トップ > NIIについて > 出版物・広報誌 > 情報研シリーズ > 16 > 情報研シリーズ16 著者からのメッセージ(1)

情報研シリーズ16「これも数学だった!? -カーナビ、路線図、SNS」<情報研シリーズ16(丸善ライブラリー)>
「これも数学だった!? -カーナビ、路線図、SNS」
河原林 健一 教授、田井中 麻都佳 氏(ライター)

携帯電話やカーナビ、電力需給、物流、プロ野球の対戦スケジュール、ソーシャルネットワーク(SNS)、さらには結婚問題に至るまで、じつにさまざまな分野に離散数学が応用されています。本書では、「離散数学」とその周辺の学問について、それがどんな学問で、どんな考え方の上に成り立っていて、私たちの生活にどれほど役に立っているのかということをわかりやすく伝えます。またそうすることで、離散数学的なモノの見方に触れていただきたいと思います。


(著者プロフィール)
河原林 健一 (かわらばやし けんいち)

国立情報学研究所ビッグデータ数理国際センター長。2001年慶應義塾大学理工学部博士課程修了(理学博士)。東北大学情報学研究科助手、国立情報学研究所助教授を経て、2009年より国立情報学研究所教授。2012年よりJST ETRO「河原林巨大グラフ」プロジェクト研究総括、および現職。専門分野は、数学分野の「離散数学」、「コンピューターサイエンス分野の「アルゴリズム」、そして「ネットワーク」を扱う学問すべて。



  「河原林巨大グラフプロジェクト」について

 この本の企画が始まったのは、2010年の夏に私が国立情報学研究所の市民講座を行った直後だったと記憶しています。本来であれば2011年度中に本書は出版されるはずだったのですが、私の作業が遅々として進まなかったため、本書に関わった関係者に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。

 少しだけ言い訳をすると、この2年間で私を取り巻く環境が激変しました。2011年までは、個人的な興味から研究を行い、世界最先端の成果を出そうとだけ考えていました。しかし2012年にJST ERATOに私の研究領域が採択され、国立情報学研究所に私の研究センターを設置することになりました。ERATO(戦略的創造研究推進事業)とは、JST((独)科学技術振興機構)が、5年強にわたって最大12億円の資金を、10年後、15年後に新たな科学の源流を生み出す研究にサポートする制度です。またERATOは国内最大級の研究資金です。ERATOの仕事は予想以上に大変で、本書製作の最終段階では大半の時間をERATO運営に割かなければなりませんでした。

 本書の目的を端的に表現すると、現代社会に溢ふれる大量の「情報」を数学的に扱う思考を紹介することです。残念ながら日本では、数学的なセンスをもつ人材が最先端のIT企業で活躍する場が多くありませんし、またこのような人材への評価もそれほど高くありません。しかしながらGoogle, Yahoo!, Microsoft, eBayなど今をときめく巨大IT企業は、自前で「研究所」をもち、最先端の数学的理論研究を行う研究者を多数雇用しています。彼らは、上記のIT企業で、情報分析、そして製品開発において決定的役割を果たしてきました。
私のERATOプロジェクト(「河原林巨大グラフプロジェクト」)では、理論研究者が最先端のIT企業で重要な役割を果たしている例にならい、巨大ネットワーク解析における理論研究の重要性を世界に強く発信することを最終的な目標としています。現状では、数学的センスを持つ人材のポテンシャルを生かし切れていません。私のプロジェクトでは、このポテンシャルを最大限引き出し、日本の産業発展に寄与する人材を輩出したいと思います。また数学的な思考に基づく社会システムの効率化は、多くの場合において可能だと思っています。<例えば,私の研究の一部が「プロ野球日程を瞬時に計算 数学者がソフトを開発」という見出しで、朝日新聞(平成25年3月16日)に紹介されました。残念ながらこのソフトは採択されませんでしたが・・・。>

 このように数学的センスを持つ人材が社会貢献できる場はいくらでもあると思います。私のプロジェクトでは、数学的「社会貢献」も数多く実現したいと考えています。


  「ハナ」と「サクラ」について

 この本の表紙の素敵な猫のイラストは、イラストレーターで、「猫ストーカー」の浅生ハルミンさんの作品です。なぜ数学の本に猫?と思われるかもしれませんが、実は私もライターの田井中さんも猫が大好きで、インタビューの合間にも猫の話題がたびたび登場しました。そのため、猫のイラストがあふれる本になったのではと思います。猫が嫌いな方には、多少?不快に感じることもあるかと思いますが、猫は不思議な魅力をもっているのですよ!
私は猫を2匹(「ハナ」と「サクラ」)飼っているのですが、ライバル関係にある年上の猫には、心の「緊張」をもらい、友好関係にある年下の猫には心の「安らぎ」をもらっています! 2匹とも私にはかけがえのない存在です!また猫は,人間よりはるかに優れている点が多いのですよ!

以下に、猫にあって私に足りない?能力を列挙します。
1.グルメである。(一度、値段が高いごはんをあげると、安いものを食べません!)
2.どうやっておいしいご飯をもらうか知っている。(ライバル関係にある猫は、自分がほしい「おいしい」ご飯が出るまで、餌の入っている引き出しの前で待ち続け、すごい「眼光」で睨みつけてきます!)
3.目覚ましが鳴る15分前!に起こしに来る!(目覚ましの鳴る時間を変えても必ず15分前くらいに起こしに来ます!)4.どうすればかまってもらえるかわかっています。(後ろからそっとやってきてふくらはぎに「すりすり」したり、夏には、「ぺろり」となめてきます!)
こんな可愛い猫は、夏になると私のT-シャツに現れます!(10着以上あるのですよ!)

表紙の猫と一緒に毛糸で遊んでいる? 数学を考えている?人は、私かもしれません。(本文P26をご覧ください。)


(河原林 健一)

 

情報研シリーズ16  [ TOP ] [  ] [  ] [  ]


お問合せ先
国立情報学研究所 総務企画課 広報チーム Tel:03−4212−2145、E-mail: