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韓国の教育学術情報化政策―韓国教育学術情報院の設立を中心に−
Education & Research Information Policy in Korea: related to the establishment of the Korea Education & Research Information Service (KERIS)

金 容媛 (Yong Won KIM)
駿河台大学文化情報学部教授

1 はじめに
2 教育学術情報関連政策及び計画の概要
 2.1 学術振興法
 2.2 5大国家電算網基本計画(教育・研究電算網)
 2.3 情報化基本促進法

3 韓国教育学術情報院 (KERIS)
 3.1 目標及び組織
 3.2 主要活動
  3.2.1 教育情報総合サービス・システム (EDUNET)
  3.2.2 学術情報サービス・システム (RISS)
  3.2.3 将来計画および推進事業

4 おわりに
付録 1) 韓国教育学術情報院法(法律第5686号)
付録 2) 1999年度韓国教育部の教育情報化計画・事業
付録 3) 組織名称などの対照表

1 はじめに

 1999年4月22日、韓国政府は行政改革の一環として学術振興法による韓国学術振興財団 (Korea Research Foundation: KRF) 付設[先端学術情報センター](Korea Research Information Center: KRIC)と韓国教育放送院法による韓国教育放送院 (Korea Educational Broadcasting System) 付設[マルチメディア教育支援センター](Korea Multimedia Education Center: KMEC) を廃止し、韓国教育学術情報院 (Korea Education and Research Information Service: KERIS) を新設した。韓国教育学術情報院法(法律第5686号、1999年1月12日制定)の公布3カ月後に設立された韓国教育学術情報院は、教育の情報化と関連した政策と執行機能をもつ教育部傘下の政府出資機関として法人の性格をもつ。これまで大学および学術情報化を担当した「先端学術情報センター」と初・中等の教育情報化を担当した「マルチメディア教育支援センター」の両機関を統合し、両機関のすべての財産・権利・義務を韓国教育学術情報院が包括継承した。
 また政府は情報化を通じて知識国家の基盤を形成し、国家競争力と国民の生活の質の向上のためにマスタープラン(CYBER KOREA 21)を樹立・推進している。情報先進国になるために、従来推進してきた超高速情報通信基盤の構築と情報通信産業の育成と同時に、国民の情報マインドと情報リテラシーを向上させることを緊急の課題としている。2002年までに2,500万名の国民に対する情報化教育を推進する「国民情報化教育総合計画」を樹立、99年3月の情報化推進委員会でこの計画を確定した。これから2002年まで政府の各部署別に情報化教育の細部実行計画を推進することになっている。

 1999年9月にKERISを訪問し、関係者との意見交換および最新の情報を収集する機会を得た。本稿では訪問中に入手した資料・面談内容と関連文献を参考にしながら、韓国教育学術情報院の設立を中心に韓国における教育学術情報化の最近の動向を報告する。

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2 教育学術関連政策及び活動の概要

 韓国の教育学術情報政策に関連する法律・計画としては「科学技術振興法(1972年)」「学術振興法(1979年)」と「5大国家電算網基本計画(1983年)」、「図書館及び読書振興法(1994年)」、「情報化促進基本法(1995年)」などがあるが、ここでは「学術振興法」及び「5大国家電算網基本計画」のうち「教育・研究電算網」と「情報化促進基本法」の内容を要約することで韓国の教育学術情報化政策の活動及び発展過程を概観する。

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2.1 学術振興法
 それまで国策として重点をおいてきた科学技術情報から学術情報全般に関心が向けられ、全般的な学術情報政策の法的根拠となる「学術振興法」が1979年12月28日に公布され、学術情報活動の積極的な支援・育成が計画された。

 同法第8条「学術情報管理計画」は次のように規定している。

1) 文教部(現在教育部の前身)長官は学術情報管理体制の確立のために次の各号に関する総合計画と基本施策を樹立して、その業務を調整・管理するための基本となる指針を作成する。
(1)学術情報管理機関の育成に関する事項
(2)学術情報の流通体系の確立に関する事項
(3)その他、学術情報管理に関する事項

2) 第1項の規定による学術情報管理業務に関して必要な事項は大統領令で定める。
 上記の第8条による大統領令は「学術振興法施行令」(大統領令第9991号)として1980年8月16日公布された。

