学術情報センターニュース 第38号 1/8

last update: 1996.12.25  [目次へ] [次へ]
創立10周年記念式典・祝賀会 盛会に祝う

 去る11月1日(金),本センタ−の創立10周年記念事業を,国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)において挙行しました。昭和61年4月に大学共同利用機関として創設されて以来,満10年を迎えたことを祝う記念事業として,式典と,記念講演会,祝賀会を開催しました。

 当日は,文部省,国公私立大学,大学共同利用機関などをはじめ,センターの事業に協力いただいている学会・協会,関係団体などからの代表者と,本センターの旧職員など関係者を含めて,全国から348名の出席をいただきました。
 記念式典では,猪瀬所長が式辞として創設以来からこれまでの,関係機関,関係者のご支援とご協力に対する心からの感謝とあわせて,これまでの情報通信基盤整備の取り組みを紹介するとともに,情報通信基盤の三大要因であるネットワーク,コンテンツ,アプリケーションに対する取り組みを進展させ,この10周年を契機として,目的達成へ新たな決意を述べました。
 次いで奥田幹生文部大臣の祝辞を,林田学術国際局長が代読し,「今後,マルチメディア化など高度情報化が進む中で,文部省としては,ネットワークの高度化,大容量化やデータベース作成の支援など学術情報システムの構築に一層の努力を傾注していく」との,お祝いの詞をいただきました。
 来賓として列席いただいた緒方信一郎国立国会図書館長の祝辞では,本センターとの協力関係が,我が国の図書館活動と学術情報サービスの発展に大きな成果をなしてきたと紹介されました。また,関西新館で計画中の電子図書館システムは,本センターとの連携と協力を一層進展させることになると述べられました。
 来賓の吉川弘之東京大学総長は,人類が持っている最大の問題は情報をいかに蓄積し,次世代に継承するかということではないかと述べられ,研究者は情報を作りだすばかりであるが,いかに保存し伝えていくかという仕事が,作る仕事と並行して,大いに重要であると紹介されました。情報の蓄積と伝達に関する研究開発を行い,同時にサービスも行うという本センターの重要な役割を進展させることへの今後の期待をかけた祝辞をいただきました。
 大学共同利用機関を代表して,佐々木高明国立民族学博物館長からの祝辞では,「今世紀の科学技術の進展なかでも情報通信手段の発達は,情報の大量蓄積とその選択的な入手を地球的規模で可能にする画期的な出来事でありました。本センターがこの10年間に整備された我が国最大のネットワークと,それを通じて提供される学術情報サービスは,国内の大学・研究所の研究活動を支える先導的役割を担ってきました。これに伴って国内の研究環境は著しく国際化されました。今後は,21世紀型の先端的情報拠点の構築に向けて,政・官・財の援助を期待する」という,本センターにとってこの上ない応援をいただきました。
 また,全国の国・公・私立の大学などから多数の祝電をいただきました。式典では限られた時間のために,すべての祝電を披露することはできませんでしたが,ここで,改めて厚くお礼申しあげます。

 式典終了後,祝賀会が開かれ,猪瀬所長の挨拶の後,天城勲(財)高等教育研究所理事長,中村守孝科学技術振興事業団理事長から祝辞をいただきました。佐藤禎一文部省大臣官房長,吉田政幸図書館情報大学長をはじめとする来賓の方々によって鏡開きを行い,大野公男本センター名誉教授の発声で乾杯した後,歓談となりました。

 この10周年記念事業の実施にあたり,文部省,大学,関係機関,学会・協会,企業,団体等から,多大なご支援とご協力を賜りまして,誠にありがとうございました。
 この場をかりて,厚くお礼申しあげます。

(総務課)


国際符号化文字集合(UCS)対応文字フォントの開発

1.経緯
 学術情報センターでは,将来的に中国語,韓国語,その他の言語をシステムで扱えるようにするために,国際符号化文字集合(UCS:Universal Multiple-Octet Coded Character Set)に対応した文字フォントの開発を行っている。
 NACSIS-CATデータベースは,大学図書館等で所蔵する図書,雑誌資料の目録データを収録している。それらの資料には世界中のあらゆる言語の資料が含まれるが,現在システムで扱える言語のものに限られている。すなわち,JISX0201およびJISX0208に加え,ドイツ語やフランス語などに現れるウムラウト,アクサンなどを独自の拡張文字セット(EXC文字セット)で定義し,使用しているのが現状である。
 しかし,次世代のデータベースとしてより広範囲な言語を扱うことができるように,UCSを標準としたシステム構築を検討することとした。一方,NACSIS-CATのユーザーである各大学図書館等のクライアント側システムも,UCS への対応を進めていただく必要がある。そこで,UCSを前提としたソフトウェア,FEPの開発を促進するためにも,学術情報センターでUCSフォントを作成,公開することとした。

