国立情報学研究所 研究成果発表・一般公開 オープンハウス2016

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NIIオープンハウス2016
レポート

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ご挨拶・活動報告

「NIIの今」

喜連川 優[国立情報学研究所長]

先日5月25日、SINET5開通式ということでちょっとキュートな式典を行いました。NIIは、2016年4月、学術情報ネットワーク(SINET5)を北海道から沖縄まで国内すべてのネットワークを100Gbpsにしました。日本にとって今重要なことは、地方が元気になることだと考えています。それをいかに実現するかが国家にとって大きな課題です。アメリカのスマートシティ政策では人口の6~7割が都市部に動くといわれています。これからの地球は生活、仕事、教育、医療などを、都市を中心に考えるという世の中の動きです。一方で限界集落という言葉もあります。都市として機能するには小さすぎるが、その土地に強い愛着をもって住みたいと思う方もおられる。東京都も大阪府も京都府も予算を持っており、企業が集まり機能が蓄えられますが、我々が考えなければならないのは、熊本のように住みたくても住めなくなっている、ギリシアのように西ドイツに動いてしまう、という状況です。こういった状況においてこれからは何が重要になってくるでしょうか。ネットワークのインフラストラクチャであると考えます。ネットワークなしに社会は機能しえません。国家のパワーは、ネットワークのインフラをどれだけロバストに持っているか、ということです。 世界全体のトラフィックボリュームは急増しています。日本は平成18年度にNIIが40Gbpsのネットワークサービスを世界に先駆けて構築しましたが、その後、欧州や米国が追従し100Gbpsを開始するなど遅れをとってきました。そして今年、とうとうSINET5にて100Gbsp化を実現することができました。世界各国にある大きな実験施設を大きな帯域で直結することができました。国立大学協会、日本学術会議、文部科学省 学術情報委員会など広く学術コミュニティからのご支援をいただいた結果です。多方面からのお力添えで100Gbsp化が実現しました。

このような大きなネットワークはビッグサイエンスがドライブすると考えています。新しいサイエンスが新たな世界をクリエイトしていく力となり、そして新たなネットワーク需要への対応が望まれます。我々はネットワークという土管を強くするほか、クラウドやセキュリティという問題についても一歩一歩進めているところです。大学も今後クラウドの利用が増加することを考えると、大学の外のリソースに接続するためのトラフィックを支えるのがSINETの役割です。そしてセキュリティが一番悩ましい問題です。最新鋭のシステムを導入し、NIIは全体を俯瞰した攻撃検知を行い、大学等と連動し、より高度でレジリエントな体制を作っていきたいと思います。そしてサイバーセキュリティの人材育成についても、NIIがご支援できるのではないかと考えています。 ネットワークは非常に多くのサイエンスにおけるすべてのトラフィックを支えています。講堂前で8映像のデモも行っていますが、圧倒的なクオリティです。こういったものを例えば医学カンファレンスにおいて利用することで、遠隔とは思えないその場にいるような臨場感が実現できます。ネットワークで距離をなくすという時代です。これから何ができるのか。100GbpsのSINETアイデアソンのようなものを考えられればと思います。NIIとともに新たな世界をご体感いただきたいと思います。