 学術振興法第10条に基づき、学術活動を効率的に支援・育成するために「韓国学術振興財団」が法人として設立された。同財団の図書館および情報サービス関連事業については、同法第13条6項に、“学術研究に必要な情報資料の調査・収集および管理と活用のために「学術情報センター」を設置運営する”と規定されている。

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2.2 5大国家電算網基本計画
 政府は1983年から推進している5大電算網基本計画を汎国家的事業として展開するために、1986年に「電算機普及拡張と利用促進に関する法律」を制定した。それを受けて「電算網調整委員会」が構成され、87年から行政網、教育網、金融網、公安網、国防網など5大電算網を中心として電算化事業が本格的に開始された。91年度には第1段階事業を終了したが、この第1段階(1987-1991)事業は、全国規模の電算網の構築と主要情報のデータベース化など国家基幹電算網の基盤を構築するものであった。続く第2段階(1992-1996)事業は、第1段階事業の成果を土台にした電算網の連係運用による、情報の共同活用体制の構築に重点をおき拡大・発展させるものであった。

1) 教育電算網 (Korea Education Network: KREN)
 教育電算網は、教育機関に対するコンピュータ支援と学術情報及び教育行政情報の交換を目的とする大学の電算化、図書館網、教育行政網で構成されている。98年12月現在、教育電算網には1,400機関以上の初・中等学校、大学、専門大学(2年制)、教育行政機関が接続され、海外機関とも接続されている。96年12月には韓国先端学術情報センター (KRIC) が教育部の傘下機関として、国内外の学術情報を迅速に提供する目的で設立された。

2) 研究電算網 (Korea Research Environment Open Network: KREONet)
 研究電算網は98年2月現在、234の政府出資研究機関・企業体研究機関、大学の研究機関、政府部署で構成されている。研究電算網では、科学技術情報の流通のために、研究データベースの構築および流通のための事業を科学技術処傘下の研究開発情報センター (Korea Research & Development Information Center: KORDIC) を中心に推進している。

 さらに1995年からは、超高速情報通信基盤事業の推進を始め、2010年の完成を目標に先導試験網、超高速国家情報通信網、超高速公衆情報通信網など技術開発・応用に関する計画が発足した。その実施のために、1995年度に韓国電算院 (National Computerization Agency: NCA) が全担機関に、韓国通信とDACOMが網構築担当機関に指定された。

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2.3 情報化促進基本法
 上記のような計画が進められていく中で、国家レベルでの情報化を一層促進し、情報通信産業および超高速情報通信基盤構築事業を効率的に推進するために「情報化促進基本法」が1995年8月に制定された。この法律により「情報化促進基本計画」が立てられ、それに関連する政策および計画の調整のために国務総理を委員長とする「情報化促進委員会」が設置された。また情報化促進を支援するために情報化促進基金が設けられた。1996年5月に「国家科学技術諮問委員会」において大統領は情報化が国政の最優先目標であると言明し、国家科学技術諮問委員会では情報化を推進するため、次のような政策課題を提示した。

1)国家情報化推進体制確立、
2)国民の情報化への参加誘導、
3)情報科学技術の振興とソフトウェア産業育成、
4)民間情報化の活性化支援、
5)超高速情報通信基盤の早期構築

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3 韓国教育学術情報院 (Korea Education and Research Information Service: KERIS)

 韓国教育学術情報院法により1999年4月22日に新設された韓国教育学術情報院は、従来の韓国学術振興財団 (KRF) 付設[先端学術情報センター](KRIC)と、韓国教育放送院法による韓国教育放送院 (KEBS) 付設[マルチメディア教育支援センター](KMEC) を統合し、教育学術情報化を推進する新しい政府出資機関として設立された。以下は両機関の沿革をまとめたものである。

1996. 6. 21: 韓国教育開発院 (Korean Education Development Institute) 付設「マルチメディア教育研究センター (Korea Multimedia Education Center (KMEC)」設立
1996. 9. 11: 教育情報総合サービス・システム(EDUNET) 開始
1996. 12. 26: 韓国学術振興財団 (Korea Research Foundation) 付設「先端学術情報センター (Korea Research Information Center: KRIC)」設立
1997.3. 21: 韓国教育放送院 (Korea Educational Broadcasting System) 付設「マルチメディア教育支援センター (KMEC)」設立
1998. 5. 1: 学術情報サービス・システム (RISS) 開始
1999. 1. 21: 韓国教育学術情報院法 公布(法律第5,686号)
1999. 4.22: 韓国教育学術情報院 (KERIS) 開院
1999. 7. 5: ISP登録及び運営開始
1999.10.1: インターネット専用 01444網 開通、教育学術情報ポタルサービス (portal service) 開始

