NACSISオンラインジャーナルプロジェクト

学術情報センター

教授 大山 敬三,助教授 神門 典子,助教授 佐藤 真一

1.プロジェクトの概要

 学術情報センターでは,現在,「オンラインジャーナル編集・出版システム開発・構築事業」を推進している。本事業は1998年度の補正予算において,文部省と科学技術庁の共同事業として措置され,4年間程度のプロジェクトとして,学術情報センターと科学技術振興事業団(JST)が実際の開発と構築に当たっている。

 本プロジェクトでは,学協会や大学などの学術研究機関における学術雑誌のオンラインジャーナル形態による出版を促進することを目的とし,編集プロセスを電子化して印刷原稿と同時に電子原稿を効率的に作成するためのシステムの開発と,電子原稿をオンラインで出版するためのシステムの開発および運用を行う。

 当面は主に論文誌を対象に,多様な学協会の要求に柔軟に対応しつつ,従来と同等のコストで冊子体とオンラインジャーナルを並行して刊行可能とし,インターネットを利用した研究成果の迅速な公開と流通,国内における学術論文の流通ハブの実現,および,研究活動に必要な情報のワン・ストップ・ショッピングの実現を目標とする。

 なお,本プロジェクトに関しては,以下のURLに最新の状況を公開しているので,興味のある方はご覧いただきたい。

・プロジェクトホーム http://www.nacsis.ac.jp/olj/index.html

・システム開発ホーム http://www.rd.nacsis.ac.jp/olj/index-j.html

2.システムの概要

 本プロジェクトでは,電子形態の学術雑誌を制作するためのインハウスシステムを開発して各学協会に提供するとともに,その電子ジャーナルをインターネットを通じて購読者に提供するための共同利用のオンラインシステムを開発・運用して学協会の利用に供する。システムの全体構成を図1に示す。

図1 システムの全体構成

 インハウスシステムは,学協会事務局員,編集委員,査読者,著者(投稿者)などの利用者に対して,原稿や工程の管理と原稿の編集・処理に必要な機能を提供する。FTP,WWWなどによる電子投稿,投稿票の管理,オンライン査読,電子編集・レイアウトなどの機能を持ち,学協会ごとの多様な編集・査読体制などに対応できる構成となっている。文書処理ツールについても,MS-WORD,LaTeX,XMLエディタなど様々なソフトウェアを組み込んで利用することが可能である。本システムはできるだけ多くのプラットフォーム上で稼働することを目指しており,初期の開発においては,Windows系とSolaris系の2系統を対象としているが,今後はLinuxやMacintoshについても対応してゆく。

 オンラインシステムは,コンテンツの管理と提供のための機能を持つ。購読者に対しては雑誌の通覧や全文検索などのほか,電子メールによる新着論文通知,ヒストリー,ブッ

クマーク,オンラインフォーラム,購読申込などの機能を提供する。学協会に対しては,個人や機関などの購読者資格ごとのアクセス制御や,公開期間などのスケジュール管理などの機能を提供する。なお,JSTは共同事業における分担として,引用文献のディジタルリンクを作成支援するためのシステムを開発しており,本システムからも利用できるようにする予定である。

3.システム運用の考え方

 本プロジェクトでは開発したシステムをできるだけ有効に学協会に利用していただくため,以下のような考え方で提供する。学協会はこの範囲で自由にシステムの運用ができる。

(1)オンラインシステム,編集管理システム,および文書処理システムはモジュールとして独立して利用することが可能であり,各学協会は利用しやすい部分から段階的に導入することが可能である。

(2)開発システムはパラメータ設定により,必要な機能だけを選択して利用できる。さらに,インハウスシステムの開発成果はソースコードの形で各学協会に提供するので,独自の機能の追加や変更が可能である。

(3)オンラインシステムは学術情報センターで運用し,学協会はオンライン出版事業のためにこのシステムを利用することができる。インハウスシステムは学協会事務局で運用するが,第三者機関に委託して運用することも可能である。

 また,本システムの運用に当たっては,各学協会はオンラインジャーナル自体の内容,およびその作成や購読に関連する事項について権利と責任を持ち,雑誌公開の期間や範囲,購読者資格や料金などの出版に関する意志決定を自由に行うことができる。

 今後は,インハウスシステムを協力学協会に試験的に導入して実用性を高め,1999年度後半には一般の学協会への提供を開始する予定である。それと並行し,オンラインシステムも,すでに電子化されている論文原稿をご提供いただき,試験運用を行った後に正式運用を開始する予定である。また,次年度以降も,表現形式に関する拡張,情報技術環境の変化への対応,印刷物中心からオンライン中心への出版形態の変化への対応など,継続して開発を行ってゆく予定である。今後の展開にご期待いただきたい。


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