さて、最近のITの動きではThird Platformなるものが言われていますが、アカデミアにとってのThird Platformはオープンサイエンスなのではないかと考えます。サイエンスのすべてのプロセスをいかにIT化していくか。サイエンス自身をオープンにすることにより、イノベーションの加速化、研究開発投資の効率化、研究成果の再現性担保、科学技術外交など多様な目的が達せられるのではと思います。オープンネスの背景には、公的資金の成果は当然オープンであるという考えや、研究費が途絶えた瞬間に散逸する研究データの問題などがあります。今まで対象となっていたのは論文でしたが、そのエビデンスとなる研究データをどう担保するか、このフレームワークをどうデザインするかにあります。NIIはJAIRO Cloudという機関リポジトリシステムを提供しています。CiNiiといった論文サービスや識別子など融合して、データのアクセシビリティを高める、そんな世界を描きたいと思っております。 NIIは新たなセンターを立ち上げました。一つは「サイバーセキュリティ研究開発センター」。従来切り離して対応していた対応策から、コンティニュイティを維持した対応が求められています。SINET5における実用化へ向け、皆さまと一緒に作っていきたいと思います。そして産業界とともに2つのセンターを設置しました。三井住友アセットマネジメントと共同で「金融スマートデータ研究センター」を設立しました。いわゆるフィンテックといわれるもので、金融の世界を垣間見ることは、大学の先生は経験がありません。非常に多様な情報を短い時間で判断するということはITにとってはエキサイティングな世界であり面白さがあると思います。もう一つは「コグニティブ・イノベーションセンター」です。この領域で面白いことができないかということでIBMさんからのご支援の中で行っているものです。研究所の中だけではわからない現場のアイデアを、リテイル、トランスポーテション、エナジーなどさまざまな企業にご参加いただき、どれだけテクノロジーが展開可能かを探ります。

オープンハウスでもポスター展示をしていますが、それぞれの研究者はますます元気に活躍をしています。今後ともぜひご支援のほどをよろしくお願いします。

活動報告を行う喜連川所長 活動報告を行う喜連川所長

基調講演

「AIと自動運転の展望と課題」

古井 貞煕 [President, Toyota Technological Institute at Chicago / 東京工業大学名誉教授]
講演映像(YouTube)

TTIC
Toyota Technological Institute at Chicago(TTIC)は、アメリカ・シカゴの南に位置する大学で、コンピュータサイエンスの基礎および情報技術の分野、とくに人工知能・機械学習における研究教育を通じ人類に貢献するというミッションのもとトヨタ自動車の寄付により運営されています。TTICの学生は、授業料が無料で生活費が支給されます。博士のエリート教育に集中し、世界トップレベルの教員が、次世代のコンピュータ科学と情報技術のリーダーを育成しています。

深層学習(DNN)による人工知能(AI)の急速な進歩
人工知能の研究は、統計的学習理論や深層学習による機械学習の理論と、自然言語処理、音声処理、映像・画像処理、ロボット、車の自動運転などの機械学習理論の応用で構成されます。私は音声認識が専門ですが、音声認識は人工知能、機械学習をけん引してきた重要な分野のひとつです。音声を何らかの数値に変換し、その数値をコンピュータに入力し、もっともらしい文章を出してくるというのが音声認識の原理です。音声認識のいろいろなところにディープニューラルネットワーク(DNN)が使われていますが、DNNを音のモデルに使うということで始まりました。Microsoftが発表したDNNによる音声認識は大きなセンセーショナルを呼び起こしました。音のモデルの出現確率をDNNで計算させ、識別のトレーニングをすることで各段に音声認識の性能が向上しました。複雑な非線形処理が実現できる点、ビッグデータにより入力から目標出力までのプロセスを全体として最適化することができる点、表現学習(特徴抽出)が自動的にできる点、膨大なデータを用いたロバストな学習ができる点においてDNNが有効であるといえます。DNNと称するネットワークのいろいろな構造には、自己符号化器、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、CLDNNなどがあります。音声認識技術は、確率モデルと機械学習により進歩していますが、多様なアプリケーションも展開してはいますが解決すべき課題も多くあります。
画像認識の進歩は、限られたタスクの中においては人間よりも画像認識が高いものもあります。最近の面白い話題として、画像への自動キャプション付与という話があります。画像から、「赤い色をしている」「道路の標識がある」「STOPという文字がある」といったことが認識されます。この言葉をもっともらしく文法に合うように文章を構築することもでき、言語的な意味と画像が持つ意味の関係ができるだけ近くなるような文章で、画像の持つ意味をテキストで解説するということもできるようになってきています。