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3.1 目標及び組織
 韓国教育学術情報院法は同院の推進事業について次のように規定している(第6条要約)。

・ 教育用コンテント開発・普及事業
・ 教育情報化の活性化支援
・ 教育情報総合サービス・システム(EDUNET)運営・管理
・ 学術情報サービス・システム (RISS) 運営・管理
・ 民間開発教育情報の確保および連係体制の構築
・ 情報技術活用教育の強化
・ 情報教育担当教員の養成及び研修
・ 生涯学習情報の開発・連係・確保体制の構築
・ 教育情報の体系化及び標準化
・ 教育情報化関連の国際教育及び協力事業

 具体的な目標として、次のような事項が挙げられている

1) 幼児教育と初等教育の情報化支援、
2) 中等教育の情報提供と情報技術活用教育、
3) 先端学術研究環境の助成、
4) 学父母および一般国民の生涯学習情報の提供、
5) 教育学術政策と教育情報産業の活性化支援、
6) EDUNETと学術情報サービスシステムの構築・運営

 さらに、2002年までには、1) 学校教育活動に必要な基本情報の構築完了、2) 全国共通の教育学術情報網の構築完了:全国の16の市、道の教育庁に地域教育情報センター構築、3) 主要図書館、研究所間のネットワークと高等学術研究情報センターを構築することで、教育と学習のための最高のポタル(窓口)サービス・システムの構築、国内・外主要学術研究情報総合サービス窓口構築、サイバー教育コミュニティーの構築をその目標としている。

 同院の組織は理事会と初・中等教育情報化室、学術研究情報化室、網構築運営室の3つの室と調査研究部、行政支援部の2部となっている。また同院はその目的達成と専門性向上のために特に必要な場合には、教育部長官を経由して国家機関・地方自治体・教育機関・研究機関又は公共団体に対して人員の派遣を要請できる(同法第17条)となっている。

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3.2 主要活動及びサービス
 主な活動としては教育学術情報化の基盤として「教育情報総合サービスシステム (EDUNET)」と「学術情報サービスシステム (RISS)」の運営・管理がある。

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3.2.1 教育情報総合サービスシステム (EDUNET)
「教育情報総合サービス・システム (EDUNET)」は開かれた教育社会、生涯学習社会実現のための総合的基盤を構築するために、韓国教育放送院の付設機関として1997年3月に設立された「マルチメディア教育支援センター (KMEC)」が推進してきたものである。教育情報化政策決定支援のための基礎資料を提供し、先端情報技術メディアを利用した教授・学習方法の活性化のために教育ネットワークを通じて多様な教育情報サービスを実施している。EDUNETは学生と教員、学父母など教育需要者に教育関連情報を提供し、分散されている教育関連情報を相互連係することで教育情報を総合的・体系的にサービスするために構築されたシステムである。

 教育情報総合サービス・システム(EDUNET)のWebサービス:
(1)EDUNET サイバー学校(小学校、中学校、高等学校):サイバー学習教材、注文型教育放送衛星サービス、学習資料室、相談室などで個別学習支援
(2)教育学習資料室:授業の進行に必要な学習補助資料および情報提供、
(3)教育研究室:教育関連研究論文・報告書・授業事例・教育統計資料の提供、
(4)教師研修室:教員の研修関連情報の提供、
(5)学父母支援センター:子女教育に活用可能な情報と学父母関連活動に関する情報の提供、
(6)サイバー生涯学習院:余暇・趣味活動関連の情報提供、独学・資格・学点(単位)銀行制度・生涯学習教育機関の案内、
(7)情報交換:電子メール、対話室、同好会、掲示板、オンライン学校、討論の広場など各種情報と意見の交換、
(8)情報市場:民間・企業で開発された各種の教育・図書・学習・文化情報の提供

 EDUNET文字サービス:
(1)オンライン学校(仮想学校:小・中・高校・大学)、
(2)教育相談、
(3)衛星教育放送サービス、
(4)電子メール、
(5)対話室、
(6)同好会、
(7)討論広場、
(8)教育関連機関・団体、

