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日本と韓国の二国間における学術情報コミュニケーションの開発展望
Developmental Prospects for Scholarly Information Communication between Japan and Korea

ハン・サンワン (HAN Sang-wan, Ph.D.)
延世大学教授・研究処長

訳 三浦 太郎(東京大学大学院教育学研究科)

1 はじめに
2 日本と韓国の二国間における国際的な学術情報コミュニケーション
 2.1 日本学術情報センター(NACSIS)
 2.2 科学技術振興事業団(JST)
 2.3 韓国産業技術情報院(KINITI)
 2.4 韓国研究開発情報センター(KORDIC)
 2.5 韓国教育学術情報院(KERIS)

3 学術情報コミュニケーションの開発展望
4 結論
参考文献

1 はじめに

 世界中のあらゆる国ぐにでは、新たな千年期の始まりを迎え、インターネットと情報技術が新時代に必須であるという認識のもと、実用性のある知的基盤の構築が目指されている。

 近年、知識や情報が国の構造的基盤に不可欠であるとのとらえ方が広くなされており、専門化されたさまざまな情報を迅速に入手するために、現状に対応した組織的な戦略や政策が必要となっている。

 こうした状況の中で、情報スーパーハイウェイや電子図書館など応用技術を用いた事業が展開されており、インターネットや情報ネットワークを利用した情報収集システムの構築がさかんである。

 情報基盤の拡大によって情報経路は増加し、情報へのアクセス可能性が改善されつつある。

 このような知的基盤は、学問領域一般における情報の国際的な交換を可能にするばかりでなく、迅速かつ効果的な学術情報コミュニケーションを促進するものである。

 本稿では、日本と韓国の二国間における学術情報コミュニケーションの開発展望について述べる。

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2 日本と韓国の二国間における国際的な学術情報コミュニケーション

2.1 日本学術情報センター(NACSIS)
 日本において、全国規模の総合的な学術情報システムの改善に重要な鍵を握るのはNACSISである。NACSISの最大の使命は、基本的な学術情報の提供を通じ、大学の研究部門の発展や政府機関における研究開発を促進することである。NACSISでは、研究者間の情報交換の向上を目指し、大学や研究機関を結ぶ学術情報ネットワークを運用している。

 この目的に沿って、NACSIS-IRやNACSIS-ELSといった目録情報サービスを始めとする、学術情報コミュニケーション関連のさまざまな活動が行われる。この学術情報ネットワークを活用し、国際的なコミュニケーションや学術情報の交換が進められている。また、1993年8月以降、海外の政府機関や研究所に対するNACSIS-IRサービスの提供が実現している。さらに、NACSISで作られたいくつかのデータベースが海外に供給されている。

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2.2 科学技術振興事業団(JST)
 JSTでは、科学技術に関連する3,000万件の記録が集められており、2,200万件がデータベース化されている。

 また、JSTはアメリカ、ドイツとともに国際的な技術情報ネットワークを運用している。

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2.3 韓国産業技術情報院(KINITI)
 KINITIは韓国貿易・産業・エネルギー部の傘下にある非営利団体であり、利用者の要求に最適なかたちで応えるアクセスを提供する使命をもつ。

 全国的な情報提供システムの構築を委託されており、情報資源へのアクセスを容易にしてその活用を図ることを通じ、韓国の産業および技術発展を支える役割を果たしている。

 収集される情報資源は、雑誌、単行書、研究開発報告書、会議録、特許明細書など多岐にわたる。現在の蔵書には、逐次刊行物7,800タイトル、単行書8万冊以上、特許文書900万点以上が含まれる。さらに、KINITIでは科学・技術・産業の諸分野における46種類のデータベースを開発し、毎年、50万タイトルを提供している。

 日本とKINITIとの間には学術情報ネットワークが存在する。これは、外国との間に情報ネットワークをつなげる韓国情報通信政策研究院(KISDI)によって運用されている。

<表1> 日本とKINITIとの間の学術情報コミュニケーション
KINITIにおける日本雑誌の定期購読 600タイトル
KINITIとJSTとの間における雑誌の交換および寄付 1054タイトル、717機関

 KINITIは、韓国で作成された雑誌30タイトルをJSTに提供する。こうした雑誌には論文抄録を日本語に翻訳したものが付され、それらが科学技術情報データベース(JOIS)を通じて利用者に提供される。雑誌タイトルの一覧は<補遺1>に挙げてある。また、<補遺2>には、学術団体の出版する雑誌のうち、KINITIとJSTとの間で交換されている雑誌タイトルも挙げておいた。

 KINITIでは文献提供サービスを通じ、JST資料や日本の国立国会図書館の所蔵する学位論文が提供されている。KINITIの外国文献提供サービスは以下の通りである。

<表2> KINITIの外国文献提供サービス
略称 名称
イギリス BLDSC 英国図書館文献供給センター
BPO 英特許局(ロンドン)
DERWENT (有) Derwent出版(ロンドン)
アメリカ UMI 大学マイクロフィルム・インターナショナル
NTIS 全米技術情報サービス
JCL シカゴ大学John Crerar図書館
EBSCOdoc EBSCO情報サービス・グループの一部
日本 JST 科学技術振興事業団(東京)
PDC 特許データ・センター(東京)
NDL 国立国会図書館
台湾 STIC 科学技術情報センター(台湾)

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2.4 韓国研究開発情報センター(KORDIC)
 KORDICは韓国科学技術部(MOST)が発起し後援している公的機関であり、科学・技術・工学に関連する情報の収集および提供を使命とする。KORDICに所蔵される270万件の記録には以下のものが含まれる。

