![活動状況[ イベント参加報告 ]
Society for Integrative and Comparative Biologyの年次大会に参加して](img/5_katudou1_title.jpg)
永井 裕子(ながい ゆうこ/社団法人 日本動物学会 事務局長・UniBio Press 代表)
米国シアトルでのSICB大会

Society for Integrative and Comparative Biology(以後SICB)は、かつては、The American Society of Zoologistsという名前の学会であったが、1996年に現在の名前に学会名を変更した。またそれに伴い、American Zoologistというジャ−ナルもIntegrative and Comparative Biologyとその名称を変え、現在はOxford University Press から、ジャーナルは出版されている。つまりは、SICBは米国動物学会であり、会員数およそ2400名というのも、奇しくも、日本動物学会会員数とほぼ匹敵する学会である。
私は、2010年のSICB年次大会で、UniBio Press ジャーナル6誌の宣伝活動を行うために、2010年1月2日から、米国シアトルでのSICB大会に参加した。SPARC Japanから渡航費用を含め、その半分の支援を受けた。私はSICBにかねてより参加を希望していた。それは、SICBにはUniBioジャーナルにとって、優良な投稿者となる研究者が会するからであり、著者になるかもしれない研究者へのプロモ−ションは日本の学会が行うべき大事な活動であるからだ。しかし、予算等の問題で、難しい点は否めない。ブ−ス使用料は、非営利団体は3日間で¥250(営利団体は¥900)という低価格であった。
展示に際しては、「日本の生物系ジャ−ナルをどれかこの中で知っていますか」「SPARC活動を知っていますか」「ジャ−ナルに投稿する時は何を基準に選びますか」などを積極的に聞いてみた。3日間でおよそ150名以上の研究者または学生さんと話をしたが.日本の学術誌はどう見られているか。という点に絞って、その代表的な意見を列挙してみる。
- ここにあるジャ−ナルは英語で書かれているのか?
- よく知っているジャ−ナルはあるが、どこで公開されているのかわからない。
BioOneだと説明すると
- BioOneを大学で購読しているのに、わからなかった。なんということだ。
- 共同研究を行っている研究者が、編集委員をしていることもあって、よく読んでいる。
私も論文をこのジャ−ナルに投稿したことがある。
- 日本には自分が扱っている特殊な生物(まむし)がいるので、たくさんの論文を読みたいのだが、多くは日本語で書かれていて読むことができない。しかし、このジャ−ナルは大きな拠り所だ。英語で書かれているから。
- 昨日、もらったエコバックに印刷されていたジャ−ナルに研究室でアクセスしてみたら、購読していたようで、論文が読めた。今まで日本にこんなおもしろい論文を掲載しているジャ−ナルがあることは知らなかった、ありがとう。
- 日本の学術誌には興味はあるが、相対的にIFが低い。韓国では、IFが高い雑誌に論文が掲載されることが重要で、日本のジャ−ナルには投稿しにくい。
- 日本の学術誌という特別な意識はないが、ここにあるジャ−ナルは知らない。
- 日本人研究者の論文は読むことが多い。しかし、読んでいたジャ−ナルが日本のジャ−ナルかどうかは、私はわからない。
UniBioジャ−ナルを知っていると直接言われたことは、大変嬉しいことではあったが、各学会はBioOneでジャ−ナルを公開しているなどを積極的に宣伝する必要性を感じた。パッケ−ジ販売が基本となっている現在、研究者は投稿する折は、そのジャーナルの知名度やIFが重要であるが、論文単位で読まれるようになったジャ−ナルは、今まで知名度が低いジャ−ナルであればあるほど、読者に名前を知らしめ、投稿を促すためには、かなりの努力をする必要があると言える。フリ−でジャーナルを公開していることが、ジャ−ナルの知名度を上げるという考え方はもはや神話のような時代となっており、埋もれている自分をどう目立たせるのかということが、日本のジャーナルにとってもっとも重要な課題であるようにも思えた。最後に、SICB年次大会への参加が実現したことに対して、SPARC Japanに御礼申し上げたい。ここで得た情報と経験を今後のジャ−ナル出版に役立てたいと考える。また、古い伝統に支えられた日本動物学会が、日本の生物系ジャ−ナルのために、それは自らのジャ−ナルのためでもあるが、動物学会が費用の半分を負担し、是非参加して来るようにと理事が決断を下したことに、私は、自らの勤務する学会ではあるが、合わせて感謝を申し上げたい。

米国シアトルでのSICB大会

平成22年3月9日(火)に、平成15年度のSPARC Japan発足時から運営委員として関わり、平成18年度からは委員長を務めている根岸正光教授の退職記念講演会が開催されました。テーマは、平成20年度第6回SPARC Japanセミナー「研究評価・雑誌評価のためのビブリオメトリックス指標:現状と課題」の続編で、Impact Factorを調整した新たな指標:IDV(Impact Deviation Value,インパクト・ファクター偏差値)を提案する内容でした。さらに詳細は、情報知識学会 第18回(2010年度)年次大会 (2010年5月15〜16日、東京大学本郷キャンパス工学部2号館)で報告予定です。(http://www.jsik.jp)

日程 |
内容 |
2010年 |
6月23日(水) |
第1回 SPARC Japanセミナー2010 「学会の仕事とその経営を知る」 |
8月 |
第2回 SPARC Japanセミナー2010 「図書館はEJをどう提供しているか」 |
9月16日(木) |
第3回 SPARC Japanセミナー2010 「数学系ジャーナルについて」(RIMS研究集会) |
9月24日(金) |
第4回 SPARC Japanセミナー2010 「10年先のジャ−ナル出版を見据えて」(第81回日本動物学会大会) |
10月 |
第5回 SPARC Japanセミナー2010 「日本発オープンアクセス」
Open Access Week(10/18〜10/24) |
11月 |
第6回 SPARC Japanセミナー2010 「Harvard大学OA義務化の状況」(図書館総合展) |
2011年 |
1月 |
第7回 SPARC Japanセミナー2010「著者IDの動向」 |
※ SPARC Japanのサイトで最新のイベント情報を確認できます。(http://www.nii.ac.jp/sparc/event/) |