EDUNETの登録者は1999年10月現在、約130万名、1日の平均アクセス件数は24,000 (Web Service) 件、174,000 (Text-based Service) 件となっている。すべての国民が無料で、インターネット、PC通信で利用できる。

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3.2.2 学術情報サービス・システム (Research Information Service System: RISS)
 「学術情報サービス・システム (RISS)」は研究者に国内外の学術情報を迅速に提供することを目的として国内学術情報の共有体制および海外の学術情報機関との協力体制を構築するために、韓国学術振興財団の付設機関として1996年12月に設置された「先端学術情報センター (KRIC)」が推進してきたものである。

 学術情報サービス・システム(RISS)のサービス:
1) 図書総合目録サービス (Union Catalog Service):全国の大学図書館(99年5月現在145大学参加)の目録情報を統合、共同目録作成、相互貸借サービス、データベースの構築(99年9月現在):書誌データ700万件と所蔵データ1,900万件、LC書誌レコード 500万件と典拠レコード 400万件
2) 海外オンラインデータベース・サービス:海外DB70種以上、One-Stop Service提供、分野別全文学術データベース提供、電子雑誌原文サービス、
3) 学術雑誌論文総合目録情報サービス:国内外学術雑誌論文DB、原文サービス提供、
4) 学術支援情報サービス:学会及び研究所情報、研究者情報提供など、

RISSの登録者は1999年10月現在約9万名、1日の平均アクセス件数は2,700件(Web)となっている。

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3.2.3 将来計画及び推進事業
 将来計画としては、学術情報流通のための基盤として以下の4つの基盤を構築する。

1) 情報資源基盤の構築
・学術情報資源の確保
  ・提供可能な学術情報資源の範囲の増大
  ・学術情報資源の保存
  ・学術情報の検索範囲の拡大
  ・必要情報の目録と検索提供
2)技術的基盤
  ・学術情報処理の標準化
  ・検索技術の比較、評価、開発
  ・電子出版の基盤技術の確保
  ・著作権の体系的な管理のための技術確保
  ・学術情報の伝達のための技術確保
3)制度的基盤
  ・情報資源基盤構築に必要な機関間の協力体制の構築
  ・技術的基盤構築に必要な機関の協力体制の構築
  ・著作権管理のための法および制度の制定・普及
4)社会文化的基盤
  ・学術情報利用のための社会文化的環境整備
  ・専門人力養成を通じた社会力量の強化
  ・利用者教育を通じて利用環境の整備

推進事業としては次の5分野をあげている。

1) 学術情報のPortal(窓口)サービス体制構築
2) 国家学術情報総合目録構築及びサービス
3) Full-text基盤の電子図書館構築(国内学術論文Full-textの体系的管理及びサービス)
4) 学術情報の共同活用(大学図書館及び関連機関間の相互貸借)
5) 海外データベースの共同購入
6) 国内外関連機関との協力体制構築
  ・国内関連機関、KINITI、KORDIC、国立中央図書館など
  ・海外関連機関、OCLC、NACSIS、BLDSCなど

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4 おわりに

 情報サービスの究極的な目標は国民の生活の質を向上させることである。有用な情報を迅速に提供するためには社会的・文化的基盤と情報マインドの拡大や情報の生産・流通の安定性の確保が必要であり、技術的・財政的・制度的支援を含む政策的努力が必要である。全国的な情報システム及びネットワークを構築するには国の基本政策、法制度、行政的支援、利用状況と利用者要求などが主要素として作用し、一般的に全国システムを計画・調整・諮問・支援する中央調整機能とその中で情報の収集・処理、検索・提供の流通機能をあわせもつ機関が必要である。現在、韓国内の情報資源の効果的な利用と先進諸国の情報の入手および活用のためにシステムの整備の必要とその認識は高まっている。また政府の行政改革の推進によって、類似機能をもつ情報関連機関間の統・廃合などが計画されている。

 21世紀の知識情報化時代において国や個人の生存・繁栄は教育・知識・情報の質・量に依存する。情報通信を基盤とする新しい教育体制と情報体制が必要である。教育学術情報化を推進する機構として新設された韓国教育学術情報院は、行政改革の一環として、従来分散されていた教育情報と学術研究情報の収集と流通体制を統合した。学校教育、生涯学習、学術研究に必要な専門的な情報を総合的に迅速に提供することで、これからの知識情報化社会において必要な新しい教育の形態としてサイバーの教育体制と生涯学習体制の実現、また学術研究情報の中枢機関としての役割が期待される。

