研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

市瀬 龍太郎
ICHISE Ryutaro
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:2000年 博士(工学) 東京工業大学
専門分野:知能情報
研究内容:http://researchmap.jp/ichise/
研究室WEB

サイエンスライターによる研究紹介

学習をコンピューターで実現する

人工知能への期待

 人間は「学習」という行為をごく自然に行っています。学習とは、あることをするとき、その事象から知識を見つけ、ときにはそうした個々の知識をまとめ、それを利用することで、次はもっとうまくできるようにすることです。けれども、この知的な活動をコンピューターにやらせるのは実は大変です。そこで私は、それを可能にする「人工知能」の技術開発に取り組んでいます。学習をコンピューターに実現させる。それがこの研究の目標であり、最も面白いところです。

 コンピューターはこれまで、大量のデータを記録することで、人間が扱う情報量を増やし、記憶を広げてきました。しかし、膨大な情報がネット上にあふれている現在、私たちには、もはやすべてを管理することができなくなっています。私は学習を鍵とする人工知能の研究を進めることで、人間に代わってコンピューターが、蓄積された大量のデータの中から必要な知識を取り出し、まとめあげ、利用もできるようにしていきたいのです。そうすることで、コンピューターが人間の記憶だけでなく、知識処理を必要とする思考をも広げていく。そんな世界を私はこの研究で切り開いています。

学習を実現する3つの技術

 この研究では、学習という行為を3つの過程に分け、それぞれをコンピューターにやらせる技術に取り組んでいます。それらは順に、ある事象から「知識を発見」する過程、そうして得られた複数の「知識を統合」する過程、統合された「知識を利用」する過程です。ここでは1つ目の「発見」と2つ目の「統合」の研究を紹介しましょう。

 「発見」では、膨大な情報の中から、情報間の関係を導き出す手法「データマイニング」を開発しています。これは例えば、カルテに書かれた症状から最も治療効果の高い薬を見つけだすことなどに応用できます。このような技術が確立されると、人間には思いもよらない知識をコンピューターが見つけ出してくれる可能が出てきます。

 「統合」では、異なる知識同士の関係を判断してまとめていきます。「発見」により、効果の高い薬のリストと、効果の高い食品のリストを別々に得たと想像してみてください。どれか1つを試してよいと言われれば、皆さんはきっと2つのリストを合わせて、その中から選ぶでしょう。このとき人間は、「効果が高い」という点にだけ着目して、薬も食品も一緒にして判断しています。別々に発見された知識同士の関係を判断しているのです。しかし、コンピューターにとってこの判断は難しく、自主的にはできません。これまでは、私たちがコンピューターに教えないと処理できなかったのです。そこで私は、コンピューターが自ら知識同士の関係も見つけて同じ性質のものかどうか判断できるような技術に取り組んでいます。

 コンピューターの学習が可能になり、人間の思考を拡張できる時代がくるのは、そう遠い未来のことではないと期待しています。

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中村理

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