研究背景・目的
災害などの緊急事態に対応するには、今、どこで、何が起こっているのか等、現状把握技術が重要な役割を果たします。そこで、データの収集から分析・可視化までをトータルで取り扱うプラットフォームの研究を進めています。ソーシャルメディアやクラウドソーシングから情報を収集する技術、収集した情報を時空間的に分析する技術、分析結果を理解しやすく可視化する技術などが中心となります。また、その効果は「デジタル台風」などの公開サービスを用いて検証しています。今後、画像や言語処理などのビッグデータ解析の研究を進め、現状を集約したタイムラインを参照しながら、人間と機械が協力して意味のある行動につなげるためのプラットフォーム構築を目指します。
研究内容
GeoNLPは収集したデータの時間と場所を分析するためのオープンソースツールであり、入力する言語から地名を抽出し、その曖昧さを解消して出力するソフトウェアです。このソフトウェアを実現するには、文章中の単語をインターネット上の辞書とリンクする「エンティティ・リンキング」の研究が鍵となります。GeoNLPの特徴は、利用者が入力するさまざまな地名から、その地名の種類や地名同士の距離、特定の地域への限定、現状認識を反映して曖昧さを解消することが可能な点にありますが、その精度を向上させるにはアルゴリズムの改良に加えて、データ基盤の整備も重要です。そこで、各種のオープンデータを活用したGeoNLPデータの充実も継続的に進めています。
産業応用の可能性
GeoNLPソフトウェアや各種のデータ・アプリを統合した技術を用いて、災害時の情報収集プラットフォームを構築できる可能性があります。気象や地震などの公式観測データだけでなく、人々の協力を通して集めた情報やソーシャルメディアのデータも統合的に解析することで、ビッグデータ解析に基づく瞬時の意思決定を支援します。非公式情報や独自のセンサーデバイスのように、確実性は低いが多様性は高いという今までにない情報源を活用した現状認識は、今後の災害情報プラットフォームにおいて注目が高まる機能であり、防災関係者とも協働して貢献できる可能性があります。
研究者の発明
- GeoNLP : https://geonlp.ex.nii.ac.jp/ (ソフトウェアおよびデータ)
- デジタル台風: http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/ (極端気象のプラットフォーム)
- リスクウォッチ : http://agora.ex.nii.ac.jp/cps/ (リスク情報のリアルタイムDB)
連絡先
北本 朝展[コンテンツ科学研究系 准教授]
kitamoto[at]nii.ac.jp ※[at]を@に変換してください