CRLと共同コレクション

―"Creating New Strategies for Cooperative Collection Development"会議に参加して―

学術情報センター教授

宮澤 彰

 昨年11月12日〜14日,米国ジョージア州アトランタの近郊で,標記の会議が開かれ,参加した。このような会議に,いささか専門分野の異なる筆者が参加することになったのは,主催者である研究図書館センター(Center for Research Libraries : CRL)から,学術情報センターに対し,将来の国際的な協力関係を考えて参加打診があったとき,たまたま筆者が米国に行く他の用務を抱えていたためにすぎない。ともあれ,シカゴ大学の一角にあるCRLを訪問し,この「共同コレクションディベロップメントの新しい戦略の創造」会議に参加した。

 米国には研究図書館グループRLG,研究図書館協会ARLなど,研究図書館関係の組織が多く,区別がつきにくい。CRLは,200ほどの大学図書館が参加しているコンソーシアムでメンバー館で共同購入する外国の新聞などの資料の保存と,メンバー館への貸し出しサービスを中心に活動している。このコンソーシアムが創立50周年を迎えるに当たって,今後の方向性を探るために共同コレクションに関する会議を主催したものである。(共催が前述のARL,RLG。他に,The Council on Library and Information Resourcesと,The International Consortium of Library Consortia)。

 この会議に,参加したのは,主としてCRLのメンバー館である大学図書館の,館長,コレクション担当副館長や,ビブリオグラファーという職の人々,約150名である。ビブリオグラファーは,日本の大学図書館にはあまり見られない職であるが,ある分野の収集について責任を持つ役割で(図書館によってはキュレータと呼ぶ場合もあるそうであるが),一つの図書館に数名から10名くらいという。忙しい人々にあわせてか,会議のスケジュールも金曜日の夜8時にはじまり,日曜日の午前中までやって,昼食を食べて解散というようになっている。金曜日の仕事を早めに終えて飛行機に乗ってくれば,仕事をほとんど休まなくても参加できるということのようである。ただ,時差3時間もある米国のこと,西海岸の人は金曜日の朝に出発しないと,その日のうちに着かないという。

 プログラムは,最初の3つが,インディアナ大学の学長によるキーノートアドレス,セントルイス大学の英語科の教授および米国図書館情報科学委員会の副委員長の講演,と大学の運営側,利用者側,図書館の政策決定側という外側からの話であった。続いて,図書館側からの,図書相ル協力の実例報告,利用分析の報告が1時間のセッションに4つくらいずつとタイトなスケジュールで1日続き,日曜の午前には国際化に関する報告があって,最後にまとめのセッションというスタイルであった。

 米国流の会議であるから,当然質問やコメントはかなり活発であり,予定時間はしばしば超過して,予定のブレークアウトセッションが流れたりもした。1度あったブレークアウトセッションでは,共同コレクションディベロップメントについての問題点を洗い出し,これに対するアクションを最後の全体討議で承認しようという予定であったが,このスケジュールでは,とてもまとめきれるものではなく,結局メーリングリストを開いての継続討論となった。(このメーリングリストでは今も議論が続いている)。感想としては,日本の大学図書館では,このような形での共同コレクションというのは,とても考えにくいというところであろうか。

 最後に,会場について。会場は大学ではなくコンファレンスセンターという会議場専用の施設で,アトランタ郊外のいわば人里離れた場所,森に囲まれた池のほとりにホテルと大小の会議室,講堂が配置されていて,飛行場から専用のバスで到着すると,全く会議に集中するしかないという環境が作られている。見た所,数十名から2百名くらいまでの会議が2つないし3つ,常時並行して行われているようであった。こういった,大規模な施設を見ても,やはり,米国は広いというのが,もう一つの感想であった。


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