NII Journal No.1 要旨

【2001/11】

1. Automatic Word Lookup Service and Client Tool for SAIKAM Online Dictionary
author: Vuthichai AMPORNARAMVETH(National Institute of Informatics), Akiko AIZAWA(National Institute of Informatics), Tasance METHAPISIT(Thammasat University)
abstract: SAIKAM is in online Japanese-Thai dictionary development project seeking for collaborative efforts from developers on the Internet. The project has been developed as a web site providing Japanese <--->Thai dictionary lookup service and, at the same time, allowing a group of devoted users who registered themselves as SAIKAM developer to update and improve the content of the dictionary. All these services are accessible via standard WWW browser software. According to feedbacks from SAIKAM users, however, two new services ware recently integraded into SAIKAM system-SAIKAM client tool, and Automatic Dictionary Lookup for Web Pages. These tools are aimed to expand the scope of SAIKAM utilization to offline users, and improve productivity in dictionary editing.


2. 台風画像コレクションの構築および台風解析への応用
著者: 北本 朝展(国立情報学研究所), 小野 欽司(国立情報学研究所)
要旨: 本論文の目的は、気象学的知識と情報学的アプローチとを融合した台風雲パターンの時系列解析法を提案し、台風解析における熟練者の解析作業支援や、大量の台風画像からの知識発見などを実現することにある。そのための基礎となるデータセットとして、本論文では20,000 枚規模の台風画像コレクションを構築する。ここで台風画像とは、台風のベストトラックに記録された台風中心が地図投影画像中心に一致するように、台風周辺領域を衛星受信画像から切り出したものである。このようなラグランジュ的表現によって、台風雲システム全体の動きから台風雲パターンに固有の動きを分離できる。次に本論文では、台風雲パターンに特徴的な楕円形状を表現するための手法として、変形楕円を用いた形状分解手法を提案する。この結果を用いて台風の日変化の解析という台風解析の問題に取り組んだところ、本論文で提案する手法は、気象学的知見と一致するような、気象学的に意味のある情報を抽出することができた。


3. A Flexible Approach to Retrieve Medecinal Plant Images
author: Frederic ANDRES(National Institute of Informatics), Nicolas DESSAIGNE(National Institute of Informatics), Asanee KAWTRAKUL(Univercity of Kasetsart, Thailand), Jose MARTINES(Polytechnic School of the University of Nantes / IRIN, France), Noureddine MOUADDIB(Polytechnic School of the University of Nantes / IRIN, France), Kinji ONO(National Institute of Informatics)
abstract: The important growth of available multimedia information shows the limits of traditional information retrieval systems. In this paper, we describe the design of a metadata engine dedicated to retrieve annotated images using meta-information, and part of the more general MediaSys Image Search Engine. As a case study, we use medicinal plant images and their detailed description. We propose a flexible approach based on fuzzy concepts such as the fuzzy subset thory, the possibility theory and fuzzy thesauri.


4. 光線空間法に適した画像のキャッシング
著者: 後藤田 洋伸(国立情報学研究所)
要旨: 光線空間法は、実写ベースのレンダリング手法の一種である。あるシーンをレンダリングするとき、この方法では、予め計算しておいた放射輝度データを組み合わせることにより、特定の視点に対応した画像(ビュー)を生成する。放射輝度データは、4 次元のスカラー場をなしている。レンダリング、すなわちビューの生成は、この4次元場から2 次元場を抽出する作業に帰着される。 光線空間法は、写実的なビューの生成を可能にする一方、膨大な量のデータを必要とする。生成されるビューの解像度にも依存するが、4 次元場の大きさが数ギガバイトに及ぶことも少なくない。このため、メモリ容量の小さいコンピュータ上での実装は困難である。また、ネットワークベースのアプリケーション(VRML など)へ組み込む際にも、こうしたデータ量の多さが障害となっている。 本稿では、光線空間法に適した画像のキャッシング手法を提案する。これにより、ネットワーク環境下での光線空間法の利用を可能にする。この方法は、既に生成に転送された画像を再利用し、新たに転送される画像を予測するという考えに基づいている。視点を連続的に動かしたり、ズーム倍率を連続的に変動させたりする場合、一度転送した画像が再度参照されることが多い。こうした性質を利用しながら、新たに必要とされるデータの圧縮を図る。


5. NACSIS-ILL自学習得システムの開発
著者: 井上 智雄(国立情報学研究所),上野 晴樹(国立情報学研究所)
要旨: 本研究所の提供する図書館間相互貸借システム(NACSIS−ILLシステム)の利用を促進するために、その概念・仕組みとシステム操作法を遠隔地で自学習得できるWWW利用型システムを開発している。本システムは実用性を最優先しており、近く実運用も開始予定である。本論文ではその教材の設計を中心に述べる。


6. ネットニュース参加者間の対立の定量的分析
著者: 瀬尾 雄三(東京大学先端経済工学研究センター),矢野 正晴(国立情報学研究所)
要旨: インターネット上の掲示板サービスであるネットニュースの参加者は、組織の枠を越えて見知らぬ他者との間でさまざまな話題について議論を交わしている。そこでは、参加者間の対立がしばしば観測されるが、そういった対立が参加者達の文化的背景が異なることによるものであることが多くあるように思われる。一方、ネットニュースにおいて一連の議論 (以下、スレッドと呼ぶ)を構成する個々の記事は、記事相互間の参照関係によって木構造に関係づけることができ、また、各々の記事は、その中に含まれるキーワードの出現頻度により特徴づけることができる。そして、キーワードの出現頻度は、主成分スコアに要約される。そこで、我々は、主成分スコアをもとに、自己相関係数とパワースペクトルという二つの特性指標を算出し、それらによりネットニュース参加者間の対立を定量的に抽出することを試みた。ネットニュース上の4つのスレッドにこの手法を適用したところ、2世代を周期とする特性指標の振動が広範に認められ、振動の観測された特性指標の意味と、議論内容を読解することにより得られる対立点とを比較した結果、文化的背景を異にする参加者間の議論において、双方が一致する傾向が認められた。このような対立の定量的抽出手法は、電子的コミュニケーションを介した社会関係を研究する上で有益と考えられる。


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