委託事業
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平成17年度委託事業
報告・合意形成班
グループ討論「合意形成」まとめ: 機関リポジトリ運用における「意識形成」の諸側面について

大学で機関リポジトリ(IR)を運用する部門にとって、システム構築、コンテンツ確保といったフィジカルな側面を固めるのはもちろんのこと、構成員のIRに対する「意識」をどう醸成するかといったメンタルな側面の(さらにいえば、著作権をはじめとするリーガルな側面も)対策も無視できない大きな比重を占める。本メモでは、IRを運用する側がどのように学内にIRについて働きかけを行ってみたかについて、経験と課題等を簡単にまとめてみた。

1. 学内合意形成 トップ層への働きかけ、オーソライズ
【各大学の状況】
館長から学長・理事等に説明し、了承済み。
部課長から学長・理事等に説明し、了承済み。
説明準備中。
上記のいずれかの状況であるはずであり、上層部に対して何の働きかけも行っていない、あるいはその準備もしていない大学は皆無と思われる。
また、働きかけを行うことでむげに断られるケースは無く、
口頭承諾、
図書館への公式的に諮問を投げる、
WGや委員会等を学内に設置等
といった形で、いかなるかたちにせよ了解は得られてそれなりの前進はある模様である。
【知見・課題】
そもそも、学内合意形成とは、「大学の事業である」お墨付きを得る過程であって、それ自体は目的ではないことに留意せねばならない(いかにさっさと済ませるかが肝心)。
学内合意形成が一見容易であるのはCSIが追い風になっているせいもある。
CSIが無いとしたら、まず、一般的には、[大学上層部]に話を持ちかけられる[図書館の上層部]がいるかどうかが図書館にとって第一の壁である。
2. 全学周知 構成員全員に対する広く浅い働きかけ
【各大学の状況】
全学に向けたIRの周知活動としては、次のような試みが行われている。
全学アンケート(回収率は10−20%程度)
全学対象説明会(来場者は計数十名規模)
教授会、図書委員会等で館長が説明(実務担当者による説明も)
ホームページ立ち上げ(Wiki活用も)
チラシ類の作成・配布
講演会開催
計画なし
【知見・課題】
全学に向けた説明会やチラシ配布は、労力の割には、費用対効果が薄い。
漠然と全学を相手にするより、部局やそれ以下のユニット単位にピンポイントで行う説明が効果的。その際、説明相手に対して具体的な要望(○○を電子化してIR登録して欲しい、等)を持ち出した方が効果的。
図書館等まで教員の足を運ばせるような説明会では集客数は知れている。
3. 要所、特定のターゲット(アダプタ)に対する働きかけ
【各大学の現状】
何よりも、キーマン、キーポイント(部門)を相手にピンポイントで複数の接点を作り、それを維持しつづけることが、コンテンツの継続的確保にもつながり、IRの運用上きわめて重要である。
目的(この部局のこのコンテンツが欲しい等)を明確にして、しかるべき相手に対し、単なる説明ではなくコンテンツ拡充とかのネタをからめて持ってゆく。たとえば、ある研究科の博士論文、ある研究センターの研究成果集、といった具合にターゲットを絞ると、互いに何をしたらいいのかも具体的に分かり話が進みやすい。
上層部(学長・理事・館長等)への説明のついでに、あわせてコンテンツ提供してもらう。(自らが登録作業をすることはないが)、おおむね協力的にコンテンツ提供してもらえる。
学内のWebサイトをつぶさに見渡し、著作を個人や研究科等のHPに公開している研究者にコンタクトし、コンテンツ提供や協力依頼により人脈を広げる。初期協力者獲得の手法として有効である。
【知見・課題】
コンテンツ構築につながるもっとも大事な部分である。
脈のある教員に直接コンタクトしてこそ図書館員側にも説明能力が培われてゆく>そのようにしてIRについて語ることができる人口を館内に増やすことが必要。
学部や各分野の図書担当が「サブジェクトライブラリアン」的に、図書館と教員の間で立ち回ることができるのが理想である(欧米のリポジトリの運用では主流のあり方)。
学内を行脚することで、思わぬ人やコンテンツとの遭遇があり、図書館にとって財産となる。
註)
学術機関リポジトリ構築ソフトウェア実装実験プロジェクト報告書(平成17年3月) PDF 第2部「運用上の諸課題」に学内合意形成や運用に関する課題が整理されているので参照のこと。
Last updated on: March 10,2006
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最終更新日: 2008年02月01日