学術情報センターにおける共同研究−平成9年度報告−

学術情報センター研究開発部長

小野 欽司

 学術情報センターの研究開発部では各研究部門における本来の研究活動に加えて横断的なプロジェクト研究を行っているが,外部機関の研究者と共同研究する,「学術情報センター共同研究員制度」がある。平成9年度の共同研究として,関連機関から研究分担者・研究協力者を得て,下記のような研究を推進したのでその概要を報告する。

「日本における国際書誌調整に関する研究」

研究代表者 内藤 衛亮教授

 平成4年度から開始した共同研究で,電子原稿,フルテキスト・データベース,ネットワーク資源などの生成段階に着目して「学術成果流通」「インターネット導入分析」「ネットワーク環境下における図書館」などについて,書誌調整に関連する運営課題を検討・調査・分析している。

 ネットワーク環境下における研究成果流通の諸問題,特に大学紀要の電子化をめぐる技術的・制度的課題の解明を目的として,鹿児島大学,熊本大学,京都大学,国際基督教大学,長岡技術科学大学,金沢大学,および千葉大学の図書館などの協力を得て,科学研究費「研究成果流通環境に関する総合的研究」と連携したかたちで研究会を軽井沢国際高等セミナーハウスにおいて開催した。

 「国際書誌調整」に関連して,1996年8月に北京で開催された国際図書館連盟総会で開催されたワークショップの議事録を編集し,学術情報センターにおいて平成9年8月に刊行した。

 東洋文庫ユネスコ東アジア文化研究センターが推進する,中央アジア地域研究分野の書誌情報データーベース「中央アジア及びイスラーム圏文字を含む書誌型データベース」に関する共同研究を進めている。

「専門用語の語構成論的及び語彙論的研究」

研究代表者 影浦 峡助教授

 平成9年度には,以下の作業を行った。

  1.専門用語の基礎的研究が情報検索の場にどのように役立ち得るかの洗い出し

  2.複合専門用語の語構成と,専門用語の語彙論的な位相の計量的分析方法の検討

 前者に関しては,文献の属性であるキーワードに対し,分野の属性としての用語が,現在のIRにおける利用者インタフェースの進歩やナビゲーションの発展に伴って有用となりつつあることを確認した。後者に関しては,語彙論的な位相における専門用語の基本的な位置づけを確認するとともに,計量分析の手法の検討を行い,試験的な分析から有望な成果を得た。

 成果:「日本語専門用語の量的構造の分析について」影浦 峡,『言語処理学会第4回年次大会発表論文集』pp.70〜73,1998.

   ;「専門用語コーパスにおける語彙的な階層付けの可能性」榎沢康子,辻 慶太,影浦 峡,『言語処理学会第4回年次大会発表論文集』pp.450〜453,1998.

   ;「「専門用語研究」としての「専門用語」研究」影浦 峡,『専門用語研究』

   ;「自動専門用語抽出の諸問題」影浦 峡,『整理技術研究』

「映像情報の内容に基づく自動索引情報生成に関する研究」

研究代表者 佐藤 真一助教授

 マルチメディアコンテンツとしての映像情報の解析手法について検討することを目的としている本共同研究では,動画像理解・自然言語理解の統合利用による映像解析手法の重要性に着目し,映像情報自動インデキシングや内容に則した映像プレゼンテーション法などの新しい応用の実現を目指すものである。特に双方の研究成果の発表と意見交換を行い,関連分野における他の研究グループとの研究状況の調査および今後の具体的な研究方針についての検討を行うことを目標とした。

 会合における討議での結果として,映像画像における動画像理解と自然言語理解の統合利用の重要性を再確認した。この点を踏まえ,ニュース映像解析手法に関して研究発表を行った。とりわけ映像中の人物情報の重要性についての共通認識をもとに,動画像解析による顔情報の抽出およびセンサを用いたジェスチャの解析を行っていく予定である。

 成果:Shin'ichi Satoh, Yuichi Nakamura and Takeo Kanade, Name-It: Naming and Detecting Faces in Video by the Integration of Image and Natural Language Processing, Proc. of IJCAL-97, pp.1488〜1493, 1997.

   ;Takeo Kanade, Shin'ichi Satoh and Yuichi Nakamura, Accessing Video Contents: Cooperative Approach between Image and Natural Language Processing, Proc. of ISDL’97, 1997.

「文書画像認識と電子文書の構築支援に関する研究」

研究代表者 高須 淳宏助教授

 文書画像理解技術を用いた効率的な学術情報の獲得方法について研究することを目的とした本共同研究では,平成9年11月に文書画像理解に関するセミナーを開催するとともに今後の研究課題について意見交換を行った。そのなかで,主に電子文書化する対象の明確化,電子文書の構築と有効利用を実現するためのアプローチについての議論を行い,今後以下の視点から電子図鑑を有効に活用するための諸萩Z術の研究を行うこととした。

  1.文書画像理解技術を用いた図鑑情報の獲得

  2.オブジェクト認識技術を用いたオブジェクト情報の獲得

  3.テキスト情報からの情報抽出と情報統合

  4.電子図鑑を実装するための電子文書の記述,管理,操作

 なお今年度は,図鑑情報の獲得についての研究を開始し,図鑑情報の獲得に重要となるカラー文書画像,写真画像の処理について研究を行った。


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