研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

稲邑 哲也
INAMURA Tetsunari
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:2000年、博士(工学)、東京大学
専門分野:知能情報
研究内容:http://researchmap.jp/inamura/
研究室WEB

サイエンスライターによる研究紹介

人との接し方を学ぶ「VR空間」を開発し
暮らしの中で活躍するロボットの研究を加速

 「暮らしの中で活躍するロボットを誕生させたい」。それは、ただ人に言われたことを行うのではなく、困った時には、人に相談したり力を借りたりすることができる、"置かれた状況に対して柔軟なロボット"です。つまり私は、ロボットが人と協調して活躍できる世界を目指しています。

VR空間で人とロボットが集う

 最近、AI(人工知能)を賢くするのにディープラーニング(深層学習)などの機械学習手法が使われています。こうした情報技術の最先端テクニックは、ロボットに動作を学習させるのにも有効で、その結果ロボットはいろいろな形のものを器用に掴んだり、タオルのように柔らかいものを畳んだりできるようになりました。
 一方、私がつくりたいのは、お年寄りを"優しく"抱きかかえたり、お客様を"丁寧に"接客したり「人とふれ合ったり対話したりするロボット」です。ロボットに「人との接し方(インタラクション)」をディープラーニングで学習させようとすると、膨大な数のインタラクションを経験させなければなりませんが、ロボットがたくさんの人たちとのインタラクションを行うのは時間的・人的コストが問題となりハードルの高い方法となってしまいます。そこで考えたのが、クラウド上にバーチャル・リアリティ(VR)空間をつくり、その中でロボットとインタラクションをしてもらう仕組みです。
 協力者は、VR空間へとつながるヘッドマウントディスプレイを被ればいいので、これまでのように研究室に出向く必要がありません。いつでも誰でもどこからでも、VR空間を訪れることができます。この方法を使い、ドイツのミュンヘン工科大学と共同で「皿洗いロボット」を開発しました。皿の洗い方を教えたのは、もちろんVR空間を訪れた人々です。

VR空間の応用の広がりと集まったデータがもたらす新展開

 ロボットが暮らしの中でできることを競うロボカップ@ホームという競技会があります。従来は、モデルルームの中でロボットを動かしていましたが、この方法では、ロボットのプログラムがあってもボディがつくれない研究チームは参加できない、機械的なトラブルでリタイアするロボットがある、一回の競技結果で評価しなければならない、といった問題があり、「人とのインタラクションのスキルを競わせる」というプログラムの本来の目的が達成されていませんでした。この問題を解決するために、ボディを必要としないVR空間で競技を行うことを提案しました。2016年からは、一般の方々にVR空間に入ってもらい、ロボットとのインタラクションの評価に協力してもらっています(写真)。

研究紹介_稲邑_写真_human_navigation.png

〈写真〉ヒューマンナビゲーションの競技の様子

これは、ロボットが言葉を使って人をサポートする「ヒューマンナビゲーション」という競技で、例えばロボットが探し物をしている人に物のありかを教えようとしたとき、的確に説明できるかといった評価をVR空間で行います。
 VR空間を使った研究の最大の魅力は、「ロボットと人のインタラクションデータ」を大量に集められることです。データからは、人が、状況に応じてどのような振る舞い方をするのかが明らかになります。これは、人と協調するロボットを開発する上で、重要な指針になります。今後のロボットの成長にご期待ください。


取材・構成 池田亜希子

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