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神門 典子 教授の退職記念講演会を開催[イベントレポート]
2026年3月30日、国立情報学研究所(NII)にて、神門典子教授の退職記念講演会が開催されました。現地参加約70名、オンライン参加約70名、延べ140名が参加するなか、神門教授が「人と情報をつなぐこと:情報アクセス研究をめぐって」と題した講演を行いました。
「情報を探す」ということの深さ
スマートフォンでキーワードを入力すれば、世界中の膨大な情報の中から目的のページが瞬時に見つかる。当たり前のように感じるこの体験を支える技術を研究し、評価し、改善し続けてきた分野が「情報アクセス研究」です。神門教授は、慶應義塾大学で図書館情報学を修めたのち、1994年にNIIの前身である学術情報センターに着任。「情報をどう探すか、探した結果をどう評価するか」という問いに約30年取り組んできた、この分野の第一人者です。
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国際的な研究コミュニティを一から育てる
講演でとりわけ熱を込めて語られたのが、国際共同プロジェクト「NTCIR(エンティサイル)」の歩みです。NTCIRとは、世界中の研究者が共通のデータと基準のもとで情報検索技術を評価・比較し、学び合う場です。1997年末にプロジェクトを立ち上げ、2000年に第1回会議を開催。神門教授はその総合委員長として四半世紀にわたってプロジェクトを率いてきました。
「最初は二番煎じと批判されるかもと恐る恐る始めましたが、それは全くの杞憂でした。初年度だけで国際会議に15回招待され、世界中の研究者が温かく迎えてくれた」と当時を振り返りました。英語中心だった情報検索の世界に日本語・中国語・韓国語などのアジア言語を取り込んだことで研究の地平を大きく広げ、現在では世界3大情報検索評価プロジェクトの一つとして、アメリカのTRECやヨーロッパのCLEFと並び国際的に認知されています。
特許検索で見えてきた「ユーザーの目的」という視点
NTCIRで取り組んだ特許検索の研究も、印象的なエピソードとして紹介されました。特許調査は企業の製品開発に不可欠で、見落としは多大な損害につながります。知財の専門家が時間をかけて調べた結果と、研究者の自動検索システムを比較したところ、後者のほうが関連特許をより多く発見できるという驚きの結果が出て、業界における新技術への意識転換を後押ししました。この経験から得た重要な気づきは「検索の目的が違えば、何が正解かも変わる」ということ。「ユーザーが何のために検索しているか」を評価設計に組み込む重要性を、研究コミュニティに先んじて提唱した取り組みでした。
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「調べる経験」が、学びそのものである
講演後半では、人が試行錯誤しながら情報を探す「インタラクティブな検索」の研究も紹介されました。検索結果を見るうちに興味が変わり、偶然の発見で方向が変わる----そのプロセス自体が学びになるという視点から、博物館でのコンテンツを用いたシステムを小学校の授業で活用したほか、展示とタブレット検索を連携させた学習体験の研究も行いました。AIが素早く答えを出せる時代でも「自分で調べた内容は記憶に残りやすい」という知見を踏まえ、AIと共同しながらより良い情報アクセス経験を作り出していくにはどうすればよいか----技術も社会も進化するにつれ、取り組むべき研究課題はさらに増えていくと語りました。
研究を支えたのは「人とのつながり」
「ひとりでコツコツやるだけでは、激しい変化についていくのは難しい。仲間がいて、いろんな人と意見を交わし、一緒に取り組める環境があれば、新しいことも楽しんで挑戦できる」---- 講演を通じて繰り返し語られたのは、研究の力の源は人とのつながりにあるという言葉でした。参加者からのメッセージにも「先生にお声がけいただいたからこそ今の私があります」「折に触れて励ましを思い出し、前に進む気持ちにしています」といった声が多く寄せられ、その言葉を裏付けていました。
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おわりに
神門教授は、「情報検索をめぐる環境は、激動の30年間。その変化を楽しみながら、新しいことにチャレンジし続けられたことに心から感謝している」と締めくくり、今後も人とAIが共に深く学べる情報アクセスの研究を続けられる予定です。神門教授の今後のさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。

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