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図書館情報サービスにおける国際協力活動に関するワークショップ-1
Workshop on International Cooperation in Library and Information Services-1
軽井沢国際高等セミナーハウス 1999年8月30日(月)―31日(火)
International Seminar House for Advanced Studies, Karuizawa, August 30-31 1999

東南アジア地域を対象とする科学技術情報専門家研修プログラム
JST's Training Program for Science and Technology Information Specialists in South East Asian Countries

菊池 文彦 (Fumihiko KIKUCHI)
科学技術振興事業団国際室調査役

1 JSTの概要
2 科学技術情報流通活動に関するJSTの国際的な展開
3 東南アジアにおける科学技術情報流通活動ワークショップ
4 アジア地域を対象とする研修プロジェクト

ABSTRACT
JST continues JICST's function to develop international projects and activities for the scientific and technological information dissemination after a merger between JICST and JRDC in 1996. Most of the activities, such as cooperation between JST and Korea Institute of Industry and Technology Information, and between JST and the U.S. Department of Commerce Technology Administration, is based on the agreements established between the two organizations. The JST Kuala Lumpur office promotes scientific and technological Information dissemination in South East Asia. Under joint auspices with the Malaysian Science and Technology Information Centre, JST held a workshop for Science and Technical Information Dissemination in June 1999. The title of the workshop is the 1st Regional Workshop on S&T Information Activities in South East Asia. In the workshop, there were participants from Malaysia, Vietnam, Indonesia, Thai and the Philippines. All participants agreed to continuously hold this workshop through the discussion. There will be cooperation among multi organizations. JST is holding a training course for specialists of the South East Asian countries. The agenda of the training course is under discussion between potential participants and the promoter to create an effective course. JST expects scientific and technological exchange will be promoted in South East Asia as the results of the cooperative activity.

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1 JSTの概要

 科学技術振興事業団(JST)は、科学技術情報の流通業務を実施してきた日本科学技術情報センター(JICST)と、基礎的研究、新技術開発と研究交流の促進等の業務を実施してきた新技術事業団(JRDC)が統合し、平成8年10月1日に設立された。それまで両法人がすすめてきた事業を継承・発展させるとともに科学技術基本法の成立を受け、科学技術振興のための基盤整備および先端的・独創的な研究開発の推進をその設置目的としている。

 実施している事業は、科学技術情報の流通、基礎的研究推進事業、研究交流事業、研究支援事業、新技術の開発、科学技術理解増進事業に大別することができる。

 平成11年度の予算は、総事業費で906億円、この中で科学技術情報の流通事業に限定した場合の予算規模は183億円である。

 国際的な業務に関しては、科学技術情報流通関連の業務をはじめとして、国際共同研究、国内外の科学技術分野の研究者受け入れ・派遣、各種シンポジウムの開催などを行っており、JST内においては国際室が主に担当している。また、国際的な業務実施のための情報収集、海外機関との調整のために、海外に4か所の駐在員事務所(パリ、ワシントンDC、ブリュッセル、マレーシア)を設置している。

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2 科学技術情報流通活動に関するJSTの国際的な展開

 1986年8月、米国において「科学技術文献法」の成立が刺激になって、米国はもとより欧州においても日本情報に対する関心が一層高まり、英国図書館等を中心として日本情報国際会議が開催された。JSTはこれらの動きにいち早く呼応して、日本の科学技術情報を積極的に海外に向けて発信を始めた。さらに、日本情報の海外での普及促進をさらに積極的に推進するため、各国機関の協力を得て、日本情報普及説明会(日本情報セミナー)を開催してきた。1991年以来、米国で5回、欧州で4回、さらにアジア各国で普及活動を展開した。

 上記のように、JSTはセミナー形式で日本情報の海外への流通促進活動を実施してきたが、科学技術情報流通のボーダーレスな状況を踏まえ、定常的・継続的な形でも科学技術情報流通に関する国際協力活動を進めてきた。

2.1 二国(二機関)間協力活動
 機関間の協力活動としては、現在、3機関との間で協力覚え書きを締結しており、その協力内容は下記の通りである。

2.2 アジア・太平洋地域に対する情報の提供
 アジア・太平洋地域に対する情報提供として、下記の事業を実施。

2.3 国際的な情報流通関連機関が開催するシンポジウム・国際会議への参加及びその開催を支える資金的協力
 平成11年度の事業として、下記の会議へ参加、または参加を予定している。

