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韓国における図書館相互協力機関:現状と活動
Interlibrary Cooperation Organization in Korea: Its Current Status and Activities

キム・テースン (KIM Tae-seung, Ph.D.)
京畿大学図書館情報学科教授・大学院長

訳 古賀 崇(東京大学大学院教育学研究科)

1 はじめに
2 現状と活動
 2.1 公共図書館協議会
 2.2 国立大学図書館協議会
 2.3 韓国私立大学図書館協議会
 2.4 KMLA/韓国医学図書館協議会
 2.5 STIMA/科学技術情報管理協議会
 2.6 KOSSIC/韓国社会科学情報資料機関協議会
 2.7 その他の機関

3 おわりに

1 はじめに

 韓国においては、単館規模の図書館では財政状況の脆弱さや職員の不足のために、貧弱な情報サービスや狭小なスペースといった問題が生じている。こうした弱点を克服するためには、図書館の種類や領域を考慮しつつ、図書館相互の協力が必要となる。

 私たちの図書館は、韓国において図書館協力の中心となる図書館相互協力機関を形成している。この協力体制はひとつの連合図書館 (union-library) と呼べるものである。

 こうした協力体制が、情報サービスを拡張し資源共有を可能ならしめることは間違いない。

 具体的には、共同購入、目録作成上の協力、資源共有、総合データベース構築、オンラインジャーナルのコピーサービス、共同保存活動が、協力活動にかかわってくる。
 アメリカにおいては、Library Trends誌が1975年10月の特集記事で図書館相互協力を扱った。1976年には「図書館における資源共有についての会議」がピッツバーグで開かれ、資源共有について多数の研究活動が発表された。それ以来、資源所有の概念は単館での所有から共同所有へと変わっていった。

 韓国における図書館相互協力活動は、「国立大学図書館長協議会」がライブラリアンシップの確立のために結成されたことに始まると言える。1999年末には20以上の機関が図書館相互協力に参加した。積極的に参加している機関もあればそうでない機関もあり、活動のレベルは様々である。

 本稿においては、このうち6機関の現状と機能を紹介する。この6機関は積極的に協力活動に参加してきたところである。

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2 現状と活動

 本章では、韓国における各々の図書館協議会の活動基盤、地位、活動領域、出版物について紹介する。

2.1 公共図書館協議会
 本協議会は1969年10月に結成され、現在297会員を擁している。総会と委員会があり、会員全体から成る総会の傘下で委員会が組織される。委員会は各行政単位から16の会員図書館を選出し、活動結果全体について総会に報告を行う。委員会は議長・副議長を1名づつ、監査を2名選出し、選出結果について総会の許可を得ることになっている。

 本協議会の主な活動は、KOLIS(Korea Library Information System、韓国図書館情報システム)の促進、共同保存活動、読書指導活動の運営面での支援、 IFLA出席者の選考および出席者への費用面の支援(毎年7〜8名)、研究活動の実施である。

 本協議会からは、(1)『公共図書館ハンドブック』、(2)セミナー資料、(3)『公共図書館運営研究』が、定期的に刊行されている。

 1999会計年度での総予算は約6,000万ウォンと推定されている。

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2.2 国立大学図書館協議会
 本協議会は、当初は1963年2月の「国立大学図書館長会議」として始まり、そこでは6名の国立大学図書館長がライブラリアンシップについての議論を行った。この会議は「国立大学図書館協議会」に改称し、1979年に韓国図書館協会に加盟した。また本協議会は規則を制定して会員対象を拡大し、会議の開催により効果的な運営を追求した。会長が任命する運営機関が諸活動の責任を負う。80館の大学図書館が本協議会に参加しており、会員図書館の館種は国立大学、産業大学、教育大学、特殊大学に分かれている。本協議会は大学における教育・研究活動に貢献するべく、次のような協力活動を行っている。