2.UCSとは
 UCSとは,日本語,中国語などの漢字圏を含めた世界的に共通なコード体系の文字セットである。1993年に国際規格ISO/IEC10646-1として制定され,1995年1月にJISX0221として日本の規格に採用された。この規格で現在定義されているのは,基本多言語面(BMP:Basic Multilingual Plane)と呼ばれる部分の約3万6千文字である。そのうち,CJK統合漢字といわれる中国語,日本語,韓国語で使われる漢字を標準化した部分では,約2万1千字の漢字が定義されている。

3.フォントの仕様と利用方法
 (1)名称および書体:「NACSIS-UCS-min」,明朝体
 (2)フォントタイプ:Windows-NT用のTrueTypeフォーマットフォント
  (Windows95用TrueTypeフォント,Unix用のPSフォーマットフォントは準備中)
 (3)文字種:CJK統合漢字のほか,ラテン文字,ギリシャ文字,キリル文字,各種記号など約2万3千文字を収録
  (ハングル,その他の言語の部分は,平成8年度以降に開発する予定)
 (4)利用方法:NACSISホームページから利用可能(http://www.cat.op.nacsis.ac.jp/)

 詳細については,NACSISホームページを参照していただきたい。

(目録情報課)


超高速ネットワークの国際相互接続実証実験計画

学術情報センター研究開発部 浅野正一郎

1.GIIの実現に向けた国際協調
 先進国では情報通信基盤の整備が行われ,共に情報通信ネットワーク・コンテンツ・アプリケーションの3分野に対して各種の施策が払われている。これら整備の国際的な整合を図り,国際的な情報基盤(GII)を実現することを目標とした政策協調が1994年のナポリサミットで合意された。これを受けて,1995年2月にブラッセルでG7情報通信関係閣僚会合が開催され,「GIIの実現のための8原則」が採択された。これには,
 (1)ダイナミックな競争の促進
 (2)民間投資の奨励
 (3)適応可能な規制枠組みの定義
 (4)ネットワークへのオープンアクセス
 (5)サービスのユニバーサルな提供とアクセスの確保
 (6)市民に対する機会均等の促進
 (7)文化的および言語的多様性を含むコンテンツの多様性の促進
 (8)開発途上国に特に配慮した形での国際協力の必要性の認識
からなる。同時に「情報社会構築のための具体的政策課題(6方策)」に関しコンセンサスを得ている。ここには,
 (1)相互接続性と相互運用性の促進
 (2)ネットワーク,サービス,アプリケーションの世界市場の開拓
 (3)プライバシーとデータ・セキュリティの確保
 (4)知的所有権の保護
 (5)研究開発および新たなアプリケーションの開発に関する協力
 (6)情報社会の社会的な影響のモニタリング
が挙げられている。
 G7各国と欧州委員会は,これらの政策課題を具体的に進行するために,11のパイロット・プロジェクトを同時に採択した。これの選択にあたり,産業・学会・行政機関等の異なる参加者間の協力を奨励することや,情報社会の発展にあたり明確な付加価値を有することが配慮されている。以下は選択されたプロジェクトの一覧である。
 (1)グローバル・インベントリー
 (2)超高速ネットワークの国際相互接続
 (3)異文化間の訓練と教育
 (4)電子図書館
 (5)電子博物館・美術館
 (6)環境・天然資源の管理
 (7)国際的な緊急危機管理
 (8)国際的なヘルスケアのアプリケーション
 (9)オンライン政府
 (10)中小企業のための国際市場
 (11)海事情報システム
学術情報センターでは,項番(2)と(4)に日本として参加している。本稿では,特に「超高速ネットワークの国際相互接続(GIBN)」に係わる実証実験について説明している。