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3 東南アジアにおける科学技術情報流通活動ワークショップ

 2の冒頭に記述したとおり、東南アジアに対しては、各国においてJST相当機関の協力をもとに、日本情報流通セミナーを開催して、日本情報の有用性を説くとともに、国際協力事業団の制度を利用することにより科学技術情報流通活動の専門家を派遣してきた。これらの活動は多くの場合、二機関間の協力関係をベースとするものであった。

 平成9年4月、JSTは東南アジア諸国の科学技術情報機関との協力推進を目的としてクアラルンプールにマレーシア事務所を開設した。この事務所を中心として、東南アジアにおける科学技術情報の流通促進に向け、地域諸国の科学技術情報機関との協力の可能性を探ることを目的として、JST主催、マレーシア科学技術情報センター(MASTIC)共催で各機関代表を集めた第一回東南アジア科学技術情報流通ワークショップを開催した。日時、参加機関等は下記の通りである。

日程: 1999年6月22日(火)- 23日(水)
場所: クアラルンプール
共催: JST
マレーシア科学技術情報センター(MASTIC)

 このワークショップの目的は、東南アジアの研究開発に必要な情報基盤の形成に向けて、地域諸国の科学技術情報担当機関間の協力体制を確立することである。今後、ワークショップは継続して開催することとし、今回は第一回目として、まず各機関の活動状況について相互に知り合うことを第一の目的とした。

 東南アジア5か国からの参加機関は下記の通り。他にシンガポールから下記の民間の機関が参加。

フィリピン Science & Technology Information Institute (STII/DOST)
ベトナム National Center for Scientific & Technological Information & Documentation (NACESTID)
タイ National Research Council of Thailand (NRCT)
マレーシア Malaysian Science & Technology Information Centre (MASTIC)
インドネシア Center for Scientific Documentation & Information (PDII)
シンガポール ACCESSInfo, Elsevier Science

 基調講演として、UNESCOコンサルタントのトリホス氏が“情報社会における科学技術情報流通”を、特別講演として、マレーシア国立図書館館長のサハー氏が“デジタル化の時代―マレーシア図書館への挑戦”と題する講演を行った。

 JSTは、日本の科学技術情報政策の流れとJSTの役割、さらに平成10年度以降開発を進めてきた電子ジャーナルや科学技術分野の効率的なウェブ検索システム“総合デジタルコンテンツシステム”の紹介を行った。

 二日目の全体会合における議論を経て、下記の合意がなされた。

  1. 東南アジア諸国における科学技術情報担当機関の協力体制確立の必要性が合意された。この協力体制確立のためにJSTが主導的な役割を果たすことが求められた。
  2. 上記協力の事務局としてJSTマレーシア事務所が機能することが求められた。
  3. 他国を頼るだけでなく、各機関は自国の政府に対しても、科学技術情報活動へ支援を求めることになった。
  4. 協力体制の確立はできれば国際的なフレームワークのもとで行われることが望ましい。
  5. 協力項目としては、地域情報活動の高度化を図るためのフォーラム・トレーニング・コースの実施などが挙げられた。
  6. このグループの協力プログラムの名称はCO-EXIST-SEA(Cooperative Program for the Exchange of Experiences, Expertise, Information in S&T in South East Asian Countries)と決められた。
  7. 本ワークショップの継続的な開催が求められ、次回の開催国として、フィリピン、タイ、ベトナムが立候補し、引き続き電子メールで協議することになった。

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4 アジア地域を対象とする研修プロジェクト

 東南アジア科学技術情報流通ワークショップにおける参加各機関の議論の中で得られた各地域固有の状況・課題や合意事項を踏まえ、JSTは東南アジアの科学技術情報専門家に研修を進める方針である。研修計画立案の上で必要な、各国の共通の事情、各国で共通の解決すべき課題は以下の通りである。各国に共通する状況は下記の二項目。

 科学技術情報流通を取り巻く環境においては、電子ジャーナル、電子図書館への動きが大きな流れとなってきている。そのため、研修やセミナー形式での人材養成の際の有力なトピックとして、各国で共通して作成しているディレクトリーデータベースのデータの標準化や電子ジャーナル化に関連したシステム開発等があげられる。

 平成11年11月、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアの各機関から2名を10日間程度日本に招聘する予定。

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