(1) 図書館活動の向上のための共同研究・提言
(2) 出版
(3) 研修・セミナーの実施
(4) 資料交換
(5) 図書館電算化のための協力

 上述のように、こうした協力活動は情報サービスの協力と質の向上を目指して計画されている。本協議会は講習会の開催と、研究結果・活動・統計を収録した『国立大学図書館報』の出版により、会員の質の向上を目指しての研修を行ってきた。

 『逐次刊行物総合目録』は1991年に刊行され、情報共有の基盤を会員に対し提供した。

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2.3 韓国私立大学図書館協議会
 本協議会は16校の私立大学により組織されており、1972年に結成された。本協議会は、会員間の関係確立と協力の促進による大学図書館の発展を目指して設立された。1999年末時点で101館の大学図書館が本協議会に参加している。本協議会における協力活動は以下のような点に関与している。

(1) 図書館活動の向上のための研究
(2) 会議、セミナー、研究、研修
(3) 学術面の通信活動・協力の促進
(4) 図書館員の質の向上
(5) 会報・マニュアル等の刊行

 こうした活動に加え、全国規模のセミナーが年1回開かれており、また1982年〜1989年には現地調査活動も毎年行われていた。本協議会は、会員の地位や個人情報を収めた『全国私立図書館協議会員ハンドブック』を刊行したほか、1982年に『全国大学逐次刊行物目録』を、1990年に『図書館電算化資料集』を刊行した。さらに会員図書館間では相互貸借が実施されており、逐次刊行物ないしフルテキストがインターネット上で交換されている。

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2.4 KMLA/韓国医学図書館協議会
 本協議会は1968年に5館の医科大学図書館により結成された。そこでは資源と通信活動を効果的に運営すべく図書館相互協力が開始された。会員図書館の種類は様々である。現在では47館の医科大学図書館、88館の病院図書館、12館の研究機関図書館、11館の製薬企業図書館が参加しており、総計158館が会員となっている。会長と理事会が本協議会を運営しており、会長傘下の事務局が実務を行っている。

 さらに、総会で選出された理事会が渉外活動に関与しているほか、4つの専門委員会(企画・運営、電算化、図書館員、編集)が専門的活動を行うべく置かれている。

 主要な協力活動についてはKMLAと他の諸協議会において違いはほとんどないが、KMLAにおいては独自にコピーサービスのためのクーポン制度を設けており、情報交換の向上のための効果的手段となっている。定例の学術会議が年1回開かれている。会員は主題関連の研修活動、すなわち、医学用語、Index Medicusの利用法、Excerpta Medicaの利用法、Korean Index Medicusの利用法などについての研修活動を受ける。こうした主題関連の様々な研修活動に加え、本協議会は出版活動を積極的に行っている。具体的には、年2回刊の『韓国医学図書館協議会報』、国内の医学雑誌に収録された研究論文を確認するためのツールであるKorean Index Medicus、相互貸借用の『医学雑誌総合目録』がある。また『視聴覚装備総合目録』、『医学情報の検索』、『韓国医学図書館20年史』がKMLAから単行書として刊行された。『医学司書』誌もニュースレターとして刊行が始まった。さらにホームページも開設されている。最後に付言すると、本協議会の財政状況は他の機関よりも恵まれている。例えば、1999会計年度の予算は1億3,000万ウォンと見られている。

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2.5 STIMA/科学技術情報管理協議会
 本協議会は1972年に、ソウル市洪陵にある6つの科学技術研究所により結成された。1999年時点ではSTIMAは「大徳研究団地」の研究所を含め53会員を擁し、科学技術情報の交換を目的としている。

 『科学団地図書館総合目録』がSTIMAの設立後1989年まで16巻刊行されたが、現在これは総合データベースを通じオンライン上で提供されている。1998年時点では80万件のレコードがインターネット上で利用可能となっている。フルテキストはAreialシステムないしインターネットで利用できる。