AIの最近の進歩の特徴
従来のコンピュータは、人間がプログラムやデータの内容を与えなければなりませんでしたが、最近では機械学習によりデータの内容を自動的に理解し、適切な行動をするようになってきました。深層学習、強化学習などの機械学習のアルゴリズムと、コンピュータとネットワークの進歩に支えられたデータ処理量の急激な増大(ビッグデータ)がそれを支えています。Googleが世界中の本をスキャンしているのは、コンピュータに読ませるためです。Googleや主要大学は、人間の生体情報や遺伝子情報を収集・解析し、病気の早期発見・治療に役立てる研究を始めています。データや知識に基づく判断は、人間よりコンピュータの方が性能が高くなります。

スマートロボット
車を含め、身の回りのすべてがスマートフォンで相互につながり(IoT)、制御されるようになります(ロボット化)。AIと組み合わせた次世代ロボットの開発が、シリコンバレーの新たな潮流です。自動運転車やお掃除ロボットなどがあげられます。製造プロセスを導く情報の費用を含め、製品のコストのかなりの部分が情報(ソフトウェア)が占めます。それから自動運転車は川下にあるすべての産業へ波及していきます。トヨタ自動車が今年1月に米国に設立したToyota Research Institute(TRI)は、AI技術の研究開発を行う研究会社です。事故を起こさない車の実現、車の安全性向上といった目標に向けて研究を始めています。

自動運転のインパクトと課題
自動運転はさまざまなレベルがあります。自動運転の技術は、センサー、測位技術、外部連携、認識・判断(AI)、エンジン、ブレーキ、ハンドル制御、フェイルセーフ、ユーザインタフェースが必要です。自動運転には、誰もが運転でき、乗り心地が向上し、車が移動するパーソナル空間になるといった利点があります。交通面では、交通事故が減る、交通量制御ができる、カーシェアリングにより自動車数が削減できるといった点があげられます。社会的な利点としては物理的な駐車スペースが削減できる、車両盗難が減るなども考えられます。自動運転車は世の中の仕組みを変えるともいえます。日本がこの変化を主導できるかどうかが日本の未来の鍵であると思います。一方で、技術的課題、トラブルへの懸念、制度上の問題、社会的影響といった自動運転の課題もあります。

AIの今後の展望
AIの登場は、一種の人間の能力の拡張を行っており、人の能力を凌駕するAIシステムがこれからどんどん出てきます。人の脳に近いAGI(Artificial General Intelligence)が開発されたり、AIが市場を出し抜き、発明、特許取得で人間の研究者を圧倒し、大衆操作で人間のリーダーを上回ることになるかもしれません。概して人間にとって難しいこと(推論)はAIにとって簡単で、人間に簡単なこと(知覚や行動)はAIにとって難しい。何が得意で何が不得意を見極め、それをどうしていくのかがこれからの研究かと思います。

技術的特異点 Singularity
「コンピュータが人類の知性を超えるとき」遺伝学、ナノテク、AIで社会が大きく変わる。AIは自分で進化するようになり指数関数的に発展し、2045年にはAIが人類全体の知能を追い抜く「人工超知能(Artificial Super Intelligence)」が登場するといわれています。AIと人の知能が結び付くことにより人類の生活が変容していきます。AIにできない判断力、創造力を持てるか、AIをどれだけ使いこなせるかがこれからのリーダーの鍵だと思います。 AIは心・意識を持てるかという問題があります。我々のすばらしい心は、物理を基礎にしています。物理的に可能なことはすべてテクノロジーで実現できますが、脳のリバースエンジニアリングやシミュレーションにはまだ時間がかかります。意識は脳細胞が実行する論理的アルゴリズムではなく、膨大な量の混沌とした心理作用が新皮質で統合された結果であると。人の主観的な世界については客観的に確認できません。AIの内部世界(意識の所在)も知ることができないかもしれません。

