研究高度化推進(COE)プログラム実施報告−平成9年度−

学術情報センター研究開発部長

小野 欽司

 学術情報センターで平成7年度から進行している(COE)プログラムである「学術情報の高度化および次世代情報ネットワークの構築に関する研究−次世代学術情報基盤のためのオープンプラットフォーム−」の平成9年度の研究報告をする。

 本研究では,21世紀にも通用する新しい学術情報基盤の確立や知的資産形成に必要な情報学に係わる基盤的・総合的研究を国際的な視野のもとに行うことを目的としている。

 平成9年度は,継続中の新概念のデータベースに基づくハイパメディア処理システムの研究など4つのプロジェクト研究および情報学の基礎となる個別研究を行った。

 以下のテーマのプロジェクトを重点的に推進した。

1)アクティブハイパメディアシステムに関する研究:Active HYpermedia Delivery System (AHYDS) and Phasme Project

2)情報検索への応用を考慮した自然言語処理基本ツールの研究

3)ネットワーク情報システムにおける戦略的管理情報収集と分析・応用に関する研究

4)情報関連研究の実体と日米比較に関する調査研究

 1)のアクティブハイパーメディアに関する研究についてはフランスからの外国人研究員アンドレス博士を中心にハイパメディア情報の共有と配送について,特にデータベースの観点から研究を行っている。

 これはマルチメディア情報の広域ネットワーク上での共有や知的活動への活用に適した新しい応用指向型のデータベース(Phasme)の提案に始まり,テキストや画像が主体の学術資料,音声,映像が主体のディジタルな文化的,芸術的作品などの知的資産をこのデータベースを用いて国際的共有をするシステムの確立を目指している。また,情報流通における多様なアプリケーションや利用方法にとらわれないオープンプラットフォームの構築を目指している。SINETとThai Sarnを経由してタイ王国の大学院生に対して,遠隔講義を本年4月から毎週金曜日午後実施しており,既に4名のKasetsart大学院生が単位を取得した。この実習テーマとして,AHYDSプロトタイプモデルをインプリメントし国際間で実験評価している。

 個別研究については,現在の学術情報センターの研究課題にとらわれず,情報学研究の基盤となる研究テーマを個々の研究者が月例のCOEミーティングで発表し,意見交換すると共に,具体的成果が得られるようプロジェクト化の方向づけをしている。

 研究成果は国際学術会議や学術雑誌へ発表している。また,フランス,米国,タイ王国の大学などとの国際共同研究により国際的に開かれたオープンな研究を推進している。

 今後も萌芽的な新提案のテーマについて柔軟にプロジェクトを設定し,情報学研究の中核的研究機関にふさわしい実績を積み上げていく予定である。

 本計画の特色,意義および期待される成果を要約すると,次のように考えられる。

1)従来の学術情報センターの研究テーマにとらわれない新領域の研究開拓をしている。

2)学術情報コンテンツ,自然言語処理の基本ツールなどを整備し将来の学術基盤としての活用に備えている。

3)外国人研究者を積極的に受け入れ,国際共同研究をするなど,国際的に開かれた研究体制をとっている。

4)情報流通におけるオープンプラットフォームの構築という技術的な柔軟性を持っている。

5)次世代の学術情報共有環境のプロトタイプやモデルを実証提示可能としている。

 研究テーマなどについては本プログラムを実行する上での比較的大きな課題をトップダウン的にかかげ,具体的研究テーマの決定については,COE推進グループを構成して全研究者から希望テーマを提案させ,プロジェクト化し研究の方向付けをしている。

 一方,研究成果を具体的に示すため,海外との共同研究や実験などにより,研究成果のデモンストレーションや実証評価などもしている。

 研究評価については学術情報センターでは,一昨年は外部の委員からセンターの研究活動の評価をいただいた。さらに昨年は海外の著名な研究者に国際評価委員として研究評価をいただいた。今後は中間報告書の発行,必要に応じ外部の専門家を交えた専門的な研究会合や意見交換会を開催することを検討している。

写真:仏からの訪問研究者パスキィエ博士によるタイ大学院生へのネットワーク経由講義風景


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