 1年の上半期には技術セミナーが、下半期には学術セミナーが定期的に開催されている。これらは国際規模のセミナーで、高度技術を主題として扱っている。会員ディレクトリ、相互貸借、海外研修、ホームページ運営、雑誌コピーサービスが、こうしたセミナーで扱われている。STIMAは国内の科学技術情報システムの構築・利用について主導的役割を担っている。

 http://stima.kaist.ac.kr

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2.6 KOSSIC/韓国社会科学情報資料機関協議会
 本協議会は1990年に結成された。1989年より協力関係にある6つの既存組織がKOSSICを構成している。UNESCO韓国委員会がアジア・太平洋地域における社会科学分野の情報ネットワークであるAPINESSに参加したのを契機にKOSSICが設立され、1999年末までに45機関会員がKOSSICに参加している。本協議会の設立目的は、協力活動、情報交換、情報管理、研究活動を通じて社会科学と国際交流を発展させることにある。具体的な活動は以下の通りである。

(1) 社会科学情報についての交換・協力活動
(2) 相互貸借
(3) 情報管理についての相互協議
(4) 資源収集・資源交換についての研究・出版活動
(5) 総合目録
(6) 関連する国内・国外機関との協力

 会長、理事会、(実務担当の)事務局がKOSSICを運営している。KOSSICの地位や会員情報を収録した『韓国社会科学情報資料機関協議会ハンドブック』が刊行されているほか、1994年には『外国学術雑誌総合目録』が刊行された。

 http://www.kedi.re.kr/kossic/

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2.7 その他の機関
 ここには以下の機関が含まれる。

(1) 韓国神学図書館協議会
(2) 全国教育大学図書館協議会
(3) 韓国専門図書館協議会
(4) 単科大学図書館協議会

 これらの機関は活動を休止しているか、運営状況がはかばかしくない。このほか韓国全土において多数の地方協議会が存在している。さらに図書館員関連の学会も国内で16機関が存在する。これらは協議会というよりも学術的性格を有している。

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3 終わりに

 韓国の図書館組織は図書館の館種および学術領域に応じ、それぞれのやり方で協力関係を維持している。図書館相互協力による情報サービスは、単館規模での図書館サービスにおける限界の克服に貢献している。技術的に高度な方法や遠隔通信を用いて高品質の情報を共有している機関がある一方で、単行書での総合目録すら刊行できない機関も存在する。図書館をとりまく環境は電算化と情報技術により急速に変化してきた。こうした潮流に順応するためには、システムの自動化と最新のデータ交換が情報共有に不可欠である。さらに、政府が全国情報基盤の構築を進めているゆえ、図書館はこの変化に積極的に対処することが求められる。今こそ、よりよい図書館相互協力システムおよび資源共有戦略が実行に移されるべき時期である。アメリカにおいては、学術図書館が平均1.9単位もの図書館協力ネットワークに参加している上、館種を超えた図書館協力システムが発展している。この潮流を考慮するならば、同じ館種ないし同じ領域に基づく図書館相互協力を超えた全国規模の図書館協力システムの構築が、韓国の図書館にとって望まれることである。

 デジタル図書館の到来に際しては、オンライン上の電子的情報検索、フルテキストの交換、電子上のレファレンスサービスなどの点での大幅な技術革新が、図書館協力システムに求められている。

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参考文献

Woodworth, Anne. 1991. Library Cooperation and Networks : A Basic Reader. N.Y. : Neal-Schuman Publisher, Inc.
Besement, Susan P. 1987. "Criteria for the Evaluation of Library Networks". Resource Sharing and Information Networks. 4(1).
Eaten, A. 1979. Library Resource Sharing in the United States, Resource Sharing of Libraries in Developing Countries. Munich : K.G. Saur.
Patrick, R. J. 1972. Guidelines for Library Cooperation : Development of Academic Library Consortia. Santa Monica : System Development Cooperation.

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