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杉山 智章(すぎやま ともあき/静岡大学附属図書館)

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静岡大学

静岡大学は、平成19年度に国立情報学研究所のCSI委託事業に採択され、機関リポジトリ構築が実質的にスタートしました。国立大学では後発のグループに入るのではないかと思います。2008年3月には「未来を拓く静岡大学 —ビジョンと戦略—」に機関リポジトリについて、大学の戦略上の事業として図書館が運用することが明記されました。そして2008年4月1日に、静岡大学学術リポジトリ(SURE: Shizuoka University REpository)(以下、SURE)を正式公開しました。その間の準備でとくに重点を置いたのは、学内の研究者にいかにリポジトリを知ってもらい賛同してもらうかでした。各部局の教授会に図書館長、図書館員が出向いて説明したり、学科や講座の会議、個人研究室への説明など、さまざまな規模で直接説明を行いました。そこで研究者から寄せられた疑問や要望は館内に持ち帰り、ブレインストーミングを繰り返し、答えられるものについてはひとつひとつ対応していきました。

静岡大学のリポジトリに対する基本は「リポジトリは生き物である」という考えです。機関リポジトリは研究・教育成果を公開する研究者と、運営を担当する図書館が対話しながら育てていくものです。そこでの主役はあくまで成果を公開する研究者です。図書館の役割はリポジトリを、第一に研究者にとってカレントで主要な成果物を登録してもらえる信頼あるものに、そして第二にリポジトリの利用者にとってもユーザフレンドリで信用あるものにすることです。


2010年6月末現在、静岡大学の現職教員約53%の方がSUREで1件以上の成果を公開しています。コンテンツ1件につき、提供者1人でカウントしているため、提供者以外の共著者はカウントしていません。紀要の電子化や登録の義務化にほとんど取り組んでいない状況で、過半数の教員の方に実際に成果をリポジトリに公開いただいています。このことに、これまでのSUREの活動が学内に広く認められはじめているのではないか、という手ごたえを感じています。学術雑誌論文や紀要論文を公開された先生には、SURE登録のお願いをメールで差し上げています。すでに全著作のSURE公開の包括許諾をいただいている先生にも、毎回連絡を取るようにしています。日ごろから研究者ひとりひとりにコンタクトし、生の声に耳を傾けることが重要であると考えているからです。それが「生き物」であるリポジトリを世話することであり、より活きたリポジトリとなるエネルギー源になっています。このような図書館からの登録依頼に、先生から最近よくいただく返事は「もちろんです。」という言葉です。より多くの研究者にそう言ってもらえるよう、SUREが研究者にとっても、大学にとっても、よりSURE(確か)なものになるよう、日々の活動を積み重ねています。

機関リポジトリを活きたものにするには、制度的な問題の解決だけでは不十分で、いかに運営する側が研究者ひとりひとりにコミットし続けられるかということのほうが、はるかに重要なことのように思います。機関リポジトリは、大学図書館がいかに機関にふさわしい研究支援、学術情報サービスを提供できるかといったテーマの試金石にもなっているのではないでしょうか。


リポジトリに登録されているコンテンツの中には、他サイトでも同じ内容のものがフリーでアクセスできるものもあります。オープンアクセス化された学術雑誌論文などです。最近、そのようなコンテンツをリポジトリにも登録する意義を図書館内の館長以下担当で話し合いました。機関リポジトリには、電子ジャーナルのプラットフォームにはない多機能性や柔軟性があります。ジャーナルや出版者を越えて、またタイプの異なる資料を横断的に見せることが可能です。そのリポジトリの長所を生かし、研究者の「人」に注目して、主要な成果をより強調して見せるような仕組みを作っていこうと思います。

「repository」という語には、納骨所という意味もあるそうですが、決して論文の墓場になってはいけません。SUREが静岡大学と静岡大学の研究者にとって、いろいろな見せ方ができる、開かれた「窓」の役割を果たすようになることを目指しています。

広島大学共同リポジトリ