こうした情報はさまざまなフォーマットで利用できる。

 最近では、KINITIとKORDICの合併が検討されている。この計画は、情報サービスの効率化を目的とし、各研究所における作業の重複を避け、国家予算の適正配分を図るものである。

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2.5 韓国教育学術情報院(KERIS)
 KERISは教育部門における情報化推進の役割を担う。教育省の傘下にあり、1999年4月に設立された。最近では学位論文データベース構築プロジェクトが行われている。

 これは「サイバーコリア21」と呼ばれる国家プロジェクトの一環であり、学術情報の生産から入手までの過程を効率的に進める基盤づくりを目的としている。近くポータル・サービス・システムが実現されると思われる。

 この点を考慮に入れると、さらに快適な環境を期待することができる。例えば、低コストで効率的な学位論文データベースを速やかに構築し更新することが可能となるが、これは特に、劣悪な財政状況下にある学術団体にとって有益である。さらに、KERISでは、学術的な研究成果に関する全文検索サービスも提供されている。誰もが簡単にこのサービスを利用することができるし、研究は以前に増して進展するであろう。

 KERISの提供する学術研究ネットワークで行われる事業には、他に以下のものがある。

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3 学術情報コミュニケーションの開発展望

 最近、日本では政府援助のもと「ミレニアム・プロジェクト」が進められている。このプロジェクトの目標は、教育の情報化を中心に国内環境を改善すること、および主要産業を新時代に対応させることにある。

 これによると、教育の情報化に必要な基盤整備やソフトウェア開発が2005年までに実現される予定である。計画の実現にとって、政府と教育機関の協力が不可欠であると思われる。

 主要な計画は以下の通りである。

 全国的な協力を推進するために、我われはまず以下の問題を考える必要がある。

 学術情報の交換を実現するためには、高速度インターネット環境、研究情報のディジタル化、高質の研究サイトの開発が必要となる。そこで、韓国政府は、生み出された知識の蓄積および伝達を実現するため、サイバーコリア21を計画中である。韓国情報通信部(MIC)は、2002年までに、国民がいつでも、どこでも高速度ネットワーク・サービスを使うことができる環境づくりに取り組んでおり、1.5/2Mbps水準のネットワーク・サービスが適切な価格で利用できるよう尽力している。サイバーコリア21において重要な事項は以下の3点である。

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4 結論

 日本のIT21と韓国のサイバーコリア21の考えに従えば、NACSIS、JST、KINITI、KORDIC、KERISといった関係機関の間での学術情報の交換は非常に望ましい。しかし、将来は、こうした機関がもっと実質的な相互扶助の道を追求する必要がある。それに加えて、情報技術政策の支援、知的所有権の保護、セキュリティの問題もまた、確固とした学術情報コミュニケーションを追求する際に、重点的に考察されるべき大きな課題である。

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参考文献

http://www.keris.or.kr.
KORDIC homepage. http://www.kordic.re.kr. MIC homepage. http://www.mic.go.kr.
NACSIS homepage. http://www.nacsis.ac.jp. Trend Analysis of Information Policy. 1999. 10. 30. http://ncadl.nca.or.kr/data/trend.

<補遺1>KINITIからJSTへ提供される雑誌のタイトル(日本語の抄録を含む)
1. Bulletin of the Korean Chemical Society
2. Experimental and Molecular Medicine
3. Archives of Pharmacal Research
4. ETRI Journal(Electronics and Telecommunications Research Institute)
5. Journal of Biochemistry and Molecular Biology
6. Metals and Materials(Seoul)
7. Journal of the Korean Society of Oceanography
8. Korean Journal of Pharmacology
9. Journal of the Korean Physical Society
10. Korean Medical Abstracts
11. Korean Scientific Abstracts
12. Korean Journal of Genetics
13. Journal of the Korean Institute of Metals and Materials
14. Journal of the Korean Institute of Communication Sciences
15. Current Bibliographies on Science and Technology. Electrical Engineering & Electronics
16. Journal of the Korean Chemical Society
17. Journal of the Korean Nuclear Society
18. Current Bibliographies on Science and Technology, Biology, Pharmacy & Food Science
19. Current Bibliographies on Science and Technology, Chemistry & Chemical Industry
20. Current Bibliographies on Science and Technology, Mechanical Engineering
21. Current Bibliographies on Science and Technology, Construction & Environmental Engineering
22. Current Bibliographies on Science and Technology, Metallurgy, Natural Resources & Energy Engineering
23. Journal of Korea Society of Automotive Engineers
24. Journal of the Pharmaceutical Society of Korea
25. Transactions of the Korean Society of Mechanical Engineers A
26. Transactions of the Korean Society of Mechanical Engineers B
27. Journal of the Korean Ceramic Society
28. Journal of the Korean Institute of Telematics and Electronics-C
29. Journal of the Korean Institute of Telematics and Electronics-D
30. Journal of the Korean Institute of Telematics and Electronics-S

<補遺2>学術団体で刊行されKINITIとJSTとの間で交換された雑誌のタイトル
1. Journal of Korean Society of Oceanography
2. Journal of the Korean Nuclear Society
3. Metals and Materials
4. Journal of the Korean Society of Mechanical Engineering
5. Journal of KSNVE
6. The Magazine of the IEEK
7. Chemworld
8. Bulletin of the Korean Institute of Metals
9. Trans. of the Korean Society of Mechanical Engineering.
10. Journal of the Korean Chemical Society
11. Journal of Korean Pharmacology Society
12. Journal of Information Management

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