アジア情報調査

 学術情報センターでは,平成7年度下期以来,国際交流基金アジアセンターから研究助成を得て「アジア・スーパーハイウェイ上のアジア情報」(研究代表者:小野欽司)と題する調査研究を行っている。これは継続中の科学研究費国際共同研究「学術情報の国際交換に関する実証研究」(研究代表者:小野欽司)のタイ・プロジェクトなどと連携する活動である。アジアセンター助成研究は,センター内では「アジア情報調査」と略称しており,平成7年度の成果については本誌第36号に報じている。

 第一年次完了段階(96年3月)には,第二年次の重点として方法論的な洗練を掲げていた。当センターは平成8年度には外部評価,十周年記念行事,新館建築などのさまざまな事業があり,また,所内的にも事務処理上,忙殺される状況が続き,さらに担当者が異動したりしたため,年度途中では,果たしてこの調査研究活動が継続できるかどうか危ぶまれたほどであった。このような状況こそが以下の成果よりは今年度の特色を成すといってもよいほど,厳しい制約の中で方法論上の経験として大きな集積が進んだと言えよう。

第二年次である平成8年度は下記6項目のサブテーマで調査活動を進めた。下記に(継続)とあるものは7年度の実質6か月間の活動の中で着手または提案されたものである。

(1)日本におけるアジア各国研究者に関する調査(継続)

(2)アジアにおける日本研究者の情報需要に関する調査(新規)

(3)タイにおける日本研究者および図書館職員に対する研修(新規)

(4)NACSIS-IRおよび文献複写利用に関するモニターの実施(継続)

(5)タイにおける日本語資料総合目録の構築に関わる調査(新規)

(6)ネットワーク上でのタイ語関連情報に関わる調査(継続)

 以上のうち,(2)アジアにおける日本研究者の情報需要調査では,アセアン諸国をはじめとする日本研究者の会合に参加して,NACSIS-IR のデモンストレーションと日本情報に対する要望を聞き取り調査した(本号次項参照)。

 (3)タイにおける研修では97年1月にバンコクのチュラロンコン大学,タマサート大学および国際交流基金日本文化センターにおいて「地域講習会」を開催した(39号pp. 14-15, http://www.nacsis.ac.jp/topics/thai97-j.html 参照)。この講習会において(4)NACSIS-IRおよび文献複写利用に関するモニターを委嘱し,96,97年度に利用実験を行っており,すでにNACSIS-ILL参加図書館の協力を得ている。これに引き続き97年3月には科学研究費(研究代表者:小野欽司研究開発部長の「タイ・プロジェクト」)の支援を得て,タイから専門家8名を招聘し,当センターにおけるCAT, IR, ILL, ELS などの講習会を踏まえて意見交換した(本号34頁,http://www.nacsis.ac.jp/hrd/HTML/News/Thai_9703.html 参照)。

 (5)タイにおける日本語資料総合目録の構築は,上記(3)の発展として推進しているもので,バンコク日本文化センターはNACSIS利用申請をするに至っている。

 (6)タイ語関連情報調査の成果である情報提供サーバ(http://thaigate.rd.nacsis.ac.jp/ )については本誌39号pp.18-19で報告した。すでに大量のアクセスがある。

 この調査研究は,引き続き平成9年度にも継続助成が認められている。国際交流基金をはじめ,関係方面の厚いご支援を賜ったことを記して感謝申し上げるとともに,なおいっそうのご助言・示唆をお願い申し上げる。


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