 最後に恒常にご指導をいただいている学術情報センター猪瀬博所長、内藤衛亮教授に心からなる深い感謝の意を表したい。

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参考文献

1. 韓国教育学術情報院法(法律第5686号、1999年1月21日制定)
2. 韓国電算院. 国家情報化白書 (National Informatization White Paper) 1999. 802p. 1999.7.
3. 韓国電算院. 国家情報化白書 (National Informatization White Paper) 1998. 733p. 1998.6.
4. 韓国教育学術情報院. 案内資料, 11p.
5. 教育情報総合サービス・システム (EDUNET). 案内資料, 7p.
6. 学術情報サービス・システム (RISS). 案内資料, 7p.
7. 金容媛. 韓国における学術情報ネットワーク構築体制の現況. 平成3年度科学研究費補助金(国際学術研究 共同研究)東アジア文字データの国際交換に関する実証研究(課題番号01044148)研究成果報告書, 1992, p.61-85.

関連URL:

[1] 韓国教育学術情報院: http://www.keris.or.kr
[2] 学術情報サービスシステム: http://riss.keris.or.kr
[3] 教育情報総合サービスシステム: http://edunet.kmec.net
[4] 教育部: http://www.moe.go.kr
[5] 韓国電算院: http://www.nca.or.kr
[6] Korea Network Information Center (KRNIC): http://www.krnic.net

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付録:1) 韓国教育学術教育院法(法律第5686号)

韓国教育学術情報院法  1999年1月21日制定(法律第5686号)

第1条(目的) この法律は韓国教育学術情報院を設立し、教育および学術研究に必要な情報を制作・調査・収集して教育情報提供体制を構築・運営することにより、教育および学術研究の質的水準を高め、国家教育の発展に寄与することを目的とする。

第2条(定義) この法律にいう「教育情報提供体制」とは、国内・外の各種教育および学術関連情報を収集・加工・蓄積し、これを需要者に提供するための体制として、韓国教育学術情報院(以下、教育情報院とする)が構築・運営する体制をいう。

第3条(法人格) 教育情報院は法人とする。

第4条(設立)
1 教育情報院はその主たる事務所の所在地に設立登記をすることにより成立する。
2 第1項の規定による設立登記事項は以下の各号である。
1) 目的
2) 名称
3) 主たる事務所
4) 役員の氏名および住所
5) 公告の方法
3  設立登記以外の登記に関しては民法中の財団法人の登記に関する規定を準用する。

第5条(定款)
1 教育情報院の定款には次の各号の事項を記載しなければならない。
1) 目的
2) 名称
3) 主たる事務所の所在地
4) 理事会に関する事項
5) 役員および職員に関する事項
6) 組織に関する事項
7) 業務およびその執行に関する事項
8) 財産および会計に関する事項
9) 基金に関する事項
10) 定款の変更に関する事項
11) 公告の方法に関する事項
2 教育情報院が定款を変更するときは、教育部長官の認可を受けなければならない。

第6条(事業)教育情報院は、次の各号の事業を遂行する。
1 教育および学術研究に必要な情報の制作・調査・収集および管理、それを活用するための研究
2 教育情報提供体制の構築および管理・運営
3 教育および学術情報の開発・流通に必要な情報の体系化および標準化
4 マルチメディアを利用した教育用情報・資料の研究・開発・発掘・および普及
5 各種学校の図書館電算化および電子図書館の構築支援
6 各種学校の教育および教育行政の情報化支援
7 遠隔教育・研修およびこれに対する支援
8 教育および学術情報関連の国際交流および協力

第7条(役員等)
1 教育情報院の役員として、理事長1人、院長1人を含む11人以内の理事と監事1人をおく。
2 役員の任期は3年とする。
3 院長を除く役員は非常勤とする。
4 理事長・理事および監事の選任に関して必要な事項は定款で定める。
5 監事は教育情報院の業務および会計を監査する。

第8条(役員の欠格事由) 次の各号の一に該当する者は教育情報院の役員になることができない。
1 大韓民国の国民でない者
2 国家公務員法第33条各号の一に該当する者

