Researcher file no.2

人工知能を学びに生かす。 プログラミングが教育を変える

幼い頃からコンピューターが身近にあった世代。世界を意識する契機もプログラミングだった。現在は情報工学と心理学を融合した研究を進め、教育の分野を新しいフェイズへ向かわせようとしている。

アーキテクチャ科学研究系 助教

坂本 一憲

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14歳で開発したソフトが
多くの人に役立ったのが原体験

坂本一憲がコンピューターの魅力に取りつかれたきっかけはロールプレイングゲームだった。1990年代らしく、ドラゴンクエスト。そのうち自分でゲームをつくりたくなり、中学校でコンピューター部を選んだ。入部後は自らゲームのプログラミングを始めた。ただ、本当に達成感を味わったのは、公開サイトにアップした自作の圧縮ソフトを他の人が使い始めたときだという。当時まだ14歳。同じ部活の友人は誰も手掛けていなかった。
「 自分がプログラミングしたものを、たくさんの人が喜んで使ってくれている。うれしくて励みになりましたね」
初めてコンピューターに触れる機会は、ますます低年齢化している。小学生がプログラムを手掛けることも珍しくはない。それについて坂本は肯定的に捉える。「物事を論理的に考えられるようになります。目的に向かって、常に手順を考えなければいけませんから、計画性が身に付きます。それに他人を説得する力もつく。文系に求められる能力が鍛えられ、国語の成績がアップしたという話を聞いたこともありますね」

コンピューターを通じた子供たちとの交流も積極的に行っている。最近ではスマートフォンを使ってプログラムを書き、目の前のロボットを動かすワークショップが人気だという。 「やはり結果が目に見えるものは子供たちの反応がいいですね」 子供たちにはうれしさと驚きに満ちた体験だろう。

起業意識が高いというのが周囲の評価。自ら研究費を取得し、チームでプロジェクトを推進。

人工知能で「もっと学びたい」という
みんなの意欲をかき立てる

「 やる気がなくなる理由はだいたいみんな共通していますが、やる気が出るきっかけは人それぞれです。例えば英語を学ぼうとするとき、ほめられたいと思う人もいれば、海外へ行くのが目的の人もいる。ライバルに負けたくないという競争心がバネになることもあるでしょう。それぞれに合わせ、意欲を高め、意志を強く持てるように支援する技術の開発を目指しています」
坂本が取り組んでいるのは学習行動を促進させる教育ソフトウェア。いかに学びへの意欲をかき立て、勉学に向かわせるか。ユニークなのはそれが画一的なものではなく、個人に合わせたカスタマイズを目標としていることだ。
現在は高等専門学校、専門学校、進学塾で暗記学習についてフィールド実験の準備を進めている。動機を探る心理アンケートを行い、データを積み重ね、それを反映したスマートフォンのアプリをつくるのがひとまずのゴールだ。
「 誰にも自分がやりたいのにできない原因があると思います。それができるように支援する人工知能をつくりたいんです」
坂本は起業にも積極的。より多くの人に自らの技術を使ってほしいと率直に語る。ただし、利益というよりも、自分の技術が社会に受け入れられていることに手応えを感じたいという。
圧縮ソフトから始まったひとりの少年のプログラミングは、今もアップデートを繰り返す。教育というフィールドにブレークスルーをもたらすに違いない。

坂本 一憲[アーキテクチャ科学研究系 助教]

早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科卒、大学院で博士号取得。ソフトウェア工学、プログラミングの言語と教育を研究している。情報処理学会 プログラミングコンテスト委員会、情報処理学会 ソフトウェア工学研究会運営委員会などで委員を務める他、ゲームAIプログラミングコンテストを主宰する。

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構

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