SPARC Japan NewsLetter No.14 コンテンツ特集記事トピックス活動報告
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SPARC Japanに参画して 「日本アレルギー学会からの報告」

武田 敏子(たけだ としこ)
一般社団法人 日本アレルギー学会 英文誌編集担当

 

 

Allergology International

筆者が編集を担当する Allergology International(AI)誌は、臨床医学系分野からは SPARC Japan パートナー誌に唯一選定されている雑誌である。

● 日本アレルギー学会の概要

まず、当学会についてその概要を紹介したい。会員はアレルギーおよび臨床免疫を共通テーマとする基礎医学者、臨床医より構成されている。臨床医を専門科目別に分けると、内科、小児科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科となる。20~30年前より始まったスギ花粉症等アレルギー疾患患者の爆発的増加という状況を反映して、会員総数は昨年、10,000名を突破した。最近の顕著な活動としては、社会的問題となった「茶のしずく」石鹸による皮膚アレルギーおよび小麦関連アレルギー疾患発症について、患者、医療従事者、一般国民向けに、正確な情報提供に努めるなどの動きがある。

● SPARC Japan 参画以降のAIの変化

AI が SPARC Japan のパートナー誌として選定されたのは2004年であるが、それを契機に AI は変革、発展をとげた。もともとは1996年から海外の商業出版社を通して出版していたが、2005年に契約を打ち切り、学会が直接出版することになった。その頃、オンラインジャーナルのプラットフォームについても、自営サーバを立ち上げ、オープンアクセスとした。AI は2006年に MEDLINE に収録され、それ以後被引用数が順調にのび、2012年には Web of Science への収録も決まった。AI にとっては、念願のインパクトファクター(IF)の数値が、2015年に発表される予定である。SPARC Japan への参画が、自律的なジャーナル経営への変革をもたらしたといってよい。

実は、AI は創刊から4年を経過した2000年から「投稿数減少→認知度低下→投稿数減少」の悪循環に陥っていた。医学系雑誌の出版経験が豊富な海外大手出版社に AI 出版を全面委託し、こちらはその出版社からの認知度アップのための提案をひたすら待ち続けていたが、結局はこちらの一方的期待に終わったのである。

現在、AI 誌の印刷、ならびに自営サーバの構築、運営については、株式会社杏林舎にご協力をいただいている。さらに、オンラインジャーナルのバックナンバー(1994年から2004年分)が整備できたことは、SPARC Japan 支援事業の成果である。

世界のアレルギー研究分野では The Journal of Allergy and Clinical Immunology(USA)や Allergy(Germany)などが、常に IF が上位にある雑誌としてあげられる。また、韓国アレルギー学会は、Allergy, Asthma & Immu­nology Research を2009年に創刊し、2011年にはすでに IF 1.91が発表された。東南アジアや中東でもアレルギー疾患の研究は盛んであり、世界で20誌あまりの雑誌がひしめきあい、競合している。

● SPARC Japan セミナーへの参加

SPARC Japan セミナーでは、日本の学術誌が抱える編集実務レベルの問題点、あるいは海外での先端的な取り組みが報告されたり、将来のあり方を探るセッションが開かれたりもする。筆者は、毎回のセミナーを楽しみに参加している。適切なトピックと講師の選定などから企画者の皆さんの創意と熱意が伝わってくるからだ(たとえば、2004年10月19日開催の緊急シンポジウム「どうする!日本の学術誌」)。最近ではこのセミナーは、学会誌の編集担当者だけではなく、研究者、図書館、海外の出版社、印刷などの業界関係者が、それぞれの視点から学術誌を論ずる貴重な場所としての広がりをもみせている。我々編集担当者は各職場で一人で業務を抱えている場合が多いが、このセミナーのような種々の問題を多角的に共有しあう場があることは心強い。

末尾ながら、ここで紹介した AI の変革を主導したのは、Allergology International 編集委員長 斎藤博久先生((独)国立成育医療研究センター副研究所長)であることを付け加えておく。