研究シーズ2015情報基礎科学

時系列マイニングの手法開発とその応用

小林 亮太情報学プリンシプル研究系 助教

研究分野データマイニング/時系列解析/予測

研究背景・目的

近年になって、メールの送受信記録、サーバのアクセスログ、光・音波・温度等のセンサデータ、心電図・血圧等の生体計測データなど、さまざまな時系列データを入手できるようになってきました。このような時系列データを有効に活用するためには、データから隠されたルールを発見、抽出することが重要になります。標準的なデータマイニングの手法では、高頻度のパターンを探索することによってルールの抽出が行われます。しかし、時系列データでは可能なデータパターンの組み合わせ数が莫大となるため、ルールの抽出は困難となります。私は、時系列モデルとベイズ統計学を融合したアプローチを用いて時系列データから隠されたルールを推定する手法を開発し、開発手法を脳計測データに応用しています。

研究内容

私は、時系列データとして脳計測データに着目してきました。脳での情報処理・学習・記憶などのメカニズムを調べるためには、神経細胞間の電気信号のやり取りを分析することが重要になります。しかし、これらを直接計測することは現在の実験技術では困難です。そこで、計測データから脳の仕組みを調べるための手法開発に取り組んでいます。

手法を開発するための準備として、神経細胞から出力される脳内通信信号であるスパイクを再現する数理モデルの開発に取り組みました。開発した神経細胞モデルはスイス連邦工科大学ローザンヌ校が2007〜2009年に開催したスパイク予測の国際コンテストにおいて優勝を果たしました(図A)。

現在は、一般的な時系列解析の枠組みである状態空間モデルと神経細胞のモデリング技術を融合させることにより、神経細胞の入力信号推定(図B)や脳内の情報伝達経路を推定する手法を開発しております。

kobayashi_ryota_1.jpg

図A これまでに開発した技術の例:神経細胞スパイクの予測

kobayashi_ryota_2.jpg

図B これまでに開発した技術の例:神経細胞の状態推定

産業応用の可能性

  • センサデータから重要な情報を抽出する。
  • Eメール、SNS、Twitter、ブログなどを解析して将来の振る舞いを予測する。
  • 脳波、筋電図、心電図などから情報を抽出し、人々の生活を支援する。
連絡先

小林 亮太[情報学プリンシプル系 助教]
http://research.nii.ac.jp/~r-koba

Recommend

さらにみる