まとめ
音声・画像認識技術は、AI研究の牽引車としてDNNの効果により急速に進歩していますが、人の能力に近づくにはまだまだ研究すべき課題がたくさんあります。スマートロボットもAIの重要な分野のひとつです。自動運転のために多様な技術が研究・開発されています。世の中の仕組みを変える自動運転には、まだたくさんの課題があります。今後AIが加速度的に進歩し、生活を変えていきます。データや知識に基づく判断はコンピュータに任せ、人間はAIを使いこなすとともに、AIにできない判断力や創造性を持つことが必要となります。同時にAGIやASIの出現にどう対応・利用するかということが課題です。これからはハードウェアでなく、情報システムの戦いです。
そして我が国の存在感を失わないためには研究戦略の国際化が必要であることをひしひしと感じています。米国から見ると日本の情報の研究が全く見えない。もっと日本の研究者の方は、アメリカやヨーロッパなどAI先進国に思い切って飛び込み、そこの人たちと一緒に切磋琢磨する状況に身を置く必要があります。日本でいくら数十億円くらいのお金をもらっても何も起こりません。アメリカでは日々AIの研究は進歩しており、人が集まり、お金が集まり、翌日には事態が変わっています。ぼやぼやしている時代ではありません。日本で研究グループを作って、外国から人が来るのを待つのではなく、もっと努力をし、飛び込んで、一緒に同じ空気を吸って、世の中を動かしていくようになっていただきたいと思います。

講演を行う古井貞煕氏 講演を行う古井貞煕氏

基調講演

「高度化するサイバー攻撃によるダメージを緩和するセキュリティ対策」

高倉 弘喜[NIIアーキテクチャ科学研究系 教授]
講演映像(YouTube)

今日の話の概要は、「個々のインシデントで右往左往しない」「全体を俯瞰したアクシデント対応が重要」ということです。

多様化する攻撃先
サイバー攻撃はどんどん手が込んできています。最近は攻撃の目的が諜報活動へと変わってきています。リアルな世界とサイバーな世界がお互い影響を及ぼし合った攻撃が起きています。オンラインハッキングを狙った攻撃はどんどん増えています。月に何万も日本国内では発生しておりアンチウイルスでは捌けません。ゼロデイ脆弱性の件数も増加しています。ゼロデイというのは、攻撃する側が先にセキュリティホールなどの情報を入手し脆弱性を突くものです。2012年は年間14件であったのが2013年には22件です。傾向としてはOSよりアプリケーションへの攻撃が増加しています。さらに、Drive by Download攻撃が急増しています。普段アクセスするウェブサイトに出てくる広告などからマルウェア配布サイトへ誘導するというものです。アンチウイルスなどでの検知が困難で、1つウイルスに感染すると2つから3つ違うウイルスが同時に感染していることもあります。感染したパソコンは、攻撃した側からするといわば資産です。見えていない・活動しないものがスタンバイしている状況で、食い止めることはほぼ不可能で、入ってきた後、どうしなければならないかを考えなければならない時代です。

見えない攻撃
ある時、日本語になっていないメールが送られてきました。みなさんの社員・学生でクリックする方がいると思いますか?絶対に騙される人はいないと思うかもしれませんが、ところが200人中3人ほどが不審なURLにアクセスしてしまいました。セキュリティの研究者は何を見ているかというと、万が一発症しても迷惑をかけないように、実際何が起きるのかをモニターします。踏んでしまった3人がどういう動きをするかを見ているのです。一人はメールとパスワードを入れてしまった。もう一人は見ただけ。もう一人は、数メガバイトのデータが流れていました。中身を見るとプログラムが仕掛けられていて、条件にヒットした人だけウイルスが発動する仕掛けでした。アクセスした瞬間に自動的にマルウェアに感染してしまいました。攻撃はとても手が込んでいます。注意喚起の仕方が悩ましいですが、あまりスペシフィックに伝えすぎると、それ以外のものが来た時に引っかかってしまう可能性もあります。

