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トピック3
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尾崎 文代(おざき ふみよ/広島大学図書館企画調整(兼)学術情報リポジトリ主担当)

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広島大学

広島大学には、「わがリポジトリ」と呼べる機関リポジトリが二つあります。

一つは「広島大学学術情報リポジトリ(HiR:Hiroshima University Institutional Repository)」。広島大学の研究成果を蓄積・公開する機関リポジトリです。もう一つは「広島県大学共同リポジトリ」。愛称をHARP(Hiroshima Associated Repository Portal)といい、広島県大学図書館協議会加盟館が共同で運営をしている共同リポジトリです。広島大学は同協議会の代表幹事館としてその管理運営にあたっています。

HARPは、HiRが本稼動を始めた2006年10月、広島県内の8大学により、県内で一つのリポジトリを共同運営するための実験プロジェクトとしてスタートしました。発足当初、国内では十数の大学で機関リポジトリが運営されていたに過ぎず、また、実験を持ちかけた広島大学のリポジトリも、本稼動を始めたばかりで軌道に乗っているとは言えませんでした。このような状況下、中小規模機関での共同運営が本当に可能なのか、広島大学も参加大学も、雲をつかむような気持ちで始めた実験であったとも言えます。

しかしその後、実務研修やソフトウェアの検討を繰り返してノウハウを蓄積し、運営体制の方も、有志の実験プロジェクトから2007年7月に広島県大学図書館協議会の正式事業として進展・確立したのち、2008年4月に県内11大学の参加で正式公開に至りました。現在は12大学が参加して運用を行っています。

機関リポジトリの共同構築は、技術・費用を共有することで自力構築困難な中小規模機関のリポジトリ構築を可能にし、オープンアクセスの裾野拡大に有効であると考えられています。技術やノウハウの普及により、年々、機関リポジトリ構築の敷居は下がってきていますが、2006年当時にHARPの構築が実現する要因となったものは、技術・費用の共有はもちろんのこと、予算や人員削減の厳しい状況下であるからこそ新しい事業に挑戦し目標を見つけようという、県内大学の前向きな姿勢であったと思います。勉強会からスタートしたHARPでは、現在も定期的に勉強会を開催して情報共有および相互連携を深めています。そして、この勉強会こそが、HARPの基盤を形成し継続運用へと導く原動力となっているのです。

広島大学はHARPのサポーター的立場にありますが、広島大学にとってHARPに関わることは、共同リポジトリの運営という新しい課題のみならず、機関リポジトリそのものの運営課題を解決するスキルの取得にもつながっています。さらに、これらのスキルは、自機関のリポジトリHiRの運営にも活かされており、二つのリポジトリは向上し合う相互関係にあると言えます。

このHARPの成果に基づき、2008年からスタートした共同リポジトリプロジェクト(愛称ShaRe:国立情報学研究所CSI委託事業代表機関:広島大学)では、複数の大学と連携し、共同リポジトリのシステム面・運営面での課題解決と担当者育成を行うことで、国内への普及を図る活動を行っています。2010年現在、国内で稼働している共同リポジトリは、山形・新潟・埼玉・福井・岡山・広島・山口・沖縄の8県域にのぼり、構築を検討する地域も増加しつつあります。これらの共同リポジトリが中小規模機関の研究成果公開に占める割合は極めて高く、運用中の機関リポジトリのうち、公・私立大学では約半数、短大・高専はほぼ100%が共同リポジトリの参加機関となっています。

共同リポジトリは、その構築を核として、学術機関の地域連携の強化および、地域のコミュニティ活動の活性化に貢献していると言えます。今後、技術の進歩により共同リポジトリの形式も多様化していくものと予想されますが、機関リポジトリの持続的な運用に、地域レベルのコミュニティ活動が欠かせないものであることに変わりはないと考えています。

わたしたちは、この「わたしたちのリポジトリ」の輪を、これからも拡げていきたいと思っています。

広島大学共同リポジトリ