国立天文台における学術情報センターシステムの利用

国立天文台管理部庶務課図書係長

市村 櫻子

1.はじめに

 国立天文台は,1988年7月に日本で始めての天文学関連分野における国立大学共同利用機関として,東京大学東京天文台・文部省緯度観測所・名古屋大学空電研究所第3部門を改組統合して発足した。現在,6研究系および11研究施設(観測所,センター)を有し,東京都三鷹市に国立天文台の本部を置き,岩手県水沢市に水沢観測センター,岐阜県と長野県の県境乗鞍岳に乗鞍コロナ観測所,岡山県鴨方に岡山天体物理観測所,埼玉県都幾川に堂平観測所,長野県南佐久に野辺山宇宙電波観測所および野辺山太陽電波観測所,米国ハワイ州ハワイ島マウナケア山頂に世界最大級の口径8.2m光学赤外線望遠鏡「すばる」を持つハワイ観測所がある。これらの研究・観測施設を基に我が国の天文学研究の中心として,国内外の高度な研究能力を持つ若手研究者による観測施設・設備の共同利用を進め,天文学の共同研究活動の発展推進に寄与している。

 また,1992年4月より総合研究大学院大学数物科学研究科天文学専攻の基盤機関となり,他の諸大学の大学院学生を受け入れて,先端分野での幅広い研究指導を行うなど若手研究者の育成にも力を注ぎ,我が国の天文学および関連分野の広範な発展を図っている。

2.学術情報センターシステムの利用

 1988年10月より学術情報センターに接続し,NACSIS-CATに参加し,NACSIS-ILL,NACSIS-IRを利用している。1998年6月より遡及入力を開始し,現在図書室所蔵分図書の約8割の入力が完了している。NACSIS-CATに入力したデータは,図書受入業務や図書室ホームページにて新着図書案内のサービスに利用している。また,1999年10月より定期版サービスを受け,OPACデータの定期更新を開始した。

3.貴重書目録

 1998年6月より天文情報公開センター暦計算室と共同作業で作成した貴重書目録「天文台所蔵天文暦学関係和漢書目録」を図書室ホームページにて公開した。これは,国立天文台が江戸幕府天文方から引き継いだ資料・文書を中心とするコレクションの目録である。和書は明治5年以前,即ち旧暦時代の刊本・写本を主体として編集されている。明治6年以後のものでも明治初期の天文・暦の啓蒙書,あるいは仏暦関係の和とじ本も掲載している。現在,この目録にある貴重書の利用にはマイクロフィルムで対応している。今後はこの貴重書の画像情報を作成し,目録DBと統合させ,全国の天文学研究者の利用に供したいと考えている。

 また,天文情報公開センター新天体情報室の調査作業後,和漢書に引き続き洋書の貴重書目録の公開を予定している。

4.貴重書常設展示

 1999年12月より天文情報公開センター暦計算室と共同作業で作成した「国立天文台所蔵貴重資料常設展示:第1回〜第21回」を図書室ホームページにて公開している。これは,天文情報公開センター暦計算室が1991年12月より現在まで22回にわたり,国立天文台ロビーにて開催している「国立天文台所蔵貴重資料常設展示」の内容を掲載展示するものである。開催回ごとのテーマに基づき,国立天文台貴重資料が広く理解,利用されるべく紹介の場を設けている。

5.天文学ネットワーク図書館

 1999年4月より天文学ネットワーク図書館を図書室ホームページにて公開した。これは,ADS(NASA Astrophysics Data System)に登録された新着論文を自動配信するサービスのほか,ネットワーク図書館内にADS検索で見つけた論文を個人専用DBに蓄積・参照できる個人書棚サービスを行っている。

 また,つぎの雑誌DBの横断検索サービスを行っている。ADS, Apj-AJ-PASP (Astrophysical Journal, Astronomical Journal, Publications of the Astronomical Society of Pacific), A&A (Astronomy &Astrophysics), PASJ (Publications of the Astronomical Society of Japan), New Astronomy。

6.今後の課題

 図書室は,2000年に新設される天文総合情報棟に移転する。新しい環境でより使いやすい図書室を目指し,蔵書データの増強,電子ジャーナルへの取り組み,ローカルILLサービスの拡大など研究を支援する体制の増強拡大を図るとともに,新CAT/ILLに対応する図書館業務システムの導入が今後の課題である。

すばる望遠鏡全景(空撮)
 すばる望遠鏡本体が,メインシャッターを開けたドーム内に見える。左は制御棟。

The Subaru Telescope(Aerial View)
 The telescope structure is seen in the enclosure with the main shutter opened.
 To its left is the control building.


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