高度なサイバー攻撃の特徴
わざと目立つような攻撃の水面下で、本命に対するマルウェア感染攻撃をします。組織内に張り巡らされた感染機器ネットワークにおいて、司令サーバと通信中のものだけ退治しても効果は薄く、さらに高度化・ステルス化する結果になります。データが手に入らなければ破壊してしまえという指示も起きうるのです。今やインフラ実験、家電・IoT、OA機器、飛行機、車などすべてのものがインターネットにつながっている時代です。そのネットにつながっている部品がどうなっているのか。汎用化が進んだ結果、意外なものにまで脆弱性が発生する可能性があるのです。それから単発のインシデントに右往左往する状態から脱却しなければいけません。いまやコンピュータが制御している社会であり、ウイルスに感染しようが、故障しようが、全体として機能を維持しなればなりません。従来とは異なる考え方が必要です。インシデント対応からアクシデント対処、つまり全体を見たときに、機能を落としながらのダメージコントロール、縮退運用という考え方が必要です。
侵入を前提とした対策の必要性はIPAから3年前に出ています。セキュリティ対策は、ウイルスが入ってくるのをシャットアウトするのではなく、入ってきてからの対策にシフトしています。入ってきた後、破壊される前、情報を盗られる前に、組織の中に通信網を作られることや機密情報を探し回られることを阻止しなければいけません。ネットワーク分割とアクセス制御など内部攻撃に備えたネットワーク構築が必要です。おかしなことが起きているのではないかということに気づく仕組みが必要です。専門業者を呼ぶかどうかの判断を自分たちでできるようにしなければなりません。そのためには人を育てていかなければならないといわれています。
ではどうすればよいか?全体を俯瞰したサイバー攻撃の存在察知という考え方です。組織内のネットワークのサンプル監視によって不自然な挙動を示す通信の有無を見て回る仕組みが必要です。サイバー攻撃の疑いが濃厚であれば、被害発生機器と類似の通信挙動の有無を調査し、縮退運用をする。監視カメラの不審者探しと同じアイデアです。NIIサイバーセキュリティ研究開発センターでやろうとしていることは、いろいろなセンサーからあがってくるデータを集約し、全体で見るということです。つまり日本の大学全体で今どういうところが狙われているのか、それが局所的なのか全域的なのか、その攻撃が有効なのかそうでないのか、といったことを俯瞰して見るのです。アクションをするときは、大学によってネットワークの使い方も構成も守り方も異なるので、やってはダメなことをお伝えする。医療の世界では当たり前の考え方です。全体俯瞰によるセキュリティ対策技術開発。何かが起こるととにかく全部が切り離されてしまうので仕事が止まってしまいます。世の中そうはなっていません。まずいところを封じ込めて残りの機能を維持するということに考え方を変えてください。
攻撃検知技術は大変進んでいますが、実際には20%の検知性能と30%の誤報があります。今の海外セキュリティベンダーは、攻撃の方向を把握するという、誰の方向に向かって攻撃が進んでいるのか、狙いを推測するというアプローチです。入ってきた情報を精査し、どう守るか、どうリソースを配分するのか。そこに本来AI技術を使わなければなりません。彼らの目的を推定し、どう守るのか。攻撃対象の事前保護が今後の研究課題です。
ウイルスに感染してもそれだけではないと思ってください。追い出しても追い出してもやってきます。入ってきてしまって、見えているものがあるということは、危ないのではなく良いことです。見えているのであればどう動くのかを観察しましょう。研究者ですから観察したくなりますよね。サイバー攻撃は手が込んできており防ぐのは不可能です。問題はやられた時に、アクシデントになるかどうかの判断が必要です。その判断に基づき人、リソース、お金を割り当てなければいけません。これ以上被害が拡大しないような対策を、仕事を続けられるような体制をとってください。疲弊しない対策を考えていくことが大切です。