第9条(理事会)
1 教育情報院の業務に関する重要事項を審議・議決するために、教育情報院に理事会をおく。
2 理事会は理事長・院長を含む理事で構成する。
3 理事長は理事会を招集しその議長となる。
4 理事長は院長を兼ねることができない。
5 監事は理事会に出席し、意見を陳述することができる。
6 理事会に関してその他必要な事項は定款で定める。

第10条(院長)
1 院長は教育情報院を代表し、その業務を総括する。
2 院長は定款の定めるところに従って理事会が選任し、教育部長官の承認をえなければならない。

第11条(地域教育情報センター)
1 教育情報院は第6条の規定に基づく事業を遂行するため、必要な場所に地域教育情報センターを設立できる。
2 地域教育情報センターの設置・運営に関して必要な事項は大統領令で定める。

第12条(職員の任免) 教育情報院の職員は、定款の定めるところに従って院長が任免する。

第13条(運営財源)教育情報院は次の各号の財源によって運営する。
1 国家の出捐金・補助金および地方自治団体教育費特別会計の補助金
2 教育情報提供体制の運営に基づき発生する利用料・手数料・収益金
3 その他収入金

第14条(利用料・手数料等)
1 教育情報院は、教育情報提供体制を利用しようとする者、教育情報提供体制から提供される情報サービスを受けようとする者に対して、教育部長官が定める利用料を徴収することができる。
2 教育情報院は第6条の事業に関して手数料その他実費を徴収することができる。

第15条(事業年度)教育情報院の事業年度は政府の会計年度にしたがう。

第16条(事業計画書等の提出)
1 院長は、大統領令の定めるところに従って毎事業年度ごとに事業計画書および予算書を作成し、教育部長官に提出しなければならない。これを変更しようとするときも同様である。
2 院長は、毎事業年度の事業実績と公認会計士または会計法人の監査を受けた決算書を翌年の3月31日までに教育部長官に提出しなければならない。

第17条(人員の派遣要請)
1 教育情報院はその目的達成と専門性向上のために特に必要な場合には、教育部長官を経由して国家機関・地方自治団体・教育機関・研究機関または公共団体(以下、公共機関等とする)に対して人員の派遣を要請できる。
2 第1項の規定により人員の派遣要請を受けた公共機関等の長は、その所属職員を教育情報院に派遣できる。
3 第2項の規定により教育情報院に派遣された者は、派遣を理由に人事・報酬等身分上の不利益を受けない。

第18条(資料の提供要請等)
1 教育情報院は、公共機関に対して業務遂行に必要な刊行物や資料の提供を要請できる。
2 教育情報院は、第1項の規定により刊行物や資料を提供する者が要求する場合には相当の対価を支給しなければならない。
3 第1項の規定により教育情報院に提供された刊行物や資料は、教育情報院の事業目的外の目的では使用できない。

第19条(検査および是正要求等)
1 教育部長官は必要な場合、所属公務員をして教育情報院の業務および会計に関する事項を検査させたり、必要な資料の提出を要求できる。
2 教育部長官は次の各号の一に該当する場合には院長にその是正を要求し、その他必要な措置をとることができる。
1) 教育情報・資料の内容が関係法令に違反する場合
2) 第1項の規定による検査の結果、違法または不相当な事項がある場合

第20条(秘密厳守の義務)教育情報院の役員および職員またはその職にあった者は職務上知った秘密を漏洩してはならない。

第21条(類似名称の使用禁止)この法律に基づく教育情報院でないものは、韓国教育学術情報院またはこれに類似する名称を使用してはならない。

第22条(罰則適用についての公務員擬制)教育情報院の役員および職員は刑法第129条〜第132条の適用についてはこれを公務員とみなす。

第23条(民法の準用)教育情報院に関して、この法律に規定したことを除いては民法中の財団法人に関する規定を準用する。

第24条(罰則)第20条の規定に違反した者は2年以下の懲役または500万円以下の罰金に処する。

第25条(過料)
1 第21条の規定に違反した者は500万円以下の過料に処する。
2 第1項の規定による過料は大統領令の定めるところに従って教育部長官が賦課・徴収する。
3 第2項の規定による過料処分に不服のある者は、その処分の告知を受けた日から30日以内に教育部長官に異議を申し立てることができる。
4 第2項の規定による過料処分を受けた者が第3項の規定により異議を申し立てた場合は、教育部長官は遅滞なく管轄裁判所にその事実を通報しなければならず、その通報を受けた管轄裁判所は非訟事件手続法に基づいた過料の裁判をする。
5 第3項に定める期間内に異議を申し立てずに過料を納付しない場合には、国税滞納処分の例にしたがってこれを徴収する。