2.GIBN(Global Interoperability of Broadband Networks)計画の概要
 先項にも述べたとおり,G7各国と欧州委員会でGIBN計画が発足し,カナダ・日本が主導国となり実験を開始している。日本では学術情報ネットワークがATM方式による超高速ネットワークを運用しているが,カナダ(CANARIE),英国 (SuperJANET),米国(vBNS),欧州(EuropaNET)等で同様な運用が実施または計画されている。またCERNを中心に国際エネルギー研究ネットワークのATM化や,欧州連合のACTS計画のように超高速ネットワークのアプリケーション開発が進行している。GIBNは,これら先行している研究ネットワークを相互に接続し,相互接続性を検証すると同時に,各国で進められている超高速ネットワークに係わる技術開発成果を相互に利用することが目的となっている。期間は,当初は1997年3月を考えているが,延長が予定されている。
 残念ながら,GIBNには予算が無い。このために,国際接続に必要となる通信回線は国際通信事業者の無償援助によっている。日米間の回線は,KDDと米国AT&Tの協力で150Mb/sの回線が1996年9月から利用できる状況にあり,カナダ・ドイツ間にも別途の回線が設置されているが,これらの相互は接続できていない。
 これから設置予定の回線を利用する計画を含めて,現在GIBNには14計画が進行しており,日本が関係するのは5計画(その内一つは通信衛星を使用するもの)である。進行中の日米間実験は,
 (1)癌などの治療のための遠隔医療実証実験(参加機関:名古屋大学医学部,名古屋工業大学,郵政省通信総合研究所,米国デューク大学)
 (2)神経内科における遠隔医療実証実験(参加機関:九州大学医学部,産業医科大学,郵政省通信総合研究所,米国クリーブランド・クリニック財団)
 (3)遠隔研究協力実験(参加機関:金属材料研究所,理化学研究所,日本科学技術情報センター,米国ミシガン州立大学)
 (4)超高速ネットワークの品質制御に関する実証実験(参加機関:学術情報センター,NTT研究所,米国ウィスコンシン大学)
であり,学術情報センターが参加する計画は1996年10月8日の早朝から実験を開始している。
 学術情報センターでは,1993年から文部省科学研究費補助金(創成的基礎研究)により超高速ネットワーク技術の開発を学術情報センター・全国大学の研究者・ NTT研究所の共同研究として実施しているが,GIBNに参加する計画では,この研究開発成果を米国研究者に公開し,アプリケーションの開発に結び付けることを目的としている。具体的には,
 (1)現在のインターネットでは通信品質を積極的に制御することが困難であるが,ATM方式により,必要な通信帯域を確保し,アプリケーションが求める品質として実現する方式の実証(この基本技術は現在インターネット標準として提案している)
 (2)講義等の映像のマルチキャスト伝送にあたり,映像情報を分解し,個々の伝送容量に適合する量の転送を実現し,結果として映像伝送の可用性を向上する方式の実証。
 (3)これらの基本技術を用いて,映像サーバ(VoD)の国際利用の検証。
からなる。
 図には,現在の実証実験のための構成を示している。この構成の下で,今後は実証評価,性能評価並びに他の方式との総合比較を行いつつ,1997年1月に予定されているGIBN関係者会合等においてデモンストレーションを計画している。本計画は,日本の研究開発成果の国際的な提示が中心でもあり,総合的な評価を得るように努力を続ける所存である。


目録所在情報サービスおよび情報検索サービスの休止

 年末年始および目録所在情報サービスのデータベース移行作業に伴い,以下のとおり各サービスを休止しますので,ご了承ください。

目録所在情報サービス(NACSIS-CAT/NACSIS-ILL)
・データベース移行に伴う休止 平成8年12月24日(火)〜平成8年12月27日(金)
・年末年始 平成8年12月28日(土)〜平成9年1月6日(月)
情報検索サービス(NACSIS-IR)
・年末年始 平成8年12月28日(土)〜平成9年1月6日(月)
電子メールサービス(NACSIS-MAIL)
・年末年始のサービス休止はありません。
 目録所在情報サービスのデータベース移行に伴い,情報検索サービスのREQUESTコマンドの受け付けは,12月19日(木)までとなります。利用者のみなさまには大変ご迷惑をおかけいたしますが,あらかじめご了承ください。
 REQUESTコマンドを12月20日(金)から12月27日(金)の間に使用すると,
  「USER ERROR, NO SUCH COMMAND」
というメッセージが出力され,受け付けられません。
 なお,1月7日(火)からは通常どおりREQUESTコマンドを使用することができます。

(システム管理課)


[目次へ] [次へ]
[学術情報センター出版物のページへ] [NACSISホームページへ]
wwwadm@nacsis.ac.jp