日本情報の国際共有に関する研究
文部省科学研究費補助金国際共同研究(課題番号10044018)
平成11度報告

Study on International Sharing of Japanese Scholarly Information
International Joint Research Project funded by a grant-in-aid from
Ministry of Education, Science, Sports and Culture, Japan Report for the Year 1999

2000年3月  

研究代表者 内藤 衛亮(学術情報センター教授)

まえがき

 本書は、平成10(1998)年度から3年計画で開始された「日本情報の国際共有に関する研究」の第二年次の報告である。研究代表者である学術情報センター副所長井上如が平成11年3月の定年退職により内藤衛亮に交代した。また、学術情報センターは平成12年4月より国立情報学研究所に改組転換されるが、本研究の目的・性格に変更はない。

 第二年次(1999年)報告の特色は三部構成として現れている。第一部では、第一年次の調査研究枠組みを踏襲・展開した報告を収録した。すなわち情報共有の基盤に関する論究であり、情報共有の具体的手だてである学術情報センター・サービスの事業展開をめぐる、制度的、技術的基盤、当面の課題などを論じた。ドイツ関係、本研究調査の一環として行われた派遣調査による発表も収容した。
 第二部には韓国の図書館・情報サービスをめぐる論究を収録した。
 第三部は、1999年8月と10月に軽井沢高等セミナーハウスで開催された「図書館情報サービスにおける国際協力活動に関するワークショップ」の報告を収録した。

 初年度の前書きにおいて研究代表者井上如は、二つのメガトレンドとして以下のような問題を提起した。

 第一に「日本を研究対象とする情報資源のニーズとその充足をめぐる過去20年間ほどの傾向」すなわち、欧米から日本への一方向性に対して、日本から欧米へという逆の方向で学術情報センターに何ができるか、しかし、こうした一方向の問題意識とその解決は、むしろ双方向のまとまりとして、さらにはグローバルなまとまりとして捉えるべきではないかという視方に置き換えられつつある。本研究はマルチラテラルな傾向を捉えようとする試みである。一方向から双方向へ、さらにグローバルへという軸足の置き方の変化、これがメガトレンドの第1である。

 第二のメガトレンドは、第一のメガトレンドが進行する過程で見失われがちな自己主張あるいはセルフ・アイデンティティ(Self-identity)を復権しようとする傾向である。情報処理技術と、情報通信技術が呼応しながら進展する中で、個人のプライバシーを守ったり、知的財産権を確保したり、市民や国民の知る権利を擁護したり、情報流通の匿名性に伴う弊害に対し、倫理性を主張することにあらわれてきている。これは市民・国民とか研究者・プロフェッショナルといった個人のレベルだけでなく、組織や国レベルでも問題になりつつある。

 平成11年度の研究活動は、井上如が指摘し置いた二つのトレンドを巡る解決を求めるという方向性のもとに進行した。調査研究活動の過程では、学術情報センター関係各部の惜しみない協力を得た。また、国立国会図書館(NDL)、科学技術振興事業団(JST/JICST)、国際交流基金(JF)はじめ多くの組織・機関のご協力を得た。記して感謝の意を表す。第二年次の報告をとりまとめて、叱正を仰ぐものである。

                                    研究代表者 内藤 衛亮

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