奈良県立図書館の学術情報センターシステムの利用

―所蔵資料の遡及入力を中心に―

奈良県立奈良図書館 整理係

森川 博之

1.はじめに

 奈良県には,県立図書館が2館あり,奈良図書館は明治42年(1909)11月,橿原図書館は昭和15年(1940)7月に開設されている。現在,奈良図書館では約32万冊の蔵書を,橿原図書館では約11万冊の蔵書を所蔵し,対市町村サービスの地域分担を行うなど,協力体制を保ちながら利用者や県内公共図書館などへのサービスに努めている。

2.学術情報センターシステムの利用

 当県では,平成7年3月,奈良県教育委員会により新県立図書館整備基本構想が策定され,各図書館とネットワークにより資料・情報資源の共有化を図り,利用者からのさまざまな資料・情報ニーズに応えていくという新しい図書館像が示された。

 これにともない奈良図書館では,同年学術情報センターNACSIS-CATに参加し,9月から書誌データベース構築にむけた遡及入力を開始した。当館がデータベース構築にあたりNACSIS-CATに参加したのは,当時でも大学図書館,専門図書館など450を超える機関が既に参加し,図書367万件,雑誌22万件の書誌データが共有化されデータ量が豊富であったこと,国会図書館のJAPAN-MARCやTRC-MARCなど参照MARCが利用できることや,参加館相互の貸借システム(ILL)や情報検索システム(IR)も活用できることなどが,新図書館がめざす方向性に大きく合致すると考えたからである。

 遡及入力は5ヶ年計画で,担当職員は平常業務との兼務で6名,他にアルバイト職員が配置されている。当初の対象資料は,奈良図書館が図書約20万冊と雑誌約10万冊,また橿原図書館では奈良と重複する資料を除いた図書約4万冊と雑誌1万冊とされた。両館とも古い時代からの資料を多数所蔵しており,特に郷土資料では私家版やパンフレット,自館製本資料なども多く,書誌同定率の低さが予想されたため,入力作業にあたってはヒット率が高いと思われるものから順次行ってきた。また,昨年からは雑誌の遡及入力も開始しているが,逐次刊行物の入力にあたっては,当館の従来からの資料区分と学術情報センターの資料区分との調整など,資料の組織化についての根本的な見直しも行っている。

 平成9年7月には,学術情報センター対応の図書館情報管理システムが導入され,新規受入資料についても,NACSIS-CATへの書誌所蔵登録が可能となった。現在,奈良,橿原を合せた登録数は,遡及入力分と新規受入分を合わせて図書約30万2千冊,雑誌約8万5千冊となっており,そのうちで当館が作成したオリジナルデータは5万件以上にのぼり,参加各機関からの書誌調整にも頻繁に対応している。

3.今後の課題

 5ヶ年計画で進めてきた遡及入力期限も,残すところ4ヶ月余りとなってきた。対象資料の中で現在残っているのは,明治,大正期に受入れ自館製本を行う際に書誌情報源が欠落した図書や外国語図書の一部など,書誌同定が極めて困難なものばかりとなっている。

 また,遡及対象外となっている明治期以前の和装本,漢籍類や地図,マイクロフィルムなどの特殊資料も山積されている。現在のところ,これらの資料のCATへの登録数は極めて少ないと聞いているが,参加各館の協力をあおぎながら,データ登録に努めていきたい。


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