附則
第1条(施行日)この法律は公布後3ヵ月が経過した日から施行する。

第2条(この法律の施行のための準備行為)この法律に基づき教育情報院を設立するための準備行為は、この法律の施行前からすることができる。

第3条(設立準備)
1 教育部長官は教育情報院の設立に関する事務を管掌するために、設立準備委員会(以下、委員会とする)を構成する。
2 委員会は、設立準備委員長(以下、委員長とする)を含め7人以内の設立準備委員(以下、委員とする)で構成し、委員長と委員は教育部長官が委嘱する。
3 委員会はこの法律施行前までに定款を作成し、教育部長官の認可を受けなければならない。
4 委員は第3項の規定により認可を受けたときには、遅滞なく連名にて教育情報院の設立登記をした後、院長に事務を引き継がなければならない。
5 設立当時の院長は教育部長官が任命する。
6 委員は第4項の規定による事務引継が終了したときに解嘱されたものとみなす。

第4条(権利・義務等の承継)
1 この法律施行当時、韓国教育放送院法第11条の規定によるマルチメディア教育支援センターと関連する韓国教育放送院の財産と権利・義務は、韓国教育放送院理事会の議決を経て、教育情報院の設立登記と同時に教育情報院がこれを包括承継する。
2 この法律施行当時、学術振興法第13条第6号の規定による学術情報センターと関連する韓国学術振興財団の財産と権利・義務は、韓国学術振興財団理事会の議決を経て、教育情報院の設立登記と同時に教育情報院がこれを包括承継する。
3 この法律施行当時、第1項および第2項の規定によるマルチメディア教育支援センターおよび学術情報センターの職員が教育情報院の職員に任用されるときは、従前の所属機関を退職して教育情報院に新規任用されなければならない。この場合、院長は定員の範囲内でこれを優先的に任用しなければならない。

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付録:2) 1999年度韓国教育部の教育情報化計画及び事業
    出典:「国家情報化白書1999」p.155
区 分 事 業 名
教育情報化 基盤構築 小・中等学校 教育用 コンピュータ普及
小・中等学校 教員用 コンピュータ普及
小・中等学校 電算網 構築
地域情報教育 モデル学校
教育情報化 研究学校 運営
教育情報 資料 開発・普及 教育用コンテンツ 開発・普及
教育情報化 活性化 支援
EDUNET 運営・管理
民間教育情報産業 活性化 支援
情報技術 活用教育 強化 コンピュータ関連 教育課程 強化
情報教育担当 教員養成及び研修
教員コンピュータ活用能力 活性化 支援
教育行政 情報化 小・中等学校 総合情報管理システム 構築
教育統計 情報化
教育行政業務 電算化
学術・研究情報 基盤構築 大学 教育情報化 支援
国立大学 電算運営
教育電算網 拡充
学術情報流通体系 構築 先端学術情報センター 運営
大学図書館 情報化 支援
新規事業 障碍者 教育福祉情報センター 運営
単位銀行制 総合情報システム 構築
仮想大学 プログラム 実験
仮想大学 運営大学 支援
教員資格取得者名簿管理情報化 (DB構築)
コンピュータ 電算補助員 支援

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付録:3) 組織名称などの対照表
英 語 名 称 日 本 語 名 称
Korea Education Broadcasting System (KEBS) 韓国教育放送院
Korea Education Development Institute (KEDI) 韓国教育開発院
Korea Education Network (KREN) 教育電算網
Korea Institute of Industry &Technology Information (KINITI) 産業技術情報院
Korea Multimedia Education Center (KMEC) マルチメディア教育支援センター
Korea Research & Development Information Center (KORDIC) 研究開発情報センター
Korea Research Environment Open Network (KREONet) 研究電算網
Korea Research Foundation (KRF) 韓国学術振興財団
Korea Research Information Center (KRIC) 韓国先端学術情報センター(原名:尖端学術情報センター)
Ministry of Education (MOE) 韓国教育部
National Computerization Agency (NCA) 韓国電算院

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