高等専門学校における学術情報センター利用への

期待と問題点

高知工業高等専門学校

図書館長 谷 貞志

 本稿をまとめるにあたり,お二人の方に率直な意見を寄せていただいた。

1.ひとりの人文学科教官の研究の視点から

 おそらく工業高専における人文科学系教官の研究環境の現場を体験した者であれば,痛感されているのではないだろうか。それは地方の小規模校で研究を続けている研究者の共通の苦闘でもあるだろう。工学をメインとする工業高専における人文科学系の位置付けはもとより高くは望めないことは是認されるかもしれないが,一定の水準の論文を書くための研究環境は少人数のこともあって,必ずしも理解されているわけではない。旅費は年一回の学会発表で尽き,文献収集の旅費もなく,請求した文献複写は数カ月かかるか,ほとんどコンタクトに失敗する。最近,そうしたわれわれにとって一つの希望の星が出現した。学術情報センターの文献サービスである。大学図書館にくらべて比較にならないほどの小数の文系研究蔵書を克服できるひとすじの可能性が生まれたのである。われわれの図書館の文献複写サービスは数倍のスピードと確実性をも烽ツに至っている。ひとりの文学科教官の研究者として学術情報センターの今後の輝かしい発展を願ってやまない。

2.ひとりの電気系教官の研究の視点から

 学術情報センターという国の機関が在ることは知っていても,実際にその恩恵を受け,存在意義を実感している人は少ないのではないか。私自身,この原稿を頼まれて初めてインターネットでアクセスしてみたが,すごく立派なホームページはあるものの,はたして何ができるのか? 検索をするには利用者番号が必要と書いてある。

 分野にもよるだろうが,一般に研究者はいくつかの学会に所属し,関連する分野の学術雑誌を数冊は購読している。これらに目を通すことすら大変であるが,これで一応の研究の流れを知ることができる。それでもたまに,論文が引用している参考文献を手に入れたい時がある。こんな時,学術情報センターにアクセスすれば,簡単にその文献が見つかり,その内容が画面上に表示されると共に,必要な部分がプリンターに落とせるようになれば素晴らしい。今でもできるのかな? その方法が知りたい。

3.問題点

 以上からもお分かりのように,まだ本校における学情センターの利用は一部の人に限られており,それも操作方法を知っている図書館職員に頼んでの利用である。貴センターのいっそうの充実とオープン化を願うとともに,図書館から利用者へ,学情センター利用に関する情報発信の不足を痛感する。本年2月,本校図書館に念願のインターネットに接続された新図書館管理システムを導入したが,これを機会に,まず図書関係者が講習会などを受けて勉強し,その利用方法を校内に広めて行きたいと考えている。


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