講演を行う高倉弘喜教授 講演を行う高倉弘喜教授
 

NIIオープンハウス2016 終了

NIIオープンハウスは28日、最終日の第二日を開催し、すべてのプログラムを無事終了しました。多数のご来場をいただき、誠にありがとうございました。

第二日の目玉は「NII研究100連発」! 初めての試みだった昨年度大好評だったプログラムです。参加する研究者の研究分野の幅広さはNIIの特徴ですが、今年度はアーキテクチャ科学研究系教授の米田友洋、コンテンツ科学研究系教授の高野明彦、情報社会相関研究系教授の神門典子というベテランも登場し、さらに深みを増して開催。株式会社ドワンゴ様にご協力いただき、「ニコニコ生放送」でも中継されました。

「NII研究100連発」では計10人のNIIの研究者が一人7分30秒の持ち時間の中でそれぞれ10件、計100件の研究を発表しました。バーチャルリアルティ―を開発に活かす研究についての情報学プリンシプル研究系准教授、稲邑哲也の発表でスタート。後半最初となる6人目の情報社会相関研究系准教授、水野貴之はブームとバブルというテーマに合わせたという白のスーツにピンクのシャツといういで立ちで登場し、社会や経済において発生するブームについてコンビニエンスストアでの赤飯おにぎりの売り上げを例にして説明するなど、十人十色のプレゼンテーションスタイルで自分が取り組む研究について解説しました。

このオープンハウスではNIIの研究者が取り組む研究を、こうした発表や前日の講演だけでなく、ポスター展示や今年度初めて設けられたNII Cafeでのデモなど様々な形で来場されたみなさまにご説明しました。ポスター展示をガイド付きで見て回るツアーも実施し、毎回、予定時間を上回る好評ぶりでした。

また、土曜日だったこの日は、小学生から高校生までの若年層向け企画も多数開催しました。
午前中の小中高生のためのトークセッション「プログラミング道場~世界が変わるcoding」には、秋葉拓哉(情報学プリンシプル研究系助教)、坂本一憲(アーキテクチャ科学研究系助教)、対馬かなえ(アーキテクチャ科学研究系助教)の三人の若手研究者が登壇。アーキテクチャ科学研究系准教授、吉岡信和の司会で、プログラミングを始めたきっかけやプログラミングと出会って自分の人生で変わったことなどについて話しました。参加した子どもたちからの質問にも答え、「競技プログラミングをやっている」という声に、数々のプログラミングコンテストで優秀な成績を収めてきた秋葉助教が「嬉しい!」と喜ぶ場面もありました。

秋葉、坂本、対馬3助教は国立情報学研究所が初めて制作した高校生以上対象の入門編オンラインプログラミング講座「はじめてのP」にも出演しています。「はじめてのP」は一般社団法人日本オープンオンライン教育推進評議会(JMOOC)公認の配信プラットフォーム「gacco」で無料公開され、開講は本年8月9日です。

坂本助教は小学生のための情報学ワークショップ「くまを動かそう~楽しいプログラム講座」も担当。参加した子どもたちは、楽しみながらぬいぐるみのくまを動かすプログラミングに挑戦しました。また、「女子中高校生のための情報学ワークショップ」では対馬助教の指導でゲームのプログラミングに取り組みました。このほか、中高生向けの英語のガイドツアーやNII Cafeでの高校生向けミニワークショップも行いました。

限られた時間の中でしたが、小中学生、高校生の皆さんには、情報学の一端を知っていただけたと思います。NIIの多くの研究者のように、この体験をきっかけに情報学分野に関心を持ち、探求心を強めて貰えれば幸いです。
NIIは研究と事業を活動の両輪としています。この度、事業の取り組みについては25日~27日の「学術情報基盤オープンフォーラム」、研究内容については27、28日の「オープンハウス」という説明の機会を設けましたが、年に1回のイベントの機会を通じてだけではなく、常に積極的な情報発信を続けて、私共の活動について皆様にご報告していく所存です。今後ともご支援をよろしくお願いいたします。

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