学術情報センター教授
小野 欽司
学術情報センターは，IRESTE（ナント大学，コンピュータサイエンス研究所，フランス）とマルチメディア情報の蓄積検索に関して，1998年10月から国際共同研究を進めています。この研究に関してバーナード・レマウド教授（IRESTE所長）および小野欽司教授（学術情報センター研究開発部長）が研究協力について覚書きを交換しました。
この国際共同研究は科学研究費基盤研究（研究代表者：小野欽司）の一環として行われ，その目標は，マルチメディアシステムの分野で２つの研究組織間の研究協力を促進し，MediaSys（アクティブメディア蓄積検索システム）プロトタイプの初期バージョンを開発することです。
また並行してMLABnet（ネットワーク上のマルチメディア仮想研究所）によるマルチメディアシステムの研究を，その他の協力研究機関も含めて，ネットワークを介して国際共同研究をしています。
本研究ではバーチャル研究所MLABnetにおける遠隔講義や協調空間共同作業をネットワークを介して行い，参加する大学の高等教育の支援もします。カセサート大学NaiST（タイ），ワシントン大学（アメリカ）およびウェイン州立大学（アメリカ）も参加協力してMLABnetの実証評価を進めています。日常の研究情報交換の為のミーティング，および協同作業によるソフトウェア開発，研究結果の普及とデモンストレーションも行います。
MediaSysプロジェクトでは，学術情報センターのCOEプログラム（研究代表者：小野欽司）における成果の１つであるAHYDSプラットフォーム（F. アンドレス博士）をベースにして，分散マルチメディア情報システムにおける高度な蓄積と検索機能を提供します。
図２は，プロジェクトの構成を示します。Phasme情報エンジンをベースにしたAHYDSプラットフォーム上ではメディアのより大規模かつ多種類のデータタイプを提供することができます。より広いセットの検索必要条件を満たすメディア・データを配送し，かつ多解像度および多言語のメディア・データへより良いサービス品質（QoS）でアクセスする事ができるようになります。
MediaSysはAHYDSプラットフォームの上に，マルチエージェント環境のFindImage（J.マルチネス博士，IRESTE，ナント大学），およびName-it（佐藤真一助教授，NACSIS）プラグ・インを使用しながら，異なるアプリケーションおよび異なる検索方法に対しカスタマイズすることが可能です。
AHYDSプラットフォームの概念で統合されたMediaSysは，様々なメディア検索環境に対してカスタマイズを可能とする新しい方法論を導入しています。例えば異種分散のメディア検索システムのアーキテクチャーでは，多解像度の画像符号化標準（SPIFF，JPEG，MPEGフォーマット等），および高度なメディア検索コンポーネントを含む透明でアクティブなフレームワークを提供しいます。
本プロジェクトの第１の成果として，プロトタイプ設計を終え，MediaSysイメージ検索エンジン（MISE）の初期のインプリメンテーションを終えました。ユーザはこれによってイメージと関係したメタデータを備えた視覚的かつ特徴のあるコンビネーションによってイメージを検索格納することが可能です。MediaSysサーバーは大規模な異種分散システム上にメタデータの特徴，視覚的な特徴およびコンテンツテキストの特徴，ならびにイメージ自身を保存します。
MISE（MediaSys Image Search Engine）は，コンテンツおよびメタデータによって画像を検索する簡易なインターフェイスを提供します。この研究はワシントン大学（Schmidt教授，CDOC）との協力で開発が進められています。ここで用いたJavaアプローチは，MISEのようにシンプルでポータブルな分散システムにおいて価値あるツールを作る事が可能です。図３は，ユーザ・インターフェースの例です。MediaSysイメージ検索エンジンは，イメージの特徴を備えたメタデータによる探索アルゴリズムを用いています。
ベンチマーク評価によってMISEアーキテクチャーの探索アルゴリズムを評価しています。
この協力の一環として，フランス外務省（ラボアジエ基金）の支援でN. デザイネ（博士号候補）が滞在研究しており，画像のインデックス化の研究開発をしています。
MediaSysプロジェクトの最初の具体的なアプリケーションとして医療用薬草情報システムを選び，カセサート大学のNaiST（タイ）のKingプロジェクトへ協力しています。MediaSysのKingプロジェクトへの応用の目標は，多解像度，多言語，テキストおよびイメージ上の柔軟な検索機能を備えた医療用薬草情報システムの開発です。Kingプロジェクトの最初のプロトタイプは，1999年12月，タイ国王の72才の誕生日に国王に贈られる予定です。
このような国際共同研究は図４に示すように日本・フランス間のみならず米国，タイを含むグローバルな規模でパートナーを組んで実行されています。私達は今後とも国際的に開かれた，また情報に関する中核的な研究機関として一層の努力をいたします。
