と相互理解を目的に、お互いのシステムの現物を展示しあい、色々な議論を通して問題点の理解を深め、かつ共有することが出来た。

 第3回では、第2回までの調査の結果把握されたの再確認と、それへの対応策策定の方針が示され、その合意はAFSIT-12にも報告され承認されている。

 10月末に予定されている第4回(MLIT-4)では、MLIT-3の結果確認された問題点への対応策原案が提示・討議され、参加各国の合意の後、さらに、続くAFSITでの賛同を経て、その後は2000年3月のISO/IECへの具体的な標準案の提案に向けて整理をされる予定である。

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5.3 挑戦項目
 第二回のMLIT-2終了時点で、以下の三つの挑戦項目が確認されている。

a. 各国文字コードには、それぞれ固有の問題点がある。このそれぞれの固有の問題点が、それらの言語を混在させると、さらに新しい問題を起こす可能性がある。従って、もっと統一的な方式によって作られた文字コードが望ましい。その統一的な文字コードを、各国が自国の文化的背景などに配慮して開発するためには、文字コードの統一性を保つための開発指針のような国際規格が必要である。

b. 現在の国際規格にあるフォント属性は、アジアの文字の表記の要求を十分反映していない、そこで、現在の国際規格にアジアの要求を追加する提案をすることが必要である。

c. 現在の国際規格に収録されている(または収録が予定されている)各国の必要な文字は、日常的な必要性で見ると、不足な文字があることが認められる。(また一部には不要な文字が含まれていることもある)。これは、最終の理想的な状態を待つまでも無く、早急に不足分は追加する必要がある。

 第三回のMLIT-3では、上記の三つの問題点に対する対応方針とともに、さらにもう一つ追加すべき挑戦項目が確認された。

d. アジア各国は、特に各国の少数民族等の言語に対応することを考慮にいれると、共通の起源をもって国境を越えて使用されている言語や文字を考慮する必要がある。従って、各国が自国の言語や文字に専念するだけではなく、複数の国の共同協調作業をして、共通的な解決策を作る必要がある場合も多々あり、それへの対応も必要である。

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5.4 MLIT-4
 これら四つの挑戦項目に対して、第四回MLIT-4では、以下のようなことが報告・提案される予定である。

a-1. 各国の文字コードの(特殊処理の)多様性が生まれる最大の原因は、符号化される文字要素が、(当たり前のことではあるが)各国の(手書きの時の)正書法の影響を強く受けており、それをコンピュータ処理の便宜のための場当たり的不規則処理を加味して各国文字の処理をしていることが主原因と考えられる。そこで、正書法等の影響を二義的にし、コンピュータ処理の都合に第一義的に合わせた、コンピュータ内部処理のための、文字コードの開発方法を指針として発行して、それに合わせた各国文字コードの開発を促進する。これにより各国の文字コードの統一性が確保されやすくなる。

a-2. この、開発指針に基づいた、コンピュータ処理に都合の良い、統一的な文字コードは、各国のユーザーからみれば、必ずしも使いやすいものとは限らないはずである。そこで、機械の内部はコンピュータの事情に合わせるが、他方、Human-Interfaceは、それとは独立に完全に使用者の事情に合わせてあることが望ましいので、この矛盾する二つの要求を連結する手段を自由に開発できる環境を技術指針として国際提案し、各国が自国の文化に合わせた、多様なhuman-interfaceを開発できる環境作りを促進する。

b. 現在のフォント交換技術の国際標準は、アジア諸国のニーズを十分反映していないので、現行規格に、アジアのニーズに対応する補遺(amendments)を国際提案する。

e. 各国の現行規格の不完全性(欠字)等については、関係国との調整が出来次第、国際提案を適宜提出する。1998年度には、モンゴル。ミャンマーなどの欠字に成果が見られた。
 1999年度はカンボジア、フィリッピンなどについての提案をし、さらに国際審議が開始されたタイやベトナムの8単位コードへの積極対応などを行う。

f. アジア諸国間で使用されている同一系文字のユニフィケーションの可能性をしばらく追求することを推奨する。なお、現在検討の候補にあるものは、タイ系文字、インド系デバガナリ文字、アラビヤ文字などである。

