研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

中務 佑治
NAKATSUKASA Yuji
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:Ph.D.(数学)
専門分野:数理情報

サイエンスライターによる研究紹介

数学好きから応用数学者へ

小さい頃から数学が好きで、純粋数学に憧れがありました。大学院に進むと、対象を抽象化する純粋数学に対して、具体的なデータなどを表現する行列(数を長方形の形に並べたもの)を多用し、役に立つこと(データ解析やコンピュータシミュレーションなど)がイメージできる数値計算や数値線形代数に興味をひかれました。

昔から海外に興味があり、家族や指導教員の先生にも背中を押されて、カリフォルニア大学デービス校に留学し、数値線形代数の固有値問題に5年間取り組みました。例えば、行列を特異値分解(固有値問題の一種、簡単な行列の掛け算で表すこと)すると、小さいメモリでも行列を表示できるようになりデータ圧縮などに応用できます。特異値分解を使って圧縮効率の高いアルゴリズム開発にも取り組みました。

線形代数は応用数学の基盤

カリフォルニア大学デービス校の後は、ポスドクとしてイギリスのマンチェスター大学に行き、数値線形代数関連の研究を進めました。そのとき出会った二人の研究者との共同研究が楽しくて研究に対する情熱が一層強くなりました。共同研究や研究者との議論を通じて手応えを感じ、「世界でやっていくことができる」というイメージが持てました。

その後、東大で助教を務め、最適化の勉強と研究をしました。全ての問題は最適化問題であるといってもいいくらいで、応用範囲が広いのです。例えば、売上を最大化するにはどうした良いのか、製造コストを最小限にするにはどうしたら良いのかなど、日常的な問題を解くことができます。特に私が着手したのは,固有値を計算することで解けるクラスの最適化問題で、難しいとされていた問題も含みます。

数値線形代数では線形方程式Ax=bと固有値問題Ax=λxの大きく二つの問題を解き,応用数学のあらゆる分野で必要になりますが、特に固有値の応用先は未開拓のものがまだまだあると思っています。

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二つの二変数関数の共通根も、固有値によって計算できる。

また、固有値問題を始め、数値計算の背景にはほぼ必ず関数近似論があります(この視点は専門家内でも必ずしも常識ではありませんが)。例えば、オックスフォードで研究員をしていた際、関わったオープンソースソフトウエアChebfunに関数をインプットすれば、高精度で高速に数値計算を行うことができ、高い精度で最適値を求めることができます。関数近似論に立脚した数値計算の研究を今後も推進したいと思います。

数値線形代数の世界リーダーになる

NIIに入って自分主導で研究するようになりなりました。これからは、固有値問題の他分野への応用、応用数学の分野を繋げる横断的研究、また特にまだほとんど手を付けていないですが機械学習やビッグデータ解析への応用など、今解くべき重要問題解決に貢献し、世の中を変える研究を目指したいと思います。

また、数値計算の最先端研究を行うための共同研究の招聘やNII湘南会議を通じたワークショップの開催、国内外からの学生や研究者の指導などを行うことで、数値線形代数で世界のリーダーになりたいと考えています。

Memories

pic_memories_nakatsukasa.jpgマンチェスター大学時代は、共同研究者のアレックス(左)とバニー(中央)と共に、濃密で楽しい研究生活を過ごすことができた。今も二人とは切磋琢磨する仲間なので、二人を始め他の研究者がどんな研究をしているのか常に注目している。
今後も数値計算の重要性は増すばかりだと思うので、議論を厳密に行い、情熱をもって研究に取り組み、問題解決に貢献したいと考えている。


取材・構成 佐原 勉

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