東京工業高等専門学校における学術情報センターシステムの利用

東京工業高等専門学校庶務課図書係長

布川 みつ子

1.はじめに

 東京工業高等専門学校は昭和40年4月に発足した。現在は,機械工学科,電気工学科,電子工学科,情報工学科および物質工学科を設置し,5年間の一貫教育を行っている。

 本校の図書館は,平成7年度に大規模改修工事を行い,面積・設備共に拡充した。以来,

学内の学習・教育・研究に有効に機能できる図書館をめざすとともに,さらには,土曜日の一般開放を開始し,公共的な役割も担える図書館をめざしている。

2.学術情報センターシステムの利用

 本校では,平成6年10月に学術情報センターへの接続申請が承認され,平成7年7月にNACSIS-IRを,平成8年2月にNACSIS-ILLの業務を開始した。NACSIS-CATについては,図書館システムとの互換性を図り(書誌データのダウンロード),平成8年10月から実施した。さらに,平成9年10月からはNACSIS-ELSの利用を開始している。

 学術情報センターへの接続申請が承認された当時は,ネットワーク上で行う業務の全体像を,明確に把握しきれないことへの不安が大きく,しかも,できるだけ早く運用を開始しなければならないという焦りが加わって,何とも複雑な思いが錯綜していたことを思い出す。幸いにも,学術情報センターおよびすでに稼働していた近隣の大学図書館の皆様方から,丁寧なご指導やご支援を賜わり,業務として踏み切ることができたのであった。

 ネットワーク上での業務は,従来の業務のあり方を一変させ,同時にサービス提供の幅を想像以上に拡大させている。かつて年間100件に満たなかった文献依頼やレファレンスの件数が,その後数倍になり,しかも年々増加している。利用者に必要な情報を速やかに確実に提供できるようになったことは,職員にとって何にも増して大きな喜びである。そしてこれらの背景には,有効なデータベースと,それらを支える髑スくの機関の相互協力があることを常に思うのである。

3.今後の課題

 高等専門学校の図書館が学習・教育・研究のために有効に機能するには,図書館相互の情報網の整備,および他機関との連携協力による資源の有効活用が欠かせない状況になっている。しかしながら,全国の高等専門学校(国公私立:62高専)に対しては,「大学などの他機関に依存するだけでなく,高専でもできる限りの努力を行っていくべきだ」というご批判を度々頂戴する。具体的には,NACSIS-CATへの所蔵データ登録を推進すべきというご指摘である。残念ながら,本校においても,所蔵登録については新規購入分だけで,遡及入力については対応ができていない。

 これらのご指摘や問題点などを踏まえ,本校では図書館システム(電子図書館構想を基本に)の見直しを開始した。従来以上に情報発信を可能にし,広範囲に役割を担える図書館を構築するために,どうあるべきかを議論しているところである。


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