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5.5 MLIT-4フォロー
 上記の結果をふまえ、AFSITの賛同を得られるならば、今後以下の活動を予定している。

a-1. コンピュータ処理に都合の良い文字コードの開発指針原案を2000年3月までに国際提案をする。

a-2. 多様な入力方式を受け入れ、それを処理に都合の良い文字コードに変換するプログラムを利用できるようにする汎用の入力インターフェース開発方針を国際提案する。

b. すでに、提案されている、ISO/IEC 9541-1 PDAM-3、ISO/IEC 9541-2 PDAM-1の成案をはかる。

c. 欠字に対するアジア各国間の国際協調対応を継続する

注:具体的に国際対応をしたものは、アジア各国の通貨記号(追加分 モンゴル、フィリッピン、カンボジア、ミャンマー)、ミャンマー、クメール、モンゴル、タイ、ベトナムータイ族、ネパール、スリランカ、モルジブ、フィリッピンなどがあり、ラオ、バングラデシュなどが今後対応が必要である。これに、将来的に前記した、アジア・ユニフィケーションを考慮すると、MLIT/AFSITはアジアのほとんど全ての国々と何らかの協調関係を結ぶことになる。

 また長期的には、MLIT-4までで、単独の文字の問題の基本的な面はある程度めどがつくと想定し、その後は、文字の集合(つまり文章やデータ)として見た場合に、現在の国際規格が、アジアの要求を満たしているかどうかの検討を行うことが考えられる。

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6 標準化セミナ (AHTS-1)

 MLITの活動を通して、各国とも(当然のことではあるが)、国際標準にどのように要求を提出するか、提出後、どのように議論を展開するかについての経験と理解が皆無であり、無用な誤解を招き、それが結果的には満足できない国際標準に繋がっていることがわかった。つまり国際標準化プロセスのもっと実務的な理解が必要であることが表面化した。

 1999年3月に、国際標準に関する研修セミナー、アジア太平洋地域標準化体制整備ISO/IEC JTC1情報技術標準化研修(AHTS-1: Asia Hyojyunnka Taisei Seibi-1)を日本規格協会(JSA)と共同で開催した。この8日間のプログラムには、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、マレーシア、ミャンマー、ネパールの各国から各1名が参加した。国際標準はなぜ必要か、そのとりまく環境、さらにISO/IEC JTC1業務指針の解説や、要求の具体的提案方法、さては実際の会議での行動などの研修を行い、最終的に、福岡で開かれたISO/IEC JTC1/SC2/WG2会議にゲスト参加をした。この研修は非常に実戦的具体的であったために、多くの参加者から強い支持を得られた。

 この種の研修の必要性は、考えて見れば当たり前のことである。いままで、アジアの多くの国々は、国際的標準開発機関のメンバーではなく、標準の開発にも参加しないで、出来あがった標準を利用する立場で十分であったが、今後は自国や地域の文化的な背景をもった要求を国際的に提案するために、どうしてもこの国際標準開発のプロセスの理解が必要になる。しかし、実際の国際標準の開発作業は、紙の上での手続きの解説だけでは理解し得ないことがたくさんある。その問題を乗り越えて我々の要求を提案するには、まずその実態を知ることが重要であるという認識で、この研修事業は、SIG、MLITに続く事業として今後その重要性はますます増えると思はれる。またこの研修の結果、アジアの多くの国々が国際会議に参加し、お互いにその提案の実現に協力しあうことが、最終的なゴールになると思われる。

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7 結び

 ここまで、アジア諸国の自国語による自国の情報発信が必須になったこと(パラダイムシフトが起きていること)。それへの日本の対応としてのAFSIT、AFSIT-SIG、MLITやAHTSの活動があることなどを説明した。これらの活動は、まだまだ不十分とは言え、かなりの成果をあげたと自賛している。

 そこで、手前味噌として、この活動がなぜうまく行っているかを自分なりに分析した結果を列記して、活動の紹介を終わりたい。

などがあるが、このやり方が、テーマの選択としても、人材確保の面でも、どこまで続けられるかどうかが、今後の